日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

私の名盤コレクション4 ~ New Morning / Bob Dylan

2011-05-15 | 洋楽
★New Morning / Bob Dylan

1. If not for you
2. Day of the locusts
3. Time passes slowly
4. Went to see the gypsy
5. Winterlude
6. If dogs run free
7. New morning
8. Sign in the window
9. One more weekend
10. Man in me
11. Three angels
12. Father of night

今回はボブ・ディラン。私の名盤は、70年リリースの「新しい夜明け」です。ロックに転向し絶賛された名作「ブロンド・オン・ブロンド」の後、モータ・バイク事故により隠遁生活に入り、復帰後は期待を裏切るフォークアルバムやカントリーアルバムをリリースしファンの批判を買ったディランが、「復活」との賛辞を持って迎えられたアルバムです。その割には現在ではなぜか軽く扱われ、あまり取り上げられることがないのがちょっと不思議。現在のディランにも通じる作品として、見直されるべき素晴らしいアルバムです。個人的には洋楽の道に迷い込んだ時点でディランの“最新盤”であった作品でもあり、その意味でもけっこう感慨深いものもあるのです。

1「If not for you 」は、ジョージ・ハリスンにも取り上げられたカントリー・フォークの名曲。ジョージとのセッションもあったのに(後にブートレッグ・シリーズで陽の目を見ました)、アルバムのコンセプトを重視したのか共演テイクを没にして取り直したバージョンが採用されています。アルバム構成としては、「ブロンド・オン・ブロンド」で確立されたフォーク・ロック的ナンバーを発展させたものと、新たなルーツ探訪とも言えそうなナンバー。フォーク・ロック系の代表が、タイトルナンバーの7「New morning 」 や2「Day of the locusts」、10「Man in me 」など。どれも素晴らしい。アル・クーパーのオルガン・プレイが実に現在のディランのキーボードワークに近く、今のバンド・アンサンブルの基本形は実はこの時代に培われたものなのではないかとも思えるのです。ちなみに「Man in me 」は昨年の日本公演でもやっていました(メロディは例によって全く別モノ)。

一方新しい試みと言えるのは、ワルツに挑戦した美しい5「Winterlude」、なんと驚きのディラン・ジャズ6「If dogs run free」(女性のスキャット が時代を感じさせます)、本格的ブルーズの9「One more weekend」。実に前向きな挑戦姿勢がディランの70年代のスタートを告げているかのようでもあります。恐らく、隠遁生活期を経ていろいろな人たちのとの交流から生まれた新たなディランの姿がここにあるのでしょう。つまり、ディラン流ルーツ・ミュージックへの回帰とそれを受けてのスワンプ・ロック化への流れがここにあるのです。事故後不評を買ったアルバムはいわばルーツへの回帰であり、それを受けたこの時期のジョージとの接点やこのアルバム・リリース直後のバングラディシュ・コンサートへの出演、さらにはレオン・ラッセルを迎えてのレコーディング等々は、一層のスワンプ傾向に向かう“ニュー・ディラン”なのです。その狭間に位置するこのアルバムこそ、ある意味その後のディランの原点でもあるように思えるのです。

現在のディランにも通じる本作の画期的な特徴は、ディランが特徴的なピアノを弾いており、ギターよりもむしろピアノを自身のメイン楽器で使用してる点でしょう。そして次作ザ・バンドとの初正式共演作「プラネット・ウエイブス」で一度スワンプ路線に決着をつけ、その後はしばし誰もが認めるディランらしいギター中心作に戻ります。一般にこのアルバムの印象がやや薄く、名盤とさせない理由はこのあたりの過渡期的イメージによるのかもしれません。ジャケットの哲学的な表情の名盤然としたディランの写真といい、楽曲の水準やアレンジの心地よさといい、ビートルズ解散後の“新しい時代”に入ったことを示唆する、70年代の初頭を飾るにふさわしいエポックメイキングな作品としてもっともっと評価されてていいハズなのですが・・・。

※ちなみにこのアルバムのアウトテイクの一部は、後にアルバム「Dylan」に収録されて発表されます(アルバムは契約の関係でCBSがディランの意向に反してリリースしたため、現在は完全廃盤です)。そこには、プレスリーやジョニ・ミッチェル、ジェリー・ジェフ・ウォーカーらのカバーなどもあり、ディランがこの時期にルーツミュージック探求の延長としてかなり幅広いチャレンジしていたことが分かります。ただこれらのカバー曲は出来が良いにもかかわらず、サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」のカバーなどを入れて不評を買った「セルフ・ポートレイト」の二の舞は避けようと思ったのでしょう、本アルバムには収録されませんでした。本アルバムへの正しい理解を一般からも得るたもめにも、本セッションの全貌をぜひブートレッグ・シリーズやデラックス・バージョンでリリースして欲しいですね。

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