ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

理詰めの怖さ

2017-11-09 16:37:00 | スポーツ

先の衆議院選挙で、最も恩恵を受けたのはボクシング中継番組ではないかと思う。

あの日、台風接近中の日本列島は、激しい風雨にさらされて日曜日であるにもかかわらず、行楽には向かない天気であった。しかも、衆議院選挙があったため、夜のTVは軒並み選挙特番ばかりであった。

そんな中、選挙以外の番組であったのが、村田の試合中継であった。だから、日ごろボクシングを観ない人でも、案外と観たんじゃないかと思う。だって、選挙特番って退屈だもの。

もっとも私はボクシングは嫌いではないが、村田選手の試合はあまり好きではない。優秀なアマチュアボクサーであっただけに、その試合の組み立ては理詰めであり、ポイントを稼ぐ戦い方は、素人目には面白くない。

別に誹謗している訳ではない。私の好みが、何をするか分からないような本能で戦うファイター型のボクサーを好むだけ。村田選手のその戦い方は尊重はしているが、観ていて楽しいとは思わないだけだ。

実のところ、ロンドン五輪での試合以外はまともに観たことがない。彼の戦績の大半を占めるアマの試合は、ユーチューブなどにアップされている試合を少し見た程度に過ぎない。

だから、あの台風襲来の日曜日の夜、ロンドン五輪以来、久々に村田選手の試合をTVで観ることが出来た。

いや~、えげつない。相手選手の心を折るような試合でしたね。前回の判定負け試合に比して、打ち合いは確かに増えたけど、有効打は決して受けず、自分の距離で冷静に追い詰める。

正直、日本人ボクサーでも珍しいタイプではないかと思います。村田選手は十代前半、いわゆるヤンチャというよりも不良でしたが、特段ボクシングに熱中した訳でもなく、多くの不良少年が辿る十代でのプロ・デビューもしていません。

あくまでアマチュア・ボクサーであり、しかも強豪ではあっても無敵ではなく、けっこう負けている。でもノックダウンによる敗北はほとんどなく、ポイント負けが多い。

しかも、村田選手は何度も現役引退をしている。特に北京五輪の代表に選ばれなかった時は、完全に引退路線であり、指導者への道を辿ると思われたほど。ただ、いろいろあったようで、現役に復帰してロンドン五輪で金メダル獲得。

年齢的なこともあり、かなり迷ったようですが、ようやくプロ入りを果たした変わり種。本人はアマチュアであることに、相当な矜持を持っていたようで、そのためか紆余曲折の多いボクサー人生を送った経歴の持ち主。

そのせいだと思うのですが、普通のプロボクサーとはいささか毛色が違うというか、なにがなんでもKO勝ちしてやろうなんて、獣じみた意気込みは感じられないクールな試合ぶりに思える。

ポイントを重視するアマ・ボクシング出身であり、身体特に脳へのダメージを嫌がるガードの堅さと相まって、非常に理詰めでボクシングをしている印象があるのです。

だからでしょうけど、相手の攻撃は受け流し、決して致命打は受けない。あくまで自分の距離で、的確な打撃を淡々と打ち込む姿には、ある種の怖さを感じます。対戦相手のチャンピオンも対策を練り、激しく攻撃してきましたが、自分の攻撃が相手に効かず、村田の攻撃が着々とャCントを重ねることに苛立ち、最後は心が折れてしまったのだと感じました。

はっきり言って、観ていて楽しい試合ではない。しかし、この冷静沈着で、理にかなった戦い方は敬意を払うに値するものだと思いました。

このタイプのボクサーは、旧ソ連や東欧にはけっこう居たように思いますが、日本では珍しいです。年齢的な体力の衰えが出るまでは、けっこう勝ち進む気がします。

今後は今少し、関心をもっていこうと思った、台風一過の夜でした。

コメント
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