日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ8 ~ 上司の背

2007-10-10 | 経営
「部下は上司の背を見て育つ」という言葉があります。
組織において部下は上司の後をついていくものです。すなわち部下の目に入るのは常に上司の背中な訳です。

この言葉を簡単に言えば、部下は上司の行動を見てそれを基準に仕事をしてますよ、だから上司は気をつけなさい、と言うことです。
どちらかと言えば「上司が真面目に一生懸命なら、部下も真面目で一生懸命になる」ということを言っているのではなくて、むしろ「部下は上司の悪いところはすぐ真似るから気をつけなさい」と言っていると理解するのが正しいようです。

もちろん、いいこともたまには真似ます。自分が人の上に立つようになったとき、「あ、自分が昔仕えたあの温かい上司のまねをしてみよう」とか、こんな場合、手本にするものは過去の経験しかないので、その中で自分がいいと思った上司を真似るということは当然ありうることです。でも、それはその上司に仕えたずーっと後のコトがほとんです。すぐに真似られてしまうのは、もっぱら悪いことのほうなんです。

上司がいい加減で、平気で遅刻したり二日酔いでいい加減な仕事をしてたりすれば、部下も程度の差はあれすぐにそうなります。
人間は元来、勤勉家ではなくて怠け者なのです(私は自分を基準に性悪説を唱えます)。だから上司の勤勉な部分の真似はなかなかしませんが、自分が楽できる怠け者の部分のマネはすぐにするのです。上司が怠けたりだらしなかったりするのを見れば部下は、「あ~、あんなことやってんの。俺も同じことしよ。俺がやったって自分伸していることじゃ文句言えないだろ。楽勝じゃん」ってなもんです。

上司がサボリ屋の部下は、だいたいサボリ屋です。
上司が優柔不断の部下は、たいてい優柔不断です。
嫌な仕事をなかなか手をつけない部下は、上司が嫌な仕事を人に押し付ける上司だったりします。
自己主張のない担当者が、なぜいつまでも自己主張ができないのか、よくよく考えたらその上司に自己主張がなかった、などと言うこともよくあります。

悪い子供がいると「親の顔が見てみたいよ」と言いますが、まさにそれと同じ。
部下のダメな部分は、上司の鏡でもあるのです。
部下の態度や仕事ぶりに不満を感じたときは、ぜひ自分を振り返ってみてください。その不満な部分と同じようなところや似たところが、あなたにもありませんか?
部下はあなたが思っている以上に、よーくあなたのとこを見ています。特に上司の「手抜き」や、「いい加減さ」、「逃げ」なんかは絶対に見逃しません。

だからこそ、管理者たるもの、己に厳しく自分の行動を律して、部下から「あなたも人のこと言えないじゃないですか」などと絶対に言わせない、まず第一にその基本を守れなくては部下がちゃんと育つことはないのです。

管理者の一番大切な役割は、次代を担う部下を育て、組織を永続させることです。
部下の前では手を抜いたり気を抜いたりしない、自分の欠点や弱みを極力部下に見せない努力をする・・・。
「部下は上司の背を見て育つ」は、組織を永続的に成長させていくために、すべての管理者が常に頭に置いて、日々部下の前での自己の行動を省みることに役立ててほしい言葉であります。

「管理者の背中」は、組織の成長にとってとても大きな意味を持っているのです。
すなわち、組織において、管理者教育こそが最も大切であるとよく言われる理由はここにあるのです。