日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ビジネス・パーソンの大敵!ストレスと喫煙

2010-01-26 | その他あれこれ
先週末に小学校時代の同級生の訃報が届いて驚いています。あまりにも早い死ですが、死因は大腸癌であったとか。本人は新聞記者をしていたので、ストレスも人一倍あったのに違いありません。タバコも吸っていたのかもしれません(勝手な想像ですが、新聞記者のイメージってやはりくわえタバコで原稿を書くって感じですよね)。身近な訃報に接する機会が増え、健康の大切さ、ありがたさを身をもって実感する年齢になりました。

癌の大きな原因とされているのがストレス。そしてそのストレスに加えて、癌細胞を生み出す手助けをしているのが喫煙であるということが医学的に証明されてもいます。ストレスと喫煙で思い浮かぶのは会社経営者=社長の皆さんです(私の周りにはなぜか、ヘビースモーカーの社長さんがたくさんいます)。社長のストレスは並ではありません。社長はたいてい「俺と同じ気持ちで会社を考えてくれるヤツが社内にひとりもいない」と嘆かれるものですが、そんなことは当たり前のこと。誰も好き好んでストレスの世界に飛び込もうとは思わないわけで、たいていの幹部社員はたとえ№2であろうとも「最終的な責任は社長にあるんだから・・・」と、心に逃げ場を持っているわけです。

でも社長には逃げ場がない。業績が悪化すれば他の社員は「この業績でボーナスは出るんだろうか?給与は下がらないのだろうか?」と基本的には自分の心配をすればすむことですが、社長はそうはいきません。「会社は大丈夫か?万一のことがあったら社員とその家族は大変なことになってしまう」。会社が危なくなったら、社員はたとえ幹部であっても場合によっては“次”を探せば済む話ですが、社長が“次”を探して逃げ出すわけにはいかないのです。景気がなかなか本格的に立ち直りを見せない今の時期、ストレスのない社長さんはごくごくまれなのではないでしょうか。だとすれば、ストレスが人一倍多い社長さんがタバコを吸えば、いっそう“発ガン・リスク”が高まるのは間違いありません。この機会に禁煙をするに越したことはないのです。でも、なかなかうまくいかないのが現実ですよね。

先日、以前仕事でおつきあいのあった中小企業の社長さんと会食する機会があり、「禁煙」に関して興味深い話を聞いたので紹介します。
社長「大関さん、以前あなたから禁煙のススメをうかがったよね。時間と金と健康の無駄遣いであるとね。実は私ね、2ヶ月ほど前にタバコやめましたよ。大関さんのススメが効いたわけばかりじゃないんですがね」
私「あんなにタバコはやめないとおっしゃっていたじゃないですか?どうしてまた」
社長「いやなにね、外の会合に顔を出す機会が多いのだけれど、業種を問わずタバコをやめている社長が多くてね」
私「社長さんは、“人は人、自分は自分”とおっしゃってましたよね」
社長「もちろん、その考えは今も変わらないよ。皆が止めているから止めたのではなくて、問題はその理由なんだよ」
私「理由って、タバコの値上と不景気での懐具合ですか?」
社長「不況や値上が理由でタバコを止めなくちぁいかんような社長はそうはいないだろうよ。実はね、ある社長がこんなことを言っていてね・・・」

社長「景気が悪いとストレスがたまる、ストレスがたまるとタバコも増える、ストレスとタバコが増えれば加速度的に癌になる確率が高くなるって医者に言われたらしいんだ」
私「なるほど、健康管理重視ってことですか?」
社長「いやそんな単純な話じゃない。その社長が言うには、不況下の大切な時期に健康リスクを増やすような社長は経営者として失格だってことなんだ。これにはグサッときたね。確かに自分のリスク管理もできない者が会社のリスク管理をできるかって言われれば、グウの音も出ないからね。それに社長は会社(株主)や取引先だけじゃなくて社員の生活にも責任を負っているわけだよ。それを自分の健康面を省みないというのは無責任極まりない訳さ。まさにこのご時世だからこその決心なわけですよ」
私「経営者として素晴らしいご決意ですね」
社長「最近タバコをやめた他の社長方も、「今自分が健康を害したら会社が大変なことになる」という同じような理由の人が多いので驚いたよ」

なるほど、納得のお話です。不況のこの時期に、会社(株主)、取引先はもとより社員に対して経営者としての責任を負うがゆえの「禁煙の誓い」。経営者として立派な心がけであると思います。ちなみに件の社長、禁煙の理由を全社員に話をしたところ、社長の高感度がアップし社内の結束も一段と固まって業績は急上昇だとか。組織は所詮、人が作るものですから、社長のちょっとした社員への気持ちが伝わるだけで全然社内の風景も変わるわけです。これができるのも社長だからであって、そこがストレスを負ってでも取り組む社長の“重責”の面白みでもあるわけです。

同級生の訃報から、こんなエピソードを思い出した次第です。
我々世代のビジネス・パーソンの健康維持に、ストレスと喫煙は大敵です。

旧友のご冥福を心よりお祈り申しあげます。