ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

満願 米澤穂信

2022-06-10 11:52:13 | 
向き不向きは確かにある。

私はなぜだか子供の頃から役人になることを拒否していた。とりわけ警察官だけは御免だった。絶対無理だと思っていた。

なにせ子供の頃は、けっこうな悪ガキだったので、入っちゃいけないところに入り込むし、行っちゃいけないとされた場所にも平然と踏み込んでいた。

米軍基地の隣町で育ったので、ベースに入り込んでMPにとっ捕まったこともある。立川の裏通りで酔っ払いの白人兵たちからチョコやガムをせしめていた子供だったので、警官には頻繁につまみ出された。

私はあの警官たちの嫌そうな目つきを生涯忘れることはないと思う。

ただ、世話になったこともある。大概が迷子になった時だが、私の場合迷子になるのはもっぱら遊園地かデパートの中なので、警官よりも警備員の世話になることが多かった。警官に保護されるのは、もっぱら繁華街をうろつき、白人のチンピラに苛められた時だ。

勘違いされると困るのだが、私が警官の厄介になったのは、もっぱら幼少時であり、小学生の高学年になると滅多に警官に捕まることはなかった。せいぜい不審者尋問か自転車の所有者確認くらいだ。

中学、高校になると警官に目を付けられるようなヘマはしなかった。まァ悪い事をしてない訳でもないのだけれど、バレてないから問題なし。

こんな子供であったので、絶対に警官にはなるまいと決めていた。いや、無理だ。あんな堅苦しい生き方は、私には出来ない。

でも警官や刑事に憧れる子供の方が多数派なのは知っていた。だから、そんな話題が出ると、私は沈黙を守った。私のみたところ、警官なんぞに憧れる奴は、正義感が強いか、強い奴を嫌いながらそれを表に出せない連中だと知っていたからだ。

前者はまだいい。正義感を強く持つ人こそなるべき職業が警官だと思うからだ。しかし、後者はどうなのだろう。まともな警官になる奴もいるだろうけど、そうでない奴もけっこういるんじゃないかと邪推していた。

そんな警官を描き出したのが表題の短編集の冒頭の作品だ。ベテランと呼ばれる年になっても、心の底で自分には向いてないことを自覚している警官の人生。なかなか興味深い作品だった。

読後、つくづく痛感しました。やはり私にも向いてない職業なのだとね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする