日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

続続「小沢問題と新聞報道のあり方」

2010-01-16 | ニュース雑感
マスメディアのあるべき姿勢を考える意味で、小沢問題への大手新聞各紙の対応を引き続き追ってみます。

昨日は小沢氏の私設秘書を9年間勤めた現職の衆議院議員石川和裕氏が、東京地検に逮捕されました。容疑は政治資金規制法違反。これはまさしく小沢氏の資金管理団体陸山会にかかわる“裏金”等不透明な資金の流れを究明する動きに他なりません。すなわち、表面上は石川議員逮捕であっても、その実は小沢氏がらみの犯罪捜査に関し東京地検が“クロ”を確信し具体的に動き出したとの理解で間違いないでしょう。

ということは、マスメディアの本日朝刊段階でのあるべき論調としては、誰が見てもこの問題の責任者たる小沢氏の「進退」に言及するべきであると思います。本件の取材を続けているマスコミ各社は、学生時代から小沢氏に心酔し就職もせず小沢事務所で書生扱いから長年仕えてきた石川議員の小沢氏への“絶対服従”の実態を十分把握しているはずであり、疑惑の事件が石川氏単独の判断でなし得る状況になかったことは、誰の目にも明らかな訳です。であればすなわち、新聞各紙は自身の元秘書である現職国会議員が、その秘書時代の自身の事務所がらみの疑惑で逮捕されたという異常事態を受けて、論ずるべきは小沢氏本人の「進退」問題以外にあり得ないのです。

では実際に本日の各紙社説はどうかです。
読売:「石川議員逮捕 小沢氏の責任は極めて重い」→説明責任追及のみ。進退には言及せず
朝日:「石川議員逮捕 小沢氏の進退を問う」→進退問題に強く言及
日経:「石川議員逮捕は小沢氏に責任」→責任追及するも進退には言及せず
毎日:「石川議員逮捕 裏献金の有無が核心だ」→「捜査の進展次第では小沢氏の進退問題も」とやや婉曲ながら、進退に触れる
産経:「石川議員ら逮捕 小沢氏は進退決断せよ」→幹事長および議員職に関し進退問題に言及

といった具合で、産経の方向転換はともかくとして(たぶん産経のことですから、前回は単なるボケ対応で“特オチ”的に「小沢会見」を社説テーマにしなかったということも考えられます)、やはり対応がぬるいのは読売、日経。前回の問題と併せて考えると明らかに“小沢寄り(と言うよりは小沢畏怖?)”の報道姿勢がよく分かると思います。こう言った曲がった姿勢の新聞が日本で一番読まれている新聞であったり、ビジネスマンに一番信頼されている新聞であったりする訳で、本当にこれでいいのかと思わずにはいられません。もっともっと世の識者たちは、この辺の問題にも目を向ける必要があると思いますし、メディア同士での論説対決等による自浄作用発揮も期待したいところでもあります。兎にも角にも、国民への情報提供のかなり重要な部分を担う新聞の実態が、このような恣意的な情報操作に陥る危険性をはらんでいることは広く国民に対してアナウンスすべきであろうと思います。

私が新聞各紙が小沢氏の「進退問題」に言及するしないになぜそんなにこだわるかですが…。結局テレビやネットでどのような意見が交わされようが、やはり情報ソースとして信頼性が圧倒的に高いのは新聞な訳です。その新聞のうち最も読まれている2紙が論説で「進退問題」に言及しないなら、テレビでニュースを聞いた時「こりゃ小沢氏は辞任も考えるべきじゃないのか」と思った人でも、今朝の新聞を読んでトーンの緩さに誘導され「なんだまだ現状では進退を問うような問題ではないんだ」との誤った理解に導かれかねず、政治浄化に向けて誤った世論形成をさせかねないのです。これこそ間接的な「言論統制」であり、本当に恐ろしいことであると思うからなのです。

この問題をしつこくしつこく取り上げているのは、普段から権力に対する報道との距離や関係に疑問を持っていたからなのですが、このような機会にこそ普段見過ごしがちな各新聞の姿勢や権力との距離感、情報操作のリスク等について真剣に考えるべきではないかと思っています。