現在、建築業界ではとんでもないことになっている。
昨年の姉歯建築士による構造計算の偽装問題は、霞ヶ関を大いに慌てさせたようだ。矢継ぎ早に法改正を繰り出して、事態の収拾に努めた。
この改正法が出たは良いが、困った事態が発生した。あまりに急な改正であったため、解説書やマニュアルといった実務上必要な細かい補足がまったく間に合わなかった。一年の猶予期間には間に合わず、止む無く試行錯誤で建築申請を行ったが、対応する審査機関はもちろん、指導すべき官庁までもが細かい指導が出来ず、再審査の繰り返し。
この審査は只ではなく、もちろん有料だ。その負担は施工主となるから、たまったものじゃない。以前は一ヶ月に600件の建築審査を請け負った国内有数の業者が、今年7月はわずかに3件。おかげで、今年下半期は住宅の着工件数は、例年にない凄まじい減少が見込まれる。
容易ならぬ事態に気がついた政府は、ようやく審査の簡素化などを言い出したが、遅きに失したと思う。私は建築審査の実情は知らないが、法改正が大雑把なものであることは承知している。これは仕方ないというか、当然のことなのだ。
あまりに細かすぎる法律は、むしろ実用的ではなく、法文では大きな大綱を定め、細かい点は法令、通達などで補足する。更に実務上、判断に迷わぬように解説書やマニュアルが作成され、活用されてはじめて法律は世に広まる。
優秀なエリートたちが作成した改正法は、国会を通過しただけでは使い物にならない。行政の末端と、その影響を受ける産業界との細かい連携があってこそ、はじめて世に活用される。
最近のエリートさんたちは、このことがまるで分っていない。現場を知らず、馬鹿殿教育を受けた弊害が露骨に顕れている。日本のキャリア官僚たちは、30代には各行政機関の末端の長を経験する。経験するといっても、お飾りのような存在に過ぎない。行政機関の末端では、この若殿様に実務をさせるようなことはしない。地元の名士との交流や、見学会などには参加していただくが、間違っても実務判断などはさせない。現場を知らないエリートに、現場をかき回されては堪らないからだ。はっきり言えば、現場の邪魔。だから、実務は経験させない。
幸いなことに、エリートさんたちは自ら手を汚すような作業を嫌がる。責任が生じるような実務は回避する。「よきに計らえ」とふんぞり返っていれば、後は下っ端どもが処理するだけだ。命ずれば、何事もすみやかに動くことに馴れている。
行政の末端から上がってきて、様々な段階を経て霞ヶ関に持ち込まれた法制度の改正案は、実務を知る下級官僚たちの作ったものだけに、齟齬は少ない。ただ、実現するまでに時間がかかる。
最近、目だってきたのが霞ヶ関のエリートさん主導のトップ・ダウン式の法改正だ。急変する世情の変化に対応したものが多く、実施までのスピードは速い。しかし、これには問題が多い。その典型が、今回の建築審査の停滞だと思う。
私のみたところ、今年下半期は間違いなく景気は停滞すると思う。日経あたりは必死で好景気の持続を訴えるだろうが、停滞どころか不況の匂い濃厚だと思う。景気に影響の大きい建築業界の不況は、ほぼ間違いなく霞ヶ関発の官製不況だと考える。もっとも、誰もその責任はとらないと思うけどね。
昨年の姉歯建築士による構造計算の偽装問題は、霞ヶ関を大いに慌てさせたようだ。矢継ぎ早に法改正を繰り出して、事態の収拾に努めた。
この改正法が出たは良いが、困った事態が発生した。あまりに急な改正であったため、解説書やマニュアルといった実務上必要な細かい補足がまったく間に合わなかった。一年の猶予期間には間に合わず、止む無く試行錯誤で建築申請を行ったが、対応する審査機関はもちろん、指導すべき官庁までもが細かい指導が出来ず、再審査の繰り返し。
この審査は只ではなく、もちろん有料だ。その負担は施工主となるから、たまったものじゃない。以前は一ヶ月に600件の建築審査を請け負った国内有数の業者が、今年7月はわずかに3件。おかげで、今年下半期は住宅の着工件数は、例年にない凄まじい減少が見込まれる。
容易ならぬ事態に気がついた政府は、ようやく審査の簡素化などを言い出したが、遅きに失したと思う。私は建築審査の実情は知らないが、法改正が大雑把なものであることは承知している。これは仕方ないというか、当然のことなのだ。
あまりに細かすぎる法律は、むしろ実用的ではなく、法文では大きな大綱を定め、細かい点は法令、通達などで補足する。更に実務上、判断に迷わぬように解説書やマニュアルが作成され、活用されてはじめて法律は世に広まる。
優秀なエリートたちが作成した改正法は、国会を通過しただけでは使い物にならない。行政の末端と、その影響を受ける産業界との細かい連携があってこそ、はじめて世に活用される。
最近のエリートさんたちは、このことがまるで分っていない。現場を知らず、馬鹿殿教育を受けた弊害が露骨に顕れている。日本のキャリア官僚たちは、30代には各行政機関の末端の長を経験する。経験するといっても、お飾りのような存在に過ぎない。行政機関の末端では、この若殿様に実務をさせるようなことはしない。地元の名士との交流や、見学会などには参加していただくが、間違っても実務判断などはさせない。現場を知らないエリートに、現場をかき回されては堪らないからだ。はっきり言えば、現場の邪魔。だから、実務は経験させない。
幸いなことに、エリートさんたちは自ら手を汚すような作業を嫌がる。責任が生じるような実務は回避する。「よきに計らえ」とふんぞり返っていれば、後は下っ端どもが処理するだけだ。命ずれば、何事もすみやかに動くことに馴れている。
行政の末端から上がってきて、様々な段階を経て霞ヶ関に持ち込まれた法制度の改正案は、実務を知る下級官僚たちの作ったものだけに、齟齬は少ない。ただ、実現するまでに時間がかかる。
最近、目だってきたのが霞ヶ関のエリートさん主導のトップ・ダウン式の法改正だ。急変する世情の変化に対応したものが多く、実施までのスピードは速い。しかし、これには問題が多い。その典型が、今回の建築審査の停滞だと思う。
私のみたところ、今年下半期は間違いなく景気は停滞すると思う。日経あたりは必死で好景気の持続を訴えるだろうが、停滞どころか不況の匂い濃厚だと思う。景気に影響の大きい建築業界の不況は、ほぼ間違いなく霞ヶ関発の官製不況だと考える。もっとも、誰もその責任はとらないと思うけどね。