花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「団扇文様」について

2010-08-17 | 文様について

presented by hanamura


お盆を過ぎて、
日も段々と短くなってきました。
それでもここ数日は、
各地で真夏に戻ったような暑い日が続いていますね。
セミもまだまだ夏真っ盛りとばかりに
元気な鳴き声で大合唱をしています。

この時期、各地で行われる
お祭りや花火大会には
団扇や扇子といった夏の小道具たちが必需品ですね。
とくに団扇は盆踊りのときに
用いることもあり、
まだまだ大活躍しそうです。

手で扇(あお)いで風を起こす団扇は、
以前、このブログでお話しした扇子とその機能は同じです。
しかし、扇子は折りたため、団扇は折りたためません。
扇に柄をつけただけのとてもシンプルなつくりです。

そのシンプルなつくりのためか、
団扇は古代の中国やエジプトでも
すでに用いられていたようで、
当時の壁画には、
団扇と思われる器物が描かれているようです。

日本でも古墳時代にはすでに
用いられていました。
そして、その用途は自分で扇いで、
風を起こすためだけではなく、
神事の際に禍(わざわい)や汚れをはらうための
道具として用いられていました。

平安時代には、
扇の部分を鳥の羽や絹で作成した
さまざまな団扇が作られ、
貴族達の間で用いられていました。

戦国時代には、
合戦の際に指揮者が手に持って戦を采配する
軍配団扇が作られました。
この軍配団扇は、
現代でもお相撲のときに行司が手に持っているものです。
下の写真は、その軍配団扇を文様化したものです。



やがて、この団扇は着物などの文様として
描かれるようになりました。
もちろん、一般的な団扇文様のほか
軍配団扇をモチーフにしたものも
多くつくられています。

団扇の文様では、
団扇の扇部分のみを意匠化して、
扇の中には描かれた絵をあらわすという
文様の中に文様という
2重構造になったものが多いのです。

下の写真は、大正から昭和初期頃に作られた布です。
団扇文様の中には果物が描かれています。
柄のない団扇の文様は、
一見すると、とても抽象的です。



長く貴族や武士などの支配階級の間で用いられていた団扇は、
江戸時代になると庶民にも広まり、
火を起こしたり
虫を払ったりするための道具としても
日常的に用いられました。

それにともない、
扇の文様も数多く描かれるようになり、
扇の中に描かれる絵のバリエーションも増えていき、
俳句や浮世絵などが描かれるようにもなりました。
やはり、当時つくられていた豪華な能装束にも
団扇の文様があらわされていて、
さまざまな人たちの間で
団扇が用いられていたことがうかがえます。

趣のある絵や
格調高い文様が描かれていた
昔の団扇とは異なり、
現代ではさまざまな広告などが
デザインされていることも多く、
それはそれで、こういう時代なので
しょうがない気もするのですが、
盆踊りやお祭りなどで、
きれいな意匠の団扇をもっている女性を見かけたりすると
「粋な方だなぁ」と思ったりもします。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は8月24日(火)予定です。


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