日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

価値ある優勝

2007-10-02 | ニュース雑感
今日は巨人がセントラルリーグの優勝を決めました(写真は29日の日ハム胴上げね)。とりあえず、ここまでは予定通りです。
あとは、日ハム、巨人が無事、クライマックス・シリーズを勝ち抜いて直接対決できることを祈るのみです。昭和56年後楽園決戦の雪辱じゃ!(シツコイ!)

ところで、今年の日ハムの優勝、個人的には大いに価値ある優勝であったと思います。確かに、昨年の“信じられな~い”25年ぶりの優勝には感動させられました。牽引車たる新庄の選手の大活躍、スラッガー小笠原のMVPに輝く好成績、この2人の存在なくして昨年の優勝はありませんでした。今年は、確固たるエースに成長したダルビッシュ投手の存在はあったものの、全員野球で勝ち取った優勝は、私は昨年以上に価値あるものだと思っています。

今年は昨年の優勝立役者の2人、新庄、小笠原が引退、移籍でそろってチームを抜け、開幕当初はプロの評論家たちも、「戦力ダウンは否めない」「がんばってAクラス」という評価が大半だったと記憶しています。

しかし終わってみれば2年連続優勝。なぜ戦力ダウンと言われながら日ハムは優勝できたのでしょう。
それは、ヒルマン監督の選手への意識付け、すなわちリーダーによるスタッフのモラール・アップ指導戦略に勝因があったと思っています。
普通優勝チームから、主力選手が抜けた場合、現場指揮官はフロントに要請しトレード等による補強で翌年の戦力ダウンを図るのが常套手段です。しかし、今年の日ハムは大型補強は一切せず、あえて2名の大物選手が抜けたままの状態で、今シーズンのキャンプを迎えました。

そこで起きたことは、「お前らは優勝チームだ。力があるんだから、抜けた穴を皆で力を合わせて埋め合わせて、乗り切ってこそ本当の強いチームになれるんだ」という指導者のメッセージと、それへの皆の呼応。すなわち、レギュラーは一層の結束力で力を合わせる努力をし、控えの選手たちには「俺たちにもチャンスがある」という意識の高揚が生まれ、チーム内での新たな活気がみなぎったと言えます。
これぞ、ヒルマン流「人材育成」、「チーム力アップ術」の真骨頂と言えるのではないでしょうか。

トレードで戦力補強をしていたらどうでしょう。もちろん、一概に結果は決め付けられませんが、他チームからの大物移籍選手で空いた穴を埋めれば、レギュラー陣は「なんだ俺たちは信用されてないんだ」、控え選手は「また、今年もレギュラー取りは難しいな」と、決してチームのムードにはプラスにならない状況も多く起きることが考えられます。何よりも、外からの補強に頼った首脳陣への選手からの信頼の絆は、弱まることはあっても強まることはまずありえないでしょう。

企業の人事、人材育成でも基本は同じことが言えます。成績のあがらない部署で、部門長が人事に「このメンバーじゃ勝てないよ。もっと優秀なヤツをよこしてくれ」と言って補強をすれば、一時的に部門実績はあがるかもしれませんが、成績のあがらない人材を育てることは、決してできないでしょう。

人材の育成、チームのムードの向上には、心理的作用が大きく影響します。たとえ戦力的に弱い状況でも、「お前らに任せたぞ」「お前らが頼りだ」と言われれば、人間誰しも「がんばって上司の顔を立ててやろう」ぐらいは思うものです。
さらにそれがチーム力が低下した局面であればあるほど、そのことが人材を伸ばす、チームワークを強化するキッカケになりうるのではないでしょうか。すなわち戦力ダウン時や戦力低迷時こそ、人材育成、チーム力向上の一大チャンスであると思えるのです。

そんな絶好のチャンスに他部署からのエース級移籍で補強したのでは、「なんだそういうことか」とスタッフのムードもモラールもあがらないでしょう。
今年はようやく恒例の「補強」が日の目を見ましたが、毎年毎年、球界のスラッガーたちを移籍させ「補強」を重ねつつも優勝を逃してきた巨人軍には、そんな選手間の心理的重しが毎年存在していたのではないかと思えてなりません。

今年補強をせずに優勝を勝ち取った日本ハムファイターズ、小笠原と言うスラッガーをその日ハムから抜く形で補強した読売ジャイアンツ。
もし両軍、今年の日本シリーズであいまみえるならば、「人を抜かれた日ハムは抜いて優勝した巨人なんかに意地でも負けてなるものか!」と日ハム選手一同心を一にし、さらに一層の心理効果によるモラールアップで、2年連続日本一奪取は確実であると勝手な予測をしております。