日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

“官系企業”一斉反省の日

2008-04-25 | その他あれこれ
107人もの尊い命が失われた、JR福知山線の脱線事故から25日で丸3年。我々からみれば、あっと言う間の3年ですが、遺族の方々には長く辛い3年間であったであろうと、心中察して余りあるところです。

この間、JR西日本の体質改善や保障問題はどこまですすんだのかと言えば、聞こえて来るのは悪い話ばかり。JR西日本だけでなく、JR各社が“官系企業”の根本的体質を改めない限り、多くの尊い命と引き換えにした顧客第一、安全第一の教訓は、活かされているとは言えないのです。

事故原因を振り返って見れば、運転士が「ダイヤ遅延」の咎めを避けたいが為の大幅な速度オーバー。顧客サービスどころか、絶対に犯してはならない顧客安全までも軽んじた結果の大惨事でした。このあまりに自己中心的な運転士の判断は、決して一社員の問題ではないと思います。そこには、かなり根深い“官系企業”の企業風土に根ざした問題が横たわっているのです。

JR各社はじめ“官系企業”に共通して、脈々と流れる企業風土があります。「既得権商売」による競争意識の欠如がそれです。例えば、新幹線。同じ陸路の競争相手がいないがために、いまだに“殿様商売”を続けています。航空会社などでは、新規参入も含め同路線の競争激化が著しく、その結果として、運行コストの有効消化と顧客ニーズに応える同業競合戦略上の優位確保を狙った「早割」などの新サービスの登場につながっています。「競争」が生み出した「企業努力」は、確実に利用者の満足度向上にもつながるのです。

“官系企業”の大半は、独占または寡占市場を引き継いで、今も事業のベースは“競争意識”の薄い「既得権ビジネス」にあります。すなわち、そもそも「競争」も「市場原理」もない、至って恵まれた状況 にあったのです。その上意識改革のないまま形だけの「民営化」。「競争」も「市場原理」もない状況がもたらしたのは、「苦労なく楽してもうかる仕事感覚」であり、さらにそれが形だけの「民営化」の下で方向修正されることもなく「顧客軽視」や「自己中心」の組織風土を作りあげてしまったのです。

その結果が先の大惨事。たまたま大惨事が起きた先がJRであって、他の“官系企業”も“顧客後回し”の風土は同じ。けっして他人事では済まされないのです。当ブログでも、“官系企業”の問題点は、たびたび指摘をさせていただいております。すべて原因をつきつめれば、3年前の大惨事の原因と同じこの「組織風土」に根ざした「既得権ビジネス」特有の「競争のない業界ガリバーの自己中感覚」に他なりません。

多くの尊い命が失われたこの事件の本当の教訓を、すべての“官系企業”役職員はしっかりと胸に刻んで、毎年この日には自らの行動を省みて欲しいと思います。この大惨事の記憶は、JR西日本はもとより全“官系企業”にとっての“反省の慰霊碑”であり、決して風化させてはならないのです。