日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ77~“反面教師”鳩山首相に学ぶ、リーダーシップのあり方

2010-01-06 | 経営
鳩山内閣の来年度予算審議を前にして藤井財務大臣が突如辞任するという大事件が起きました。マスコミの報道によれば表向きの辞任理由は大臣の健康問題ですが、その真相は小沢民主党幹事長の横やりに嫌気しての辞任とのこと。すべての原因は小沢氏の言いなりになっている鳩山首相のリーダーシップの欠如にある、との論調が主流を占めています。鳩山首相に学ぶ「あるべきリーダーシップ」について考えてみます。

まずリーダーシップの定義です。一般的でかつ平易な言い方をすれば、「自己の見識に基づいて人や組織を動かすことができる能力」ということになると思います。自分の意見を持たない人、自分の仕事で手一杯で組織をリードできない人等はどうにもリーダーシップを持ちようがないと言えると思います。自分の見識を持つとはすなわち「判断力」であり、組織を「こっちへ行け、あっちへ行け」とリードする力は「決断力」であります。この観点で考えると、鳩山さんはどうやら自分の見識がなく(「判断力」の欠如)、人や組織を自らリードできない(「決断力」の欠如)が著しく様々な問題点を引き起こしている原因になっているように思われます。

リーダーシップには実はいくつかの種類が存在します。一般的な種類を紹介しておきます。
まず一番目は「牽引型リーダー」。メンバーの常に先頭を走ってグイグイと集団を引っ張っていくタイプのリーダーシップです。「牽引型」にもとにかく行動で示していくタイプ(中小企業には一番多いタイプ)と論理に基づいた明確な将来像の提示等の思想で共感させる全く異なる2つのタイプがありますが、メンバーはいずれの場合にもリーダーに感銘を受けてついていく形になるのです。二番目は少数派ですが、「人格型リーダー」と言われるタイプ。これは自身がぶれのない人格や価値観を形成し、それを基準にして組織運営を指導的な立場でリードしていくタイプです。ベテラン経営者等に存在し、メンバーはある意味“信者”的尊敬の念を持ってリーダーについていくケースが間々見られます。松下幸之助氏や稲森和夫氏はこのタイプの典型と言えるでしょう。

三番目は「触媒型リーダー」。これは得意分野や特殊技能が異なるメンバーの潜在能力に着目し、それらの人材の間に立って各人の能力が最大限に引き出されるような協働活動を有効に展開させるような役割を担うリーダーシップです。結果自己昇華をし合うような刺激的な組織環境や組織文化を作りだすことになり、また自分自身が自覚している以上の力を発揮できる環境がそれに憧れる新たなメンバーを呼び込み、能力開発の好循環を生み出すことにつながります。リクルートの創業者江副浩正氏などは、このタイプであると思います。

そして最後に、近年注目されつつある「奉仕型リーダー」です。より底辺からスタッフを支えスタッフが最良の環境で業務に専念できるよう腐心するタイプのリーダーです。一般的にサーバント・リーダーシップとも言われるものです。リーダーが組織に奉仕することで、結果的にメンバーは顧客や社会に奉仕することを学び前向きな企業文化を醸成します。国内では、資生堂の池田守男氏などがこのタイプに分類されるでしょう。リーダーシップは、だいたいこの4つのタイプに分類されるのですが、果たして鳩山首相ですが…。やはりというか、残念ながらというか、どれにもあてはまらないですね。やはり、この点からもリーダー失格ということになるのかもしれません。

最後に経営者の皆さまへのリーダーシップ養成に関するアドバスです。まずはご自身に「判断力」と「決断力」があるか否かを定期的に省みてください。勉強もせず人任せで油断をしていると、「判断力」「決断力」はみるみる低下してきます。リーダーシップは日々の努力の積み重ねで磨かれていくものなのです。「判断力」と「決断力」の確認ができたら次は、ご自身が先の4つのタイプのどのリーダーであるのか自身のリーダーシップのあり方を方向づけてください(「人格型」はそれなりの経験が必要です)。そしてタイプが決まったら、「判断力」と「決断力」を底支えにしつつそのタイプの「役割」に徹することです。どのタイブにもピタリとははまらないとお感じのリーダーにおかれましては、心がけひとつで一番容易に対応できる「サーバント・リーダーシップ」をご自身の「役割」として徹することをおすすめします。リーダーシップは「役割意識」ないところには生まれないことをどうかお忘れなく。