ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

張り子の虎なのか?

2017-11-29 12:04:00 | 社会・政治・一般

張り子の虎と揶揄されたのは、シナの清朝であった。

これは中華(世界の中心)であると常々意識していたシナの民には、たまらなく屈辱であった。だからこそ、その後の辛亥革命、日本の侵略、国共内戦を経て蛮人どもを排除し、シナを統一した共産党政権は、以降決して蛮族どもに侮れない国づくりを目指してきた。

もっとも、世界、特に欧米がシナの力を実感したのは、朝鮮戦争時に100万人を超える兵力を投入させたシナの人海戦術を畏怖したからであり、シナの文明に対する敬意ではなかった。

決して口には出さないが、北京政府はそのことをよく分かっていた。欧米に侮られない為には、人海戦術だけではダメで、欧米の近代技術に負けない軍事力が必要である。

だからこそ、共産シナでは理系大学教育に力を入れてきた。現場叩き上げの毛沢東やトウショウヘイはともかく、共産党の幹部の多くが理系学部の出身者であり、科学教育には相当に力を入れてきた。

優秀な人材は、国費で欧米に留学させて、近代科学の導入に力を入れてきた。もっとも留学しても帰国しない青年も多数いたが、情報だけは必死で収集して、軍の兵器の近代化に励んできた。

欧米に留学と記したが、実際は旧ソ連への留学が最も多く、また近代兵器の大半は、旧ソ連から導入している。特にミサイルや戦闘機などは、ソ連からしか導入できなかった。

しかし、長く国境を接している中ソの場合、平和は暫定的であることも分かっていた。なんとか兵器の国産化を完遂しなければの思いは、相当に強かった。

その結果、ソ連の武器を輸入すると、それを徹底的に分解し、構造を解明して模倣するようになった。それはソ連側でも予想の範囲であったようだ。問題は、その模倣した兵器をシナ独自の開発による兵器として輸出するようになったことだ。

如何にアメリカという共通の敵があろうと、この背信的行為はソ連指導部の不興を買ったことは言うまでもない。結果としてソ連は、兵器の輸出は許しても、核心技術の輸出を認めなくなった。

実のところ、シナの技術者たちが如何に努力しようと模倣できない部分はかなりあった。ロシアの戦闘機に搭載されているAL31というエンジンには、高出力に耐えうる冶金技術の粋が込められている。

シナにはこの冶金技術がないため、シナが独自に開発したと言い張るAL31のコピーであるWS15は、オリジナルに比べて最高出力において劣るようだ。もちろん、軍事機密であるため詳細は公表されていない。

しかし、WS15を搭載したシナの最新鋭ステルス戦闘機殲20(欧米からはJ20と呼ばれている)は、やはり設計通りの性能は出せず、現時点では張子の虎としかいいようがないらしい。

これはシナ初の空母遼寧に搭載予定だったJ15も同様で、エンジン出力がどうしても設計通りに出せないため、ミサイルや爆弾を搭載できない艦載機となっているようだ。

弾道ミサイルなどはコピー出来たようだが、単に燃料を燃焼させるのではなく、出力を制御しなくてはいけないジェット機用のエンジンには、高度な冶金技術が必要となる。形だけなら3Dプリンターでコピーできても、金属加工は高温度と高圧力に耐えうるよう特殊な技術が必要となる。

他人事ではない。我が日本は世界屈指の技術大国ではあるが、冶金に関しては第一級とは言いかねる。政治上の制約もあるだろうが、戦前からこの分野は欧米に遅れがちであった。

今日でも戦場での酷使に耐えうる機関銃は、国産のものでは作れないでいる。ましてジェット機用のエンジンともなると、欧米のメーカーから輸入しているのが実情である。

まして、欧米から正式な技術導入ができないだけでなく、ロシアからも警戒されているシナには、高度な冶金技術は未だ確立されていないのが本当のところではないかと思う。

現在、シナの軍事的脅威を記述したものを数多く見かけるが、私はいささか懐疑的だ。もちろん、既に完成している弾道ミサイルや核兵器を軽視するつもりはない。しかし、基本的にシナの軍事力はアメリカはもちろん、ロシアと比べても劣ると思う。

それにも関わらず、声だかにシナの軍事的脅威は語られるのだが、私はこれを欧米の軍事産業の営業的なものだと考えている。敵がいてこそ武器は売れる。敵の存在が必要不可欠であるのが軍事産業である。

おそらく彼らはシナが張り子の虎であることを知っている。現時点では、いや当面外国へ軍事的侵略をするだけの力がないと判断している。だからこそシナは軍事的脅威でなければならない。

もっとも、これはシナに軍事的野心がないことを意味している訳ではない。欧米以外の国に対してなら、シナの軍事力は脅威であることは間違いない。ただ、その場合の優先順序は、まず第一が台湾の奪還であり、次が朝鮮半島であろうと思う。

敵を警戒し、恐れることは必要だが、必要以上に騒ぎ立てるのは如何なものかと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする