日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「ブラック企業名言集」は本当にブラック?

2013-01-06 | 経営
今年は明日7日が仕事始めと言う企業も多いようです。休みが長くなればなるだけ、仕事に出るのが嫌になると言うのも人情であります。そんな働き手の皆さんの憂鬱な気持ちの表れか、ネット掲示板に「ブラック企業名言集」なるスレッドが立っていました。そこに書き込まれていた“名言”を、抜粋して列挙してみます。

1 当たり前に出来ることを何故当たり前に出来ない?
2 自分が社風に合わないと感じるなら石にかじりついてでも合わせろ
3 残業はタイムカード押してからしろ
4 とにかくここで経験積んどけ。ここに慣れれば他どんな職場も楽に感じるから
5 用事ないなら休むな、当然だ
6 お前の代わりはいくらでもいる
7 お客様にとっちゃ社員だろうがバイトだろうが関係ないからな
8 昨日のお前より一秒でも早く作業を終わらせろ
9 ここでダメだったら勤まる職場なんてないぞ!
10 休みの日でも呼び出しかかるかもしれないんだから、常に出勤できる準備しておけよ

以上は掲示板にあったもの全てではありませんが、実際によく聞かれそうなものを10個選んでみました。この中で完全にアウトというのは、3、5、10の3件。これらの台詞が本当にまかり通っているのなら、完璧な労基法違反であり即刻改善が必要な状況であります。経営者の皆さん、あなたご自身がこのような発言をしていることは間違ってもないとは思いますが、あなたの会社の管理者がこんなことを言っていないか否か十分ご注意いただきたいと思います。

さて、この3つ以外のものは果たしてブラックと言えるのか否か。どういう状況でどういう流れの元でこれらの言葉が発言されたのか分からないので、あくまでこの言葉のみで判断をさせていただきますが、言い方の良し悪しはともかく果たしてこれらの台詞がブラックかと言えば、必ずしもブラックではないと思えています。

1や2や6あたりは、部下を鼓舞するものとして決してほめられた言い方ではありませんし、むしろ働いている人間の立場からすれば勤労欲を下げるような物言いで、できれば避けて欲しい表現ではあります。でも思うに、管理者サイドのイライラがつのって強い口調に出ると、このような表現も発しうるのかもしれません。これだけをもってブラックと言ってしまうのもどうなのかなと、やや懐疑的にならざるを得ないところではあります。

さらに残りの4、7、8、9に関して言うなら、「ブラック」どころか、むしろ教育的な立場から言っている物言いなのではないのかとすら思えています。

例えば4「とにかくここで経験積んどけ。ここに慣れれば他どんな職場も楽に感じるから」。これはもう現場ではよく言われている、「現場さえしっかりこなせるようになればうちの会社で怖いものはないから」という意味合いで使われる上司の言葉なのではないでしょうか。

同様に7「お客様にとっちゃ社員だろうがバイトだろうが関係ないからな」。このあたりは、サービス業における、顧客目線を意識した顧客の立場に立ったサービス提供というものをバイト君に教え込む際の常套句でさえあるのではないかと思えます。

さらに8「昨日のお前より一秒でも早く作業を終わらせろ」は、一度できたことに安住させず常に向上心を持たせようとする上司の台詞であり、9の「ここでダメだったら勤まる職場なんてないぞ!」は、緊張感の足りない部下に対して危機感を持たせる際の台詞として十分ありうるものと考えられます。

何が言いたいのかと言えば、「うちの会社はブラックだ」と思っている人の多くは実は「ブラック」ではなくて、経営の立場、管理者の立場というものを知らずに「ブラック」と思い込んでいるケースが多いのではないかと思うわけなのです。ここにあげたもので言うなら、自社を「ブラック」と思っている人の7割は実はそうではないのではないのかなということになるわけですから。

もちろん、長い正月休みを終えて明日からまた嫌な仕事に逆戻りだという憂鬱な気分が、「うちの会社もブラックだぜ、聞いてくれよ」と書き込ませたのかもしれませんが。長引く不況下で「ブラック」という言葉は流行語のようになってしまい、言葉ばかりが一人歩きしてしまっているかのようにも思えてきます。

もちろん絶対に許されない正真正銘の「ブラック」企業が存在することも事実ではあるのですが、経営者の立場、管理者の立場から発言したことが従業員の立場から見たら「ブラック」に写ってしまっているという側面も、否定できないように思います。コミュニケーションの欠如が相互理解を妨げ、不景気下での不平不満に後押しされる形で、従業員の疑念に基づく似非(エセ)「ブラック」が作り出されているのかもしれません。

今年は経営と社員の間におけるコミュニケーションのデフレ化にも歯止めをかけて、似非「ブラック」の全廃を願いたいところです。景気浮揚に向けてこれもまた重要なポイントであるように思えるのです。

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