ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

民族回帰

2017-11-01 12:28:00 | 社会・政治・一般

遂に始まってしまった。

近代という幻想が崩れ、マルクス主義への信仰が崩壊し、資本主義が必ずしも幸せを運んでこないことが分かった以上、人々が宗教と民族に自己のアイディンティイを求めることは、既に多くの識者により指摘されてきたことだ。

イギリスのEU離脱は、少し違うのだが、今回のカタロニアの独立騒動は、まさに民族回帰の顕れそのものだ。

イベリア半島はスペインとポルトガルの二か国があるが、広大なスペインの地にあって、自分たちはスペイン人ではないと自覚する人々がいた。それが今回の騒動の主役であるカタロニア(カタルーニャ)の人々である。

カタロニアがスペインに支配されたのは14世紀から15世紀の頃であり、その後何度か大規模な反乱を起こしたり、フランスなどの侵略に曝されたりと、苦難の歴史を辿ってきている。

カタロニアの地に自治の機運が湧いてきたのは、独裁政治を貫いたスペインのフランコの政権の強権から解放された1975年の民主化以降である。ようやく自治州としての身分を手に入れられた。

カタロニアの民の不満は、税収の配分問題と密に関連している。州都バルセロナはサッカーで世界的に有名なバルセロナFCの本拠地であるばかりでなく、スペインでも屈指の経済規模を誇る。当然にそこから上がる税収は巨額であり、スペイン政府にとっては欠かせない財源である。

広大なスペインの地には、貧しい州も少なくないため、税金は貧しい州に優先的に配分される。そのため、カタロニアには税(国家予算)の配分が適切ではないとの不満が根強かった。

この不満だけではないが、歴史的な経緯もあり、今回の独立を問う住民投票において、圧倒的な独立支持派の勝利となってしまった。

もちろん、スペイン政府はこの独立を認める気は毛ほどもなく、自治権はく奪を言いだす始末。他のEU諸国も、大なり小なり国内に小さなカタロニア問題を抱えているため、ここは断固としてスペイン政府を支持せざるを得ない。

いや、EUだけではない。カナダのケベック問題、ミャンマーとロヒンギャ、イラクとクルドなど、近代になって力ずくで国境の線引きをされたことで、不自然な国づくりがされてきたことの弊害が、今世紀に入り露呈している。

この問題では、国連はまったく役に立たない。国連なんざ、所詮第二次世界大戦の戦勝国の既得権堅持のための存在であり、国家の分裂を起こす民族問題には、その成り立ちを考えれば手が出せる訳がない。

近代の幻想が崩れてたからこそ発生した問題である以上、人権思想も民主主義も、この民族意識の高揚による国家分断の危機には無力である。

21世紀は、水と食料と石油を巡る争いの世紀になるはずだが、民族と宗教が国家と対立する世紀でもある。現状、我々はこの問題に対する処方箋を持ち合わせていない。

私は話し合いによる紛争解決を重要な手段だと考えるが、絶対的な解決方法だとは考えていない。「残念ながら・・・」という偽善的ポーズを敢えて排除して云わせてもらうが、21世紀においては適切な軍事力を保持することは、平和な暮らしを望むなら避けられぬ手法だと断言させてもらいます。

双方が自分が正しいと確信している場合、必要なのは妥協ではなく、相手の武力に負けない程度の武力。適切な武力がなければ、後は蹂躙されるだけ。国家の後ろ盾を持たない民族が、どれほど悲惨で残酷な衰退を迎えるのかをしっかりと認識して頂きたいものです。

コメント (3)
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