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歴史文化を読み解く

ヨーロッパ! ヨーロッパ! (3)EUとユーロの実験

2014-02-14 07:06:15 | Weblog

 

さて、現在のヨーロッパで最も注目すべきは、EUとユーロの行く末だろう。

1993年に発効したマーストリヒト条約によって誕生したEU(欧州連合)は、初めの「西欧諸国の連合」の性格を脱皮して、今や、27ヵ国が加盟する大連合に成長した。歴史・文化・言語・通貨が異なる国々がこれほどまで連合を組むとは予想できないことであった。

また、2002年には、欧州統一通貨として、「ユーロ」が発行され、EU加盟国のうち16ヵ国がユーロを採用し、ほかにも6ヵ国がユーロを導入している。「ユーロ」は、今や、ドルに次ぐ「第二の基軸通貨」と評されるまでになった。これもまた、大規模な通貨統合が実現するとは夢にも思わぬ出来事だった。

だが、統合地域が巨大化し、統合通貨が拡大するにつれて、その中で、歪みが否応なく露呈してくるのは避けられない。それは、EU内やユーロ圏内における国ごとの格差として現われる。上部に、旧「西欧」諸国が、そして、下部に、周辺の北欧・東欧・南欧諸国が、という二重構造が出来上がってくる。

そして、EUやユーロの安定を脅かしたのが、アイスランドに始まる周辺諸国であった。ギリシア、ポルトガル、ハンガリー、最近のアイルランド・スペインに見られるように、いずれも経済基盤の弱い国々が財政不安・金融危機・通貨不安の波に洗われた。これを解決するのは並大抵の努力では無理かもしれない。

改めて、EU統合と通貨統合の理念に各国が立ち返ることが求められる。それは何か、に答えることはできない。ただ言えるのは、現代のEUの実験・ユーロの実験は、はるか昔の中世期に、大西洋・地中海・カスピ海がとりまく広大な地域を「ヨーロッパ」として霧の中から浮かび上がらせた歴史的経験の再生のはずだ、ということだ。 (2010/11)

 


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