花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「墨絵」について

2010-08-10 | 文様について

presented by hanamura


暑い日が続いていますね。
それでも、立秋を迎えて、
ほんの少しですが、
風が涼しくなってきているように感じられます。
秋の涼しい風が待ち遠しいですね。

まだまだ暑さが残るこの季節の着物や帯の意匠には、
秋の涼風を感じられるものが多くあります。
モチーフだけではなく、
色合いや意匠もすっきりと
シンプルなものが多いようです。

しかしながら、シンプルなものほど、
作り手の技術力が顕著にあらわれてしまいます。

今日、お話しする墨絵も
熟練した技術力が必要な染めの技法のひとつです。 

墨絵は水墨画と同じもので、
墨一色で濃淡をつけ、
奥行きや陰影をあらわす絵画の技法です。

墨絵は、墨一色でありながらも
墨の濃淡により生じる陰影や
筆の線に強弱をつけることで
奥行きが表現されます。

多くの墨絵は、下絵なしで直接描かれるため、
その絵には画家の技術力だけではなく、
研ぎ澄まされた精神力などが凝縮されているのです。



墨絵は古来の中国で
山水画を描くための技法として考案されました。
日本には鎌倉時代に禅の思想とともに伝えられ、
武家社会の中で広がっていきました。

和歌山県にある熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)の御神服には、
墨絵で海辺の風景があらわされた袴が保管されています。
この袴は「海賦裳(かいぶも)」とよばれ、
南北朝時代に足利将軍が調達したもののようで、
当時から墨絵が着物に描かれていたことが窺えます。

江戸時代中期には、
当時活躍した絵師の尾形光琳が
墨絵で小袖に秋草文様を描いていました。

この江戸時代中期という時代は、
実は友禅染めが考案された時期でもあります。
友禅染めは、文様の縁を糊で隈取って染める染色方法で、
色彩豊かな文様をあらわすことができます。

一方、着物や帯の意匠に描かれる墨絵は、
無線友禅ともいわれています。

無線友禅とは、糊で糸目を引く友禅染めに対して、
糸目がない友禅染めのことを指します。
無線友禅は糊を使わずに、生地に直接文様を描いて、
染め上げるのです。

墨絵の場合は、染料の墨にミョウバンなどの定着剤を混ぜ、
下絵を描かずに直接生地に描きあげます。
失敗してしまうと生地が無駄になってしまうので、
一気に描き上げる熟練した技術力が必要なのです。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は8月17日(火)予定です。


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