日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ブックレビュー~「コンサルタントの勉強法」

2010-01-05 | ブックレビュー
新年早々、あまり書きたいネタがないので、昨年末読んだ本のレビューをしておきます。

★「コンサルタントの勉強法/野口吉昭(PHP研究所1,000円)」

我が敬愛するコンサルタント野口吉昭氏の新作です。ベストセラー「コンサルタントの質問力」の後に「コンサルタントの習慣術」「考え書き話す3つの魔法」が出て、翻訳本をはさんで前作が「コンサルタントの解答力」、とまぁ昨年はかなり中身の濃い“能力開発”本を立て続けに出版して、大活躍の同氏の昨年のしめくくりは「勉強法」というわけです。これまでPHP新書から出ていた「コンサルタントの…」シリーズかと思いきや、装丁も新書サイズよりもやや大きく、価格もやや高く、中身はというとやや若向き?でしょうか。なんとなく「レバレッジ・シリーズ」の本田直之氏の若者向け近作に似た“嫌な予感”を少し感じつつ本書を手にしました。

結論から申し上げますと、テーマが「勉強法」であるだけに中身は確かに濃いものではありませんが、しっかりと野口イズムが根底に流れており「もしや」の心配は杞憂に終わりました。よかったです。野口氏お得意のコンサルタント的「3つの論理展開」で今回もテーマに明快に切り込んでいます。今回の「3つの論理」は、「点の情報」「線の情報」「面の情報」という切り分けで「情報」を分類し、「面の情報」の吸収に力を注げというものです。「点の情報」の代表例は新聞、「線の情報」は雑誌であり、「面の情報」は書籍であると。同感の極みです。蛇足ですが、ネット情報もまさに「点」と「線」の情報のみ。「面」の情報を持つ者が利用するなら「点の情報」「線の情報」も役に立つのですが、「面の情報」を持たない者にとって「点の情報」「線の情報」は、「点」のまま「線」のままに終わってしまうわけです。

さらにもう一点ポイントは、「フレームワーク思考」で「情報」を「知識」に変え、さらに「コンセプト思考」「ゼロベース思考」で「知識」を「認識」や「見識」に高めることこそ究極の勉強法であるとあり、まさにまさに私あたりが日常的に心がけていることを実にうまい表現でまとめてくれています。納得、納得です。ただ、「面の情報」の重要性やこの「情報」を高めていくくだりに関して言えば、経験の浅い若い読者にはちょっと難しいように思います。少なくとも若い人は、野口氏の他の著作(「コンサルタントの解答力」「考え書き話す3つの魔法」あたり?)をよく読んでからでないと、すんなりは入っていけない嫌いがあるかもしれません。その意味では、野口氏の「勉強法」は実は経営者や管理者を対象とした「勉強法」なのかもしれないと感じさせられました。また、彼が「面」づくりに役立つ書籍164冊を本書内で一覧表示してくれてもいます。これまた我が家の書棚にもある本ばかりなのですが、これだけでも「勉強のための本選び」の基準を知る上でけっこう参考になると思います。

テーマが軽いので中身に乏しいようにも感じますが、野口氏としては標準レベルの著作であると思います。実に簡単に読み終わりますので、難しい本の合間の息抜きにいかがでしょうか。10点満点で8点。

ところでところで余談ですが…
“レバレッジ”本田直之氏がまた変な本を出してます。イラストレーターのしりあがり寿氏との共著「本田流 しりあがり的 額に汗する幸福論」なる本がそれです。見開きページで、片面は彼なりの「ライフスタイルの美学」を説いて、もう片面で寿氏がそれを4コマ漫画にするという、もういい加減お付き合いできません状態の“おバカノリ自己啓発本”です。前作の“勘違い自己啓発小説”に続いてかなり“寒い”出来です。本田さん、ホントどうしちゃったの?って感じですね。当然、私は立ち読みのみなのでレビューしませんが…。