日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

野イチゴの魅力 ~ ラズベリーズ2

2007-10-21 | 洋楽
引き続きラズベリーズ。

昨日「ラズベリー=野イチゴ」で、アイドルの甘さ(=いちご)とロックのワイルドさ(=野)が組み合わさったバンドという話をしました。

デビュー当時エリック・カルメンのルックスと甘いマスクで、アイドル的な売られ方をしていたラズベリーズが、他の3人のメンバーがロック志向のカラーを出して甘さと荒さの微妙なバランス感覚のもとに作られたのが、彼らの3枚目のアルバム「サイド3」です。個人的には、間違いなく彼らの最高傑作であると思っています。

それまでの2枚はどちらかと言うと、エリック・カルメンの甘いメロディを前面に、やや優等生的アイドルバンドのアルバムというイメージでした。この3枚目はメンバーのロック志向が明確に打ち出され、エリック天性のメロディはそのままに、かなりロック的なアレンジで「野イチゴ」の「野」を強く感じさせるバンドをハッキリと意識させる内容になっています。
しかも、ジャケットは当時流行の特殊変形ジャケット。山盛りのラズベリーを箱詰めにした変形や開き方もさることながら、箱部分をエンボス加工で質感を出すなどの凝り様で、このアルバムへのメンバーやスタッフの力の入れようが分かると思います。

しかしながら、アルバムセールスは惨敗。シングル「トゥナイト」「アイム・ア・ロッカー」「エクスタシー」の3曲はすべてビルボード誌50位以内に届かず、アルバムに至っては100位にも入れませんでした。
恐らくそれまでのアイドル的に売られた誤ったセールス戦略から一転、ロックバンド色が強くなったアルバム「サイド3」は、彼らの主要ファンから受け入れられにくくなったのではないでしょうか。
<コンサルタント的一言>
長期展望に立った販売戦略立案と、戦略変更の際の綿密な戦術立案の重要性がここからはみてとれます。どんなに良い商品でも、販売戦略を誤ってはヒットし得ませんから。

個人的には特にシングル「トゥナイト」なんかは、ラブソングの甘いメロディにハードな演奏で仰々しいアレンジが、今でも大のお気に入りです。私はエリック・カルメンでは、とにかくこの時期のラズベリーズが一番面白いと昔から力説しています。

今年、彼らの再結成コンサートを収録した2CD+DVDのアルバムが発売されました(国内未発売)。この演奏がとにかくいいんです。オリジナルメンバー4人で、まさに「サイド3」の時期の再現のようなライブを展開しています。
サポートメンバーを従えて、基本はオリジナルの完全コピー。サウンドは「サイド3」といった趣です。代表曲はすべてやってます。エリックは歳のせいか、やや高音が苦しそうな場面がありますが、でもDVDで見る限りはさすがにアイドルではないですが、鍛えられた体つきで、決してメタボなナツメロシンガーではありません。

それともうひとつ、この再結成ライブを聞いていて驚いたこと。ザ・フーのカバーなんかもやっていて、米国人の彼らが実は英国の「モッズロック志向だったんだ」と気づかされました。エリックの趣味ではないのでしょう。恐らくはギターで、バンドのアレンジの要であったウォーリー・ブライソンの嗜好ですね。よくよく考えれば、「トゥナイト」も「明日を生きようも」「ゴー・オール・ザ・ウエイ」も、ギターのリフがけっこうイカしていて、まさにフーのピート・タウンゼントみたいなんですね。30余年後の新発見でした。ウォーリーはギターもなかなか達者で、ダブルネックギターなんかを巧みに操る姿は、チョイ悪オヤジ風でなかなかかっこいいですよ。

ラズベリーズファンは必見、必聴の1枚です。HMVだと3枚組でも3千円以下(送料込)で買えたと記憶しています。当時を知るファンには超オススメです。
タイトルは、「Live On Sunset Strip / Raspberries 」(RYKO RCD10879)です。