日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ78~会議を見直す

2010-01-07 | 経営
企業運営における最重要のフォーマルなコミュニケーション手段は「会議」です。ところがこの「会議」というものが実にやっかいで、中小企業ではちゃんと機能している企業の方が少ないのではないかと感じています。私が思うあるべき「会議運営」について少し触れてみます。

以前にもこのコーナーで「会議」は取り上げていますが、その時も記したと記憶している重要ポイント「会議の目的を明確にする」が、意外にできていないケースはかなり多いように思います。これができていない企業の会議は形式に流れ時間の浪費になる可能性が高くなります。私がおススメしている明快な目的分類別会議は3つです。「報告会議」「改善会議」「戦略会議」がそれです。以下幹部会議を例に説明します。

「報告会議」は文字通り各部門からの報告が主たる目的の会議です。本来、私個人の考えでは「報告に会議必要なし」と考えているのですが、中小企業等で会議慣れしていないケースなどでは、まず会議でのコミュニケーションに慣れる意味で「報告会議」を開催することはそれなりに意味があると思います。ただ問題はそのすすめ方です。ダラダラと各部門の報告を聞くだけの会議は全く無意味です。「報告会議」は、部門計画に対する進捗の報告が目的ですから「できたこと」の報告とその理由、「できなかったこと」の報告と原因分析&対応策を発表させます。そして、他部門からの質疑応答。質問が出ない場合はファシリテーターが質問者を指名します。質問が何もないということは他部門に対する何の問題意識も持っていないことであると、参加メンバーには十分に理解させることも必要であります。

次に「改善会議」。議題は「報告会議」からの拾い上げをメインにして会議間の有機的な連動を形作るのがベストですが、「報告会議」からの議題以外にも、トップおよび役員からの改善指示による議題、各部門から上程させる議題も必要です。あらゆる企業において「改善」が不要な組織は常に皆無であり、この会議は継続していくことで、「改善提案」が上がらないことは業務に対する取り組み姿勢に“問題アリ”なのだという認識を根付かせることも大きな目的のひとつとなります。会議進行は、上程部門が上程理由と改善策を説明し、それを“叩き”として議論し最終的には「改善策を決めること=決裁」が目的となります。「改善会議」の注意点は、意見の出しやすさから「改善」と「クレーム」をはき違えるケースがよくあるという点です。ここをはき違えてしまうと、この手の会議は目的を見失って各部門が言いたい放題の“放談会”になってしまうケースや、トップの“説教会”になってしまうケースがありますので、進行役であるファシリテーターは常に「目的」を見失わないよう進行上の舵取りが必要です。

最後に「戦略会議」。中小企業ではトップが一方的に「戦略」を指示するにとどまって、その思い描く方向感を軸にして「戦略」を議論するという習慣が意外に身についていません。「戦略会議」の議題の出し手は慣れるまではトップ自身でかまいません。例えば「新たに○○マーケットを攻めたらどうかと考えている。開発部門、営業部門それぞれがそれぞれの立場で可能性を分析の上、考えうる商品戦略とマーケティング戦略の案を上程して欲しい」と言った形で指示をする訳です。とにかく企業はいかに現状が恵まれた環境にあろうとも、立ち止まっていたのでは衰退を待つのみです。現状認識と将来展望を共有した上で、戦略的に次の一手を議論し方針を決めて進んでいくことが不可欠な訳です。商品開発、生産管理、マーケティング、営業、販売、人事、財務…、企業のあらゆる部門で「次の一手」となる新たな「戦略」が必要であり、戦略議論の存在しない企業はあり得ないのです。

「報告会議」「改善会議」「戦略会議」この3分類の会議ですが、実は根っこはひとつなのです。キーワードは「イノベーション=改革」。「報告会議」では目標達成に向けた「結果に対する改革」を、「改善会議」では組織の「現状に対する改革」を、「戦略会議」は組織の「将来に対する改革」を議論し決めることなのです。もし自社の会議が“マンネリ形式開催”であったり、あるいは“ガス抜き”や“息抜き”や“アピール”の場になっていたとしたら、今すぐ見直しをかけて各会議の目的を明確に示した上で、「報告」「改善」「戦略」に関する「議論→決定の場」へと改めていく必要があります。PFドラッカーも「企業は発展する経済においてのみ存在する」という言葉で、「イノベーション」の必要性を強く説いています。「イノベーション」の源泉たる「会議」を有機的に機能させることは、企業存続の必要最低条件でもあるのです。