ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「軽井沢シンドローム」 たがみよしひさ

2007-11-23 11:14:39 | 
無口な人は、ちょっと苦手だ。

たまに何も考えていない人もいるが、無口な人はとても思慮深いことが多い。いい気になって喋っていると、鋭い突っ込みに窮することがある。声に出さないだけで、本当は頭の中で思考が駆け巡っているのだと思う。

私はお喋りなほうなので、無口な人と対峙すると、少々緊張する。なにか失言しそうで、ちと怖い。注意して看ていると、無口な人は目で語ることがある。目だけでなく、表情や仕種などにも意思が表れることもある。うわ!気を使うなぁ~嫌いではないのだけどね。

ところで、無口な人が文章を書き出すと、とても饒舌なことが多い。え!と唸るような一文を目にすることも珍しくない。私の秘めやかな楽しみの一つが、日頃無口な人の文章を読むことでもある。けっこう面白いこと多し。

興味深いのは、漫画家で無口な人の描く漫画には、科白が面白いものが少なくないことだ。そんな漫画の代表作が表題の漫画だと思う。80年代にけっこう売れた漫画でもあったが、絵柄が個性的なので、かなり好き嫌いが出た漫画でもあった。

実は兄弟で漫画家だが、兄(小山田いく)のほうがお喋りだという。一方、弟は兄が嘆くほど無口だそうで、兄弟対談のようなインタビューを読んだら、けっこう面白かった覚えがある。司会役の編集者が、弟を喋らせようと悪戦苦闘しているさまが、妙に可笑しかった。

つい最近まで、続編というか、耕平の子供たちの物語がヤング・チャンピオンに掲載されていた。正直、イマイチだった。たがみ氏、落ち着いちゃったのかなぁ~?科白の切れも落ちていたし。でも、初期の作品の切れは、今読んでも新鮮に感じるから、たいしたものだと思います。
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「巨人伝説」 笠井潔

2007-11-22 09:33:00 | 
明治維新以来、日本では官民問わず国を挙げて欧米に追いつけ追い越せ、やっつけろと邁進してきた。前提条件として、今のままの日本では駄目なんだとの自己否定の認識と覚悟があったと私は思う。

驚くべきというか、呆れたことに、それは軍事、経済、法律、行政機構のみならず、食生活から生活習慣にまで踏み込み、芸術から宗教にまで至る。当然に学問の世界でも、欧米志向は当然のものとして受容された。

率直に言って、学問というより、翻訳そのものだと言いたくなる傾向があった。いや、その翻訳という作業をありとあらゆる分野で行ったのが、日本の近代化であったと思う。

にもかかわらず、日本は欧米にはならず、日本としての独自性を保ち続けた。そうなってくると、改めて日本とは何かを問う動きが顕在化するのは必然だと思う。だからこそだろう、日本ほど「日本人論」が盛んな国は珍しいと思う。

様々な人たちが、いろいろな日本人論を展開したが、その一人に表題の著者、笠井潔がいる。彼は縄文時代に着目した。この未開で野蛮な時代にこそ、日本人の原型が形作られたと主張した。

本来は評論家というか、文撃フ世界の人だと思うが、文剣]論から伝奇小説まで広い分野で活躍する奇特な人でもある。自分の思想を表現するのに、伝奇小説を活用した評論家は、もしかしたらこの人が初めてかもしれない。

小説家としては、やはり伝奇ものの「ヴァンパイア戦争」シリーズのほうが有名かもしれないが、私としてはこちらを推したい。落葉樹林の森こそ、日本人の現風景だとの想いが重なるので、どうしてもこちらに感銘を受けてしまう。

かなりの長編であり、その政治的傾向は必ずしも私とは方向性を同じくするわけではないのだが、それでもかなり影響を受けた作品なのです。万人向けとは言いがたいのですが、機会がありましたら是非どうぞ。単純に伝奇小説としても、十分楽しめますから。
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「スカートの風」 呉善花

2007-11-21 09:43:07 | 
建前と本音。日本人を語るとき、必ず言われる特質だが、日本人以上に建前と本音の乖離が激しいと思われるのが韓国人ではなかろうか。

高度経済成長と、円高が右肩上がりで急上昇してからだと思う。日本の繁華街では外人クラブなるものが、急激に増加した。コリアン・クラブやフィリピン・パブ、ロシアン・バブに中国人倶楽部と雨後の竹の子の如く涌き出でた。

私も一通り遊んでいるが、実のところコリアン・クラブだけは行ったことがない。でも、噂は随分聞かされていた。一すわり5万円とか、飲み食いに手を使う必要がない(全部、オネエチャンがしてくれる)とか、少々呆れてしまうような話ばかりだった。

新宿あたりの大型キャバレーに行けば、日本人はもちろん、カナダ娘やら、オーストラリア娘やらもいて、さながら人種の坩堝を感じさせる。もちろん、中国小姐やフィリピーナや東欧娘もいる。日本語を中心に外国語が混じって、訳のわからない喧騒に囲まれることとなる。

ところが、不思議と韓国娘はいない。在日の娘ならいるかもしれないが、日本人と大差がなく分らない。でも、ほぼ間違いなく韓国から来た娘さんは見たことない。不思議に思いベテランのホステスさんに聞いてみると、過去に採用したことはあるが、どうも他の外国の娘と上手くいかず、現在は雇っていないとのこと。

同席していた中国小姐とロシア娘が「コリアン、生意気!」と口々に同意する。贔屓にしているフィリピーナが複雑そうな表情を浮かべている。後で聞くと、コリアの子の接客態度は、非常に丁寧で丁寧すぎるくらだという。それが他の外国人ホステスの反感を買うのだそうだ。

なんとなくわかった気がした。外国人のホステスさんたちは、あまりにへりくだった態度を不快に思うらしい。外人ホステスはどんなに丁寧な日本語と接客を教えても、その態度は客とホステスは同格といったものとなる。ところがコリアンのホステスさんたちは、平気で下僕然とした態度をとる。それが他の外人ホステスには癇に障るようだ。

或る程度自由になるお金が、月に7桁くらいある中小企業の社長さんとか、資産家の旦那さんが愛人を囲ったなんて話を聞く事がある。以前は日本人が大半だったが、いつの頃からかコリアンの娘さんが愛人であることが多くなったと聞いていた。

外国人のホステスさんたちは概して愛人を嫌がることが多い。期間を定めての金目当ての愛人ですら、なかなかに応じないらしい。ヴィザ目当ての偽装結婚ならまだしも、愛人となると相当な金を積まないと難しいと聞かされていた。ところが、コリアンの娘さんたちは違うらしい。むしろ愛人になることを誇らしく語るという。本当かよ?

そんな時に手に取ったのが表題の本だった。男尊女卑の気風が今も残る韓国における男女の事情を赤裸々に語ったこの本に驚いた人は多いと思う。私も驚いたが、たしかに韓国の女性が日本に逃げてきていると書かれると、そうかもしれないと思った。

その後、仕事上で韓国人の愛人女性と話す機会を得たが、愛人であることを恥じる気風はまったく感じられなかった。また、旦那さんの死後も、本国に帰国する気もないようだった。

韓国人というと、極端なまでの愛国心と反日感情が有名だが、個人的にはそのような感情のほとばしりに出くわしたことはない。むしろ、拍子抜けするほど日本に居たがる人であることが多い。

ちなみに、著者は日本人に知られたくないことを書いたがゆえに、韓国では裏切り者と蔑まれ、入国(帰国だと思うが)拒否の憂き目にあったこともあるらしい。でも、相変わらず韓国から日本へやってくる女性は減らないようだ。

海外在住の友人に聞くと、ヨーロッパや南米などで韓国人に出くわすと、実に親しげに日本人に近づいてくるそうだ。肌の色の違う異国では、同じ黄色人種としての連帯感に目覚めるらしい。

う~ん、韓国人。ややっこしい連中だなぁ~
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M1戦車のリサイクル

2007-11-20 12:41:57 | 社会・政治・一般
子供の頃は、お小遣いを貯めてはプラモデルを買って、作るのを楽しみにしていた。

作るのは、主に第二次世界大戦中の兵器だった。戦闘機はもちろん、戦艦、航空母艦などを好んで作ったが、やはり好きだったのは戦車だった。なんて無骨でカッコいいのだろう。

なんといっても陸の王者だ。防衛網を突破して、制圧する能力においては絶対無二の存在である。今日においては、対戦ヘリを始めとして対抗兵器が揃えられてはいるが、それでも昼夜天候を問わない拠点制圧能力はずば抜けている。

CS放送で、戦車のベスト10を放送していたが、TOP1はロシアのT34戦車だった。第二次大戦におけるロシアの勝利の立役者であり、バランスのとれた機動力、攻撃力、防御力は今世紀最高の戦車との評は納得のいくものであった。

次点はアメリカのM1エイブラムス戦車。80年代から実戦配備され、湾岸戦争から今日のイラク戦争まで活躍している名戦車だ。実のところ、アメリカにとって会心の傑作でもある。

空に海に、常に最強の武器を備えたアメリカ軍だが、不思議なくらい戦車だけは遅れをとっていた。第二次大戦中のM4シャーマンなんぞ、機動力こそ優れていたが、攻撃力防御力は著しく低く、ドイツのタイガー戦車1台で14台のM4が撃破された記録が残っているほどだ。空からの支援攻撃がなければ、ほとんど勝ち目がない弱弱しい戦車であった。ただし、移動性能だけは優れていたので、アメリカ軍を展開させるのには大きく貢献した。

その後の朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でもあまり優秀な戦車の開発には成功していない。20世紀最強の軍事力といいつつ、数少ない欠点が戦車であった。それだけに、M1戦車の成功は非常に喜ばしいものであった。

しかし、アメリカ軍はもう十年近く新しいM1戦車の生産はしていない。今後も予定していない。実は現在、イラクなどに配備されているM1戦車は、すべて再生品なのだ。

戦場で敵からの攻撃により、または疲弊や故障などで使えなくなったM1戦車は、すべてアメリカに持ち帰られる。そして、工場で徹底的にレストアされる。バラバラに解体され、素体にまで分解された上で、修繕を施される。もちろん、敵の攻撃の威力の研究や、対抗策のための資料集めもされている。

それから部品を集められ、最新の兵装に換装されて、新品同様に組み立てられる。実地テストの後に、ようやく実戦部隊に配置される。その期間は約10ヶ月だそうだ。だから、新車を生産する必要がない。徹底したスクラップ&ビルドを貫徹している。陸軍の予定では2040年まで、この仕組みを維持するそうだ。

このような話を聴くと、アメリカ軍の思考の柔軟さに圧唐ウれる。現在の兵器は、戦車に限らず、驚くほど値段が高騰している。その最大の要因が電子兵装にある。つまり基本的な素材部分は、3~40年変わりなくとも支障がない。従って素材部分にかけるコストを押さえ、電子兵装にコストをかけるためにスクラップ&ビルドを活用しているそうだ。

敵わないなぁと慨嘆せざる得ない。アメリカはいろいろと欠点の多い国ではあるが、こと戦争に関する真面目さにおいては、やはりずば抜けている。現在、派手なMD構想が目立ちがちだが、本当に恐ろしいのは、情報の共有化を始めとしたソフト面での進歩だと思う。日本の坂本教授らが推し進めるユビキタス構想なんぞ、既にアメリカ軍では実用化の域に達している。

軍事力と経済力において、今なお世界一の水準を保つ覇権国アメリカとの協調関係は、日本の生命線だと思う。国内事情を優先して、判断を誤る愚はほどほどにして欲しいものだ。
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「暗殺者」 ロバート・ラドラム

2007-11-19 09:34:35 | 
現在、大ヒット上映中とかの映画「ボーン・アルティメイト」は、三部作の最終話だという。アメリカの人気作家である、ロバート・ラドラムの生んだ最大のヒーローが、この主人公ジェイソン・ボーンだ。

映画では、マット・デイモンが演じている。ちょっと若すぎる気もするが、概ね好評なようだ。まだ三作目は観てないので、映画自体には論評する気もない。ただ・・・何故に数あるラドラムの作品から表題の「暗殺者」を映画化したのだろう。

ラドラムの面白さは、その着想の非凡さと、構想の壮大さだと思っている。正直、「暗殺者」という作品には、それほどのインパクトは無かった。駄作ではないのだが、ラドラムとしては物足りないと思っていた。ただ、主人公にヒーローものとしての色合いが似合うので、映画化には向くかもしれない。ただ、原作が長いので、映画化は難しいと思っていたら、三作に分けて映画化するとは思わなかった。

それでも、この一作をもってラドラムの代表作とされるのには異議がある。せめて「マタレーズ暗殺集団」か「ホロクロフトの盟約」として欲しい。どちらも大作なので、映画化は難しいと思うが、ミステリーとして、また冒険ものとしては屈指の名作だと思う。

私はラドラムを唯一、フォーサイスに匹敵する作家だと評している。しかし、フォーサイスの作品がわりと映画化に向くのに対して、ラドラムの作品は映画化には向かないとも思っている。現場への取材力とリアリティさならフォーサイスだと思うが、歴史的な考察や大胆な着想力ではラドラムが勝ると思う。だからこそ、ラドラムを読むのは楽しい。想像がどんどん拡がっていく楽しみがあるのだ。これこそ、映像に勝る本の魅力だと信じている。

嗚呼、また他の作品を読み返したくなってきた。困ったゾ。他に未読の山があるのになぁ~
コメント (4)
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