梅雨空の合間、ほんの僅かな雨が止んだ隙を見計らい、
オニヤンマが盛んにテリトリー争いを繰り広げていた。
時々オオシオカラトンボも参戦し、その空間だけは、
確かに夏を思わせるものだった。
近くの小川では、ミヤマカワトンボが羽を休め、ホシ
ミスジが雨を縫うように飛んでいた。
家の近くではなく、車で十五分ほどの里山的集落での
風景だ。
それにしても、天気が悪い。
仕方ないので、DVD観賞。
久しぶりのレンタルだ。
選んだのは、ショーン.ペンが監督した「INTO THE
WILD」という作品。
ソローやロンドンが好きな優等生が、放浪の果てアラ
スカで餓死するという実話に基づいた映画だ。
ソローやロンドンが好きという時点で、知ってる人は
どんなものに関心があるのかどんな価値観を持ってい
るのかというのが大体想像がつく。
「アラスカを求めて」というのは本人にとっては「黄
金郷を求めて」と殆ど同義語である。
そして、主人公がそう考えるように至った原因は、主
に家族関係にあったことを映画は繰り返ししつこいく
らいに描く。
主に妹の独白という形式でであるが、ちょっと説明し
すぎという嫌いはある。
禁欲的といえる主人公の姿は、ハリウッドによく出て
くるどうしようもない馬鹿なアメリカ人(欲望のまま
の)というのとは一線を画している。
道を探す求道者の姿をそこに見るのだが、反文明でド
ロップアウトしたヒッピーとも違い、飽くまでも単独
で行動するところが立派であるのだが、決してコミュ
ニケーションが取れないわけではなく、むしろ良識的
で穏やかな人間性故、行く先々で良い人間関係を作り
旅立つ時に悲しい別れを繰り返す。
という風に描かれているのだ。
反文明が、どこか反ハリウッドにも見えてくる。
しかし、この話が1992年の話というのはちょっと驚き
だ。
1970年代なら一つのムーヴメントとして考えられたが、
92年というのはつい最近でもある。
監督の意図は、ヒッピーの時代ではなく、その時代の
家族関係に置いたところにあるのだろうか。
映画自体は、真面目さが伝わってくる良質な部類に属
するものだとは思うが、ちょっと説明調過ぎるという
印象は最後まで続いた。