十代の頃、私は山登りが好きだった。登攀技術を要するクライミングも好きだった。もっといえば、木登りだって好きだった。(煙と同じ・・・)
だから進化論を知り、猿から進化したと分った時は、なるほどと納得したものだ。ウッキッキ~♪
でも不満に思うこともある。何故にこれほどまでに筋力が落ちたのだ?
垂直の岩壁ならば、足を上手く使えばいいが、覆いかぶさるような岩壁になると、どうしても手の握力が十分にないと登れない。トップクライマーともなれば、小指の先がひっかかれば、全体重を支えられる。岩に空いた穴に指を突っ込んで、かぶさるような岩壁を登っていく映像をみたことがある。西ドイツのシュテファン・グロヴァッツという天才クライマーだった。呆れて口をポカンと空けてしまったぐらい、衝撃的な映像だった。
解説してくれたプロ・クライマーの森氏によると、指の力、握力を高めるための数十種類のトレーニングがあるとのこと。私もいくつかやってみたが、筋肉がひきつれるような拷問的なトレーニングだった。ちなみに、簡単な奴を一つ紹介しましょう。
新聞紙を床にひろげてください。その真ん中を片手でつまんで、そのまま何度も握り締めて小さな紙のボールを作る要領で丸めてみてください。もちろん、片手だけでやってください。朝刊一部を5分以内に紙ボールに数個丸め上げたら合格です。
多分、普通の人だったら最初の一枚目で既に軽い筋肉痛を覚えると思います。しかも、上腕部の内側の奥の、日頃意識しない筋肉が痛むように感じるでしょう。このトレーニングを毎日やると、握力は相当アップします。なお、トレーニングは自己責任で御願いします。筋肉痛を訴えられても、責任取りかねますから。
他にも指懸垂とか、握力を高めるためのトレーニングが幾つもあり、私も十代の頃は必死でやったものだった。もちろん、筋力だけでは登れない。日本のトップ・フリークライマーである平山ユウジ君は、彼が高専の頃から知っているが、実に足の使い方の上手い青年だった。彼は筋トレだけでなく、バランス・トレーニングも重視していた。当時からずば抜けていたが、そのトレーニングに挑む姿勢の真摯さに驚嘆した記憶がある。
ところがだ、これほどトレーニングを重ねても、人間はお猿さんには敵わない。小柄なニホンザルでさえ、その握力は軽く200キロを超えるという。チンパンジーともなれば、300キロ以上の握力があるらしい。もちろん、猿は筋トレなんかしない。
握力だけで岩壁にすがりつくのが、せいぜい5分たらずだった私は、動物園で何時間も鉄棒にぶら下がっている猿たちを羨望の眼差しでみていたものだ。猿だけじゃない。あの暢気な顔立ちのコアラでさえ、一日中木に捉まっても、筋肉痛のそぶりさえみせない。私の親戚のある柔道の選手は、シドニーの学生国際大会に出場した際、休日に動物園に行きコアラの檻の前で写真撮影中に、コアラにGジャンを捉まれて、引き裂かれたことがある。Gジャンを引き裂く握力って、どのくらいなのだろう。
人間は進化した結果、知力は向上したようだが、代わりに筋力は大幅に衰えた。なにかを犠牲にしなければ、新しい能力は獲得できないものなのか。進化の不思議さを妙に実感したのが、握力トレーニングでした。
その進化を題材に短編を書いたのがエドモンド・ハミルトンの表題の作品だ。キャプテン・フューチャーや星界の王などのスペース・オペラで知られるハミルトンだが、実は短編の名手でもある。逆転の発想というか、アイディアの豊富さが実に楽しい作品でした。東京創元社が最近、復刻して再販しているので、機会がありましたら是非どうぞ。
だから進化論を知り、猿から進化したと分った時は、なるほどと納得したものだ。ウッキッキ~♪
でも不満に思うこともある。何故にこれほどまでに筋力が落ちたのだ?
垂直の岩壁ならば、足を上手く使えばいいが、覆いかぶさるような岩壁になると、どうしても手の握力が十分にないと登れない。トップクライマーともなれば、小指の先がひっかかれば、全体重を支えられる。岩に空いた穴に指を突っ込んで、かぶさるような岩壁を登っていく映像をみたことがある。西ドイツのシュテファン・グロヴァッツという天才クライマーだった。呆れて口をポカンと空けてしまったぐらい、衝撃的な映像だった。
解説してくれたプロ・クライマーの森氏によると、指の力、握力を高めるための数十種類のトレーニングがあるとのこと。私もいくつかやってみたが、筋肉がひきつれるような拷問的なトレーニングだった。ちなみに、簡単な奴を一つ紹介しましょう。
新聞紙を床にひろげてください。その真ん中を片手でつまんで、そのまま何度も握り締めて小さな紙のボールを作る要領で丸めてみてください。もちろん、片手だけでやってください。朝刊一部を5分以内に紙ボールに数個丸め上げたら合格です。
多分、普通の人だったら最初の一枚目で既に軽い筋肉痛を覚えると思います。しかも、上腕部の内側の奥の、日頃意識しない筋肉が痛むように感じるでしょう。このトレーニングを毎日やると、握力は相当アップします。なお、トレーニングは自己責任で御願いします。筋肉痛を訴えられても、責任取りかねますから。
他にも指懸垂とか、握力を高めるためのトレーニングが幾つもあり、私も十代の頃は必死でやったものだった。もちろん、筋力だけでは登れない。日本のトップ・フリークライマーである平山ユウジ君は、彼が高専の頃から知っているが、実に足の使い方の上手い青年だった。彼は筋トレだけでなく、バランス・トレーニングも重視していた。当時からずば抜けていたが、そのトレーニングに挑む姿勢の真摯さに驚嘆した記憶がある。
ところがだ、これほどトレーニングを重ねても、人間はお猿さんには敵わない。小柄なニホンザルでさえ、その握力は軽く200キロを超えるという。チンパンジーともなれば、300キロ以上の握力があるらしい。もちろん、猿は筋トレなんかしない。
握力だけで岩壁にすがりつくのが、せいぜい5分たらずだった私は、動物園で何時間も鉄棒にぶら下がっている猿たちを羨望の眼差しでみていたものだ。猿だけじゃない。あの暢気な顔立ちのコアラでさえ、一日中木に捉まっても、筋肉痛のそぶりさえみせない。私の親戚のある柔道の選手は、シドニーの学生国際大会に出場した際、休日に動物園に行きコアラの檻の前で写真撮影中に、コアラにGジャンを捉まれて、引き裂かれたことがある。Gジャンを引き裂く握力って、どのくらいなのだろう。
人間は進化した結果、知力は向上したようだが、代わりに筋力は大幅に衰えた。なにかを犠牲にしなければ、新しい能力は獲得できないものなのか。進化の不思議さを妙に実感したのが、握力トレーニングでした。
その進化を題材に短編を書いたのがエドモンド・ハミルトンの表題の作品だ。キャプテン・フューチャーや星界の王などのスペース・オペラで知られるハミルトンだが、実は短編の名手でもある。逆転の発想というか、アイディアの豊富さが実に楽しい作品でした。東京創元社が最近、復刻して再販しているので、機会がありましたら是非どうぞ。