ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「沖縄ノート」 大江健三郎

2007-11-15 14:18:20 | 
こんなはずではなかった。

強欲な資本家が富を独占して、善良な労働者を搾取する資本主義社会は間違っているはずだ。資本家と俗悪政治家と殺し屋軍人が手を組んで、大陸を侵略し、鬼畜米英に戦いを挑んだ。そのあげくに、多くの日本人を死なせたのだから、やはり資本主義は間違っている。

資本主義が崩壊すれば、その後にくる社会は社会主義であるべきだ。それなのに、資本主義の塊であるアメリカに支配されて、あげくに資本家が復活し、アメリカに媚び売る政治業者が跋扈するなんて間違っている。こんな日本はオカシイ。私の理想を奪った日本なんて、いくらでも貶めてやる。

罪なき労働者たちを擁護する私は、なんてイイ人なんだろう。戦前の軍部を非難している平和を愛する私こそ、日本の良心を体現しているはずさ。天皇制反対!と大きな声で叫びたいが、これやると私の愛読者から反感を買うので、これは英語で叫ぶことにしよう。どうせ愚民どもは分らないはずだし、モスクワや北京が喜んでくれるはずだ。

日本が資本主義であるのはオカシイ。富は公平に分け与えられるはずだ。平等こそ正しい。戦争を否定すれば、平和が訪れるはずだ。私はイイ人だ。だから、私の主張は正しいはずだ。

それなのに、今も日本は資本主義のままだ。バブルが崩壊しても、まだ愚民どもは分らないようだ。なぜ分らない。社会党はバラバラになってしまうし、労働組合は企業の代弁者に成り下がった。教職員組合は、組織率を減らす一方で、ますます孤立化している。こんなはずではなかった。

沖縄では、終戦間際に軍の命令で、多くの罪なき市民が自決させられたはずだ。直接取材はしなかったけれど、私の告発は正しいはずだ。平和のためには軍を貶めて、軍人を嫌悪する国民感情を育まねばならない。正しい目的こそ、あらゆる手段を正当化するのだ。事実かどうかは重要ではない。大切なのは、平和だ。これほどまでに平和を愛する私が間違っているはずないのだ。

その私を訴えるなんて、とんでもない奴らだ。私は正しい。絶対に正しい。うん、間違いなく正しい。私こそ、日本の良心を表す最後の砦なのだ。認めるもんか、間違いだなんて。

あたしゃ、断言します。絶対に大江健三郎は間違いを認めません。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする