映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No1184『男の花道』~ハプニングはあったものの…~
6月21日(土曜)中島貞夫監督のお話が終わり、
いよいよマキノ監督の『男の花道』の上映開始となる。
その前に、
シネ・ヌーヴォの景山さんが客席に出て来られて、
今回の特集のリーフレットに掲載されている写真が、
マキノ監督のではなく、
リメイク版で、宝塚映画のスチール写真だとわかり、
不手際を謝られた。
映画が始まると、スタッフロールのバックの映像で、
歌舞伎の舞台の様子が流れる。
いきなり「宝塚映画」と小さな文字があって、
あれ?と思った。
登場人物の名前の中にも、
長谷川一夫の名前がない。
役者、スタッフの名前がほぼ終わり、
最後に「監督 冬島泰三」と出た時点で、
フィルムの誤りは決定的だと思った瞬間、
映画の上映が止まり、
場内の灯りがついた。
客席後方から、景山さんが、再び現れ、
劇場としても、信じられないことに、
フィルムの貸出先の東宝から
間違ったフィルム、
マキノ正博監督の1941年作品ではなく、
リメイクの冬島監督の1956年作品のフィルムが
送られてきていたことが判りました。
至急、会社に連絡をとって、
マキノのフィルムを送ってもらうようお願いして、
今日来たお客さんには、全員観てもらえるよう、
招待状を配ります。
次の上映回に間に合うかわからないが、
別途、
来週末の朝一番8時半頃から上映するとか、
機会をあらためて必ず上映する機会を設けます。
今日は、この作品を観てもらう形でお願いしたい。
とのこと。
劇場側としても、めったにない、ハプニングで
驚きの事態だったと思うが、
マキノの『男の花道』を観たくて来ているという
お客の気持ちがよくわかったうえでの見事な対応で、
劇場としても、
必ずマキノ版を上映するという真摯な気持ちが伝わり、
気持ちよい対応だった。
フィルムがない以上、どうしようもないのである。
そうして、そのまま上映が始まった。
花形役者、中村歌右衛門が失明寸前だったところを
旅先で偶然いっしょになった
蘭方医の土生の手術で、回復し、
役者として、ますます人気を得る、
そうして、恩返しの機会がめぐってくる・・というお話。
歌右衛門を演じるのは、中村扇雀。
歌舞伎の役者さんなので、どうしても、
日常の場面は、ちょっと演じすぎという感じで、
違和感があったが、
クライマックス、
劇場で、舞台を中断し、
恩返しのために、いっとき、時間をください、と
客席に向けて、
役者生命をかけたお願いごとをする場面での
声のはりは見事で、
よく通る声は、気持ちがこもっていて
さすがだと思った。
医者を演じるのが、私の好きな伴淳三郎。
ちょっととぼけた味と、覚悟を決め、毅然とした顔がすてきで、
結構楽しめた。
上映中も、途中で帰る人は一人もなく、
最後まで、皆さん、上映を楽しまれたようで、
とりあえず、よかったと思う。
私はパイプ椅子の補助席で観ていて、
すぐ前の最後列の席に中島貞夫監督が座られていて、
上映が始まるとすぐ、
何やらお隣の方と話されているのが見えたから、
きっと監督はすぐ気付かれていたにちがいない。
でも、中島監督も、マキノでないとわかっても
ちゃんと最後まで観て下さったから
さすがだなと思った。
映画の上映というのが、
フィルムという“物”の上映であり、
間違った物が届けば、どうしようもないってことは
こういうことがないと、なかなか実感がわかない。
そういう意味では、
マキノは観たかったけれど、ある意味、貴重な体験だったと思う。
フィルム缶の重たさ、
缶の中の中身の不思議さに、思いを馳せてみた。
マキノ版の『男の花道』が届くまでは、
しばらく、リメイク版の上映が続くとのこと。
マキノ版を観るのが
ますます楽しみになってきました!
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