日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日銀首脳人事 ~ 財務省OB「天下り」、本当は何が問題か

2008-04-14 | ニュース雑感
まだまだ決着しない日銀首脳人事。総裁は白川副総裁の昇格でなんとかおさまったものの、今度は副総裁人事をめぐって与野党で前回同様の綱引きが続いています。

世論の動向を見ると、当初2名の元事務次官→日銀総裁候補擁立の際には、圧倒的に反対姿勢の民主支持が多かったものの、今回の渡辺元財務官→副総裁の件に関しては、姿勢支持としては過去の民主支持一辺倒は崩れ、どうやら自民、民主半々といった感じが強いようです。

一部の国民が民主支持から自民支持へ傾いた理由ですが、大半は「天下り」はよくないけど総裁じゃないからいいんじゃないの、というもののようです。そして加えて、民主党の小沢さんもいい加減しつこいんじゃないの、という印象論になっているようでもあります。新聞各紙の論調もほぼそれに近く、どうも個人的には首を傾げたく思います。

小沢民主党が渡辺氏を不同意とした理由は、「天下り」は絶対認めない、の一辺倒のみ。それが、結局国民およびマスメディアの「もういい加減にしたら」の原因になっているように思います。もちろん、私も今回の件に関して言えば、日銀首脳人事を早く正常化させることは国際政策から見てとても大切なことも十分分かっています。それでも、日銀ナンバー2人事に「天下り」は認められない。それには確固たる理由があるのです。小沢党首もそれを分かっているなら、その点をもっと明確に国民に示す必要があるように思います。

私が考える対国民向け、分かりやすい日銀ナンバー2の「天下り人事」不同意理由はこうです。日本国政府は今国債という形で多額の借金を抱えています。この国債発行を含めて、国の財布を管理しているのが財務省であり、いわば多額の借金を抱えている企業の資金繰りを担当する経理部長であるとも言えるわけです。一方の日銀はと言えば物価の番人であり、経済情勢を眺めつつ金融政策を専管業務としてつかさどることで、金利の上げ下げのサジ加減を調整して、国民経済の安定化をはかっている訳です。

もし日銀首脳に元財務省幹部が座り、景気回復による金利の引き上げ局面を迎えたとき、果たして出身母体の資金繰りを全く無視して中立的な利上げ判断ができるでしょうか。なぜなら、今仮に1%の利上げを実施した場合、現在の国債発行残高から計算すると、ざっと8兆円の利払い負担増が国の、いや財務省の資金繰りに大きな影を落とすことになるからです。

例えて言うなら、つぶれそうな企業の経理部長が取引銀行の融資担当役員に抜擢されるようなもの。普通ありえない人事です。もちろん仮にあった場合、そのような立場で絶対に中立的な判断ができないと言い切るつもりはありません。ただ、そのような出身母体との心情的な関係で、国民的利益を損なわせるそうな恣意的な判断が起こりうる人物を、日銀首脳に据えることは好ましくないのではないか、と考えるのです。

福田総理に関して言えば、今回の「適材適所の人事を不同意の理由を説明して欲しい」発言は笑止千万です。確かにこれまでの3回の人事案件、すべて経験・知識から判断して、人物は素晴らしく「適材」ではあるでしょうが、先の理由をお分かりいただければ「適所」などとは決して言えないはずなのです。それを分からず、「人事権濫用で翻弄され、可愛そうなくらい苦労している」とは恥の上塗りと言う以外に言葉が見当たりません。

一方の民主党小沢党首も、先に記したようなもっともっと具体性を持った説明を、政府自民党に対しても、国民に対してもしっかりとして、感情論ととられない論理的な理由立てをしっかりしていくべきではないでしょうか。それができなければ、来るべき「解散=総選挙」においても、政権政党として国民の十分な支持を得ることは難しいのではないかと思います。

与党も野党も、感情的な物事の判断を捨てて、国民生活第一の基本に立ち返った議論をして欲しいと、切に思う次第です。