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No237「喜びも悲しみも幾歳月」~雨にも負けず、風にも負けない夫婦の絆~

「おいら岬の灯台守(とうだいもり)は 妻と二人で沖行く船の
無事を祈って 灯(ひ)をかざす」
「星を数えて波の音きいて 共に過ごした 幾歳月(いくとしつき)の
よろこび悲しみ 目に浮かぶ」

北海道の雪深い石狩から
九州の五島列島の、水も十分にない無人島まで、
「日本の端っこ」を転々とする燈台守の家族の物語。
1967年、木下恵介監督。

主題歌の歌詞のとおり、苦労、苦労の連続、幾つもの不幸を乗り越え、
時に夫婦喧嘩をしながらも、
絆を深めていく夫婦、有沢四郎(佐田啓二)ときよ子(高峰秀子)の姿は
深い感動を呼ぶ。

「私たちが、こんな苦労に耐えていることは、誰も知っちゃいないのよ」と
愚痴る妻への、夫のセリフ。
「おまえの苦労は僕が知っている。僕の苦労は君が知ってくれているじゃないか」

「僕は、結婚した時、君のことを、絶対、馬鹿、と言わないと決めたんだ」

「戦争は殺し合いだから人が死ぬのは仕方ないけど、それに参加していない私や子供たちまで殺されなきゃならないのかしら」

「君は子どものことになると、引かないんだな」
「私は、子どものことだけは、絶対、あなたに譲りませんから」

二人が灯台で海を見つめながら会話する言葉は、どれも深みがあって、心に残る。

昭和7年に結婚し、二人の子どもが生まれ、
戦争を経て、昭和32年、娘が結婚するまでの長い物語。
灯台守の上司や同僚たちの姿が、物語に厚みを加える。

北海道では、同僚の燈台守の妻(井川邦子)が危篤に陥り、
夫(三木隆)は悩んだ挙句、そりで街の病院に連れて行くことにする。
しかし、病院までの遠い道のりの途中で、妻は息耐える。
涙を流す夫。そりが灯台へとひきかえすシーンの、なんと悲しいこと。

佐渡では、母親の苦労を見て、自分は燈台守とは絶対結婚しないと言いきり、
若い灯台員(田村高廣)の求婚を断っていた、
上司の燈台守の娘、真佐子(伊藤弘子)が、
数年後、再会してみると、その燈台員の妻になっている。
きよ子と真砂子が、海辺で再会し、泣きながら抱き合うシーンは、
なんとも感慨深い。

夫婦の姿をとおして、「時代」の流れが感じられる名作。

満足度 ★★★★(星5個で満点)
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