日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

私の名盤コレクション10 ~ Italian Graffiti/Nick Decaro

2011-08-28 | 洋楽
★Italian Graffiti/Nick Decaro

1 UNDER THE JAMAICAN MOON
2 HAPPIER THAN THE MORNING SUN
3 TEA FOR TWO
4 ALL I WANT
5 WAILING WALL
6 ANGIE GIRL
7 GETTING MIGHTY CROWDED
8 WHILE THE CITY SLEEPS
9 CANNED MUSIC
10 TAPESTRY

またまた最近の再紙ジャケ化が嬉しい、マニアックな1枚を。ニック・デカロ。プロデューサー、アレンジャー、シンガー、ソングライター…、様々な顔を持つ才人です。このアルバムは、74年にリリースされた彼のセカンド・ソロ作。プロデューサー兼アレンジャー的センスでの当時の彼の発想、「カーペンターズのようなポップ・ミュージックにジャズやソウルのエッセンスを加えて、大人の音楽の味わいを表現したい」とは、まさしく新感覚。本作が後のAORの原点と言われる所以はまさしく、彼のこのコンセプトにあるのです。しかもプロデューサーは旧友トミー・リピューマ。あのマイケル・フランクスやジョージ・ベンソン、スタッフらをこの2~3年後に次々と世に送り出し、AORの誕生を支えた重要人物です。

コンセプト通り、全曲珠玉のカバーナンバーをクルセイダースのウェルトン・フェルダー、デビットTウォーカー、ハービー・メイソン等々ジャズ界の一流どころをメインに据え、見事な大人の世界を作り出しています。選曲がまた渋い。当時はまだ無名だったステーヴン・ビショップが書いたボサノバ・ナンバー1「UNDER THE JAMAICAN MOON」は、とにかくおしゃれ。スティービー・ワンダー作の2曲2「HAPPIER THAN THE MORNING SUN」6「ANGIE GIRL」あたりは、まさに初期AORの手触り感一杯で、明らかに2~3年後のジョージ・ベンソンやマイケル・フランクスに直結、という印象がバッチリ感じられるのです。特に後者のサックス・ソロなんぞは、74年ではありえない大人感です。

ジョニ・ミッチェルの名作「ブルー」収録の4「ALL I WANT」、トッド・ラングレンのデビュー作「ラント」からの5「WAILING WALL」、ランディ・ニューマンの8「WHILE THE CITY SLEEPS」あたりは、音楽界でも突出した超個性派3人の楽曲を見事な“大人アレンジ”で再演。ニックの個性で原曲イメージを塗り変えるカバーではなく、旧友でプロデューサーのトミー・リピューマとの共同作業の下、楽曲のオリジナリティを活かしながら縁取りを変える、当時はまだ誰も踏み入れたことのない新しい世界への確実な第一歩がここには記されているのです。一言付け加えておけば、あえてブラック系や個性派アーティストの曲ばかりを選んだことが、実はこの後のAORの成立にも大きくかかわってもくるのです。

ただ74年当時ではあまりにも早すぎた感は否めず、リリース当時にはこの作品が大きな話題になることはありませんでした。もちろん私も当時の日本ではリアルタイムでこのアルバムを聞くことはなく、知ったのは20年も後の事ではありましたが、「74年にこんなアルバムがあったのか」と本当に驚かされたものです。確かに、その後のAOR全盛時代の作品群に比べると、ニックのヘタウマ・ボーカルのせいもあってか、洗練されきれていないイナタさもあるのですが、それがまた今聞くと適度に“いい味”感を漂わせてもいるのです。このアルバムの後は、ニックは主にプロデューサーやアレンジャーとして活躍し、90年代には阿川泰子や山下達郎などとも仕事していましたが、残念ながら92年に持病の心臓発作で53歳で亡くなっています。AORの誕生を語る上では絶対に欠かすことのできない名盤です。

★J-CAST~大関暁夫連載「営業は難しい~ココを直せばうまくいく!」更新しました。
http://www.j-cast.com/kaisha/2011/08/29105546.html
インデックス
http://www.j-cast.com/kaisha/column/kokonao/index.php

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