日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

COCOSの朝食ブッフェで分かったゼンショーHD組織風土のがんこさ加減

2015-06-08 | 経営
ステーキレストラン・チェーンCOCOSにモーニング・ブッフェを食べにいきました。私は週に1回程度、原稿の構想を練りの気分転換で、外にモーニングを食べに出るのが習慣になっています。この日は、前々から気になっていた我が街のCOCOSのモーニング・バイキングを初めてのぞいてみようと思ったわけなのです。

私が訪れたのは土曜日の朝。税込み842円也を先払いで支払い席を探します。私が店に入ったのは朝7時スタートのバイキングは1巡目の客が、メインを食べ終わってデザート&カフェに移りかけた9時過ぎごろで、およそ80~90席ほどの店内に空き席はわずかでした。

席を確保してブッフェコーナーの入口に向かうと、なんとトレイがない。これでは先に進めません。呼べど叫べど返事なし。そうこうするうちに私の後ろには行列が。若い女性スタッフがようやくこちらにやってきたのは、次の来店客が自動チャイムを鳴らして入って来たからでした。

受付業務終えたスタッフにトレイがない旨を伝えると、「少々お待ちください」と言ったままキッチンへ引っ込んで出てきません。待つことさらに2~3分。ようやく出てきた彼女はなんとトレイを布でふきながら登場しました。洗い物が間に合わずに間に合わせで洗い場にあったものをとりあえず人数分をお持ちしました、がアリアリ。この姿を見て、私は早々にかなりめげてしまいました。

その後の対応も推して知るべし。バイキングコーナーのメニューは品切れ状態のものが大半で、「ただいま調理中です」と言いつつもほとんどいつになるのかわからない状態。ドリンクコーナーもコーヒーカップ切れで、再び呼べど叫べど店員が来る気配はありません。仕方なく、かろうじて3個ばかり残っていたコップにジュースを注いで我慢する以外にありませんでした(結局、ホットドリンクは飲めませんでした)。

カスカスの残り物を寄せ集めたもの以外に食べたのは、かなりしてから追加で出てきた焼きそばみたいなメニューを少々、あとはジュースをお代わりしてジ・エンド。私と同じような目に会った人は複数いて、きっと二度と来店しないだろうなと思いました。

このサービス低下の原因はどこのあるのかと言えば、人手不足がすべてです。件のトレイの一件で人が来ないのはどうなっているのだ、と奥をのぞいてみれば、なんとそこにいたのは男性一人に女性一人。フロアにスタッフは全くいませんでしたので、この2人でブッフェ方式とはいえ80席以上がほぼ満員の店内オペレーションを回していたのです。男性スタッフが調理、女性スタッフがフロアと洗い物といった感じです。あちこちから呼ばれ、足りないモノを運んではまた呼ばれ、疲弊する女性スタッフに明るい返事も笑顔もなく、フロアにはよどんだ空気が流れていました。

この店舗はサイズから言って厨房一人、フロア一人という配置ではサービス低下は火を見るよりも明らかです。店内が混雑しないのならともかく、経験則的に満席に近い入りが予想される土曜日の朝にこれでは、客をなめているのかと言われても仕方のないところかと思います。この状況が続けば、確実に顧客離れは起きるでしょう。

で、このCOCOS、ご存じの方もかと思いますが、あの牛丼すき家を運営するゼンショーHDグループのステーキレストラン・チェーンなのです。実はCOCOSをのぞいてみたのには、別の理由がありました。今春の職場環境改善促進委員会の報告および改善案提示を受けながらも、すき家では日中時間帯での一人勤務ワンオペレーションは一部で継続する意向を示し物議をかもしていたので、ゼンショーのストア環境を、すき家以外のチェーン店でも見てみたいと思ったのです。

あれだけ社会批判を浴びながらも、一部でワンオペを継続するという宣言の裏には自信にも似た何かを感じたので、傘下の他のチェーンで少人数のローコスト・オペレーションでもうまくCSおよびESを一定以上に保てるノウハウがあるのかもしれないと思ったからです。しかし、結果は言わずもがな。これがゼンショーグループの文化であり限界点なのだと、あらためて実感しました。

今更ですが、この文化は明らかに以下の2つの大きな流れを生み出します。
① 行き過ぎたローコスト・オペレーション⇒顧客満足度の低下⇒顧客離れ⇒業績悪化
② 行き過ぎたローコスト・オペレーション⇒従業員疲弊による離職率上昇⇒人手不足⇒サービス低下⇒業績悪化
こんなことは、ゼンショーさんご自身が百も承知のはずなのですが…。

多少の値上げを覚悟してでも行き過ぎたローコスト・オペレーションを見直す以外に、この流れを食い止める手立てはないのですが、どうやらゼンショーグループにはそのような考えは毛頭ないように見受けられました。あれだけ社会問題化し自社を苦しめたローコスト・オペレーションでありながら、その実情に何の変化も起こさぬまま店舗運営を続けていくその姿には、組織における改善を阻む企業風土というもののおぞましさをまざまざと見せつけられる思いがしました。

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