ようやく始まったのがメガバンクのリストラだ。
一応云っておくと、リストラ=解雇ではない。リストラの本来の意味は再構築である。しかしながら、新聞等の報道では、メガバンクは一万人を超える人員削減を計画しているという。
これでは人員削減による経営立て直しと思われても仕方あるまい。
だが、実態は少し違うと思う。今、メガバンクに求められている役割が大きく変わってきている。その役割に対応できる組織にするためのリストラである。ある意味、当然というか遅すぎる対応でもある。
実のところ、数年前から銀行は店舗の統廃合を積極的に進めており、過去のビジネス・スタイルからの脱却を志向していたことは周知の事実である。市場の状況を見計らいながら、大規模な人員削減を予定していたのが実態であろう。
まぁ、この辺りは金融専門誌などで識者の書いたものを読んでいただければ十分だと思う。
ところで私は意地が悪い。捻くれた見方をするのが得意であり、邪推、妄想なんでもござれである。そのことを前置きして、軽く読み流して欲しい。
銀行という業種は、他の業種にも増して信用を第一にしている。不正はもちろん、悪い噂が流れることさえ極端に嫌がる。
だが、銀行の本業は金貸し(今は違うが)である。古今東西、金貸し業者の手が綺麗であった試しはない。これはお金という欲望の塊のような商品を扱う以上、必然である。古来よりお金ほど、人々の欲望を掻き立てるものは滅多にない。
シェークスピアの創作した金貸業者シャイロックは、世界中どこにでもいる。だからこそ、銀行員には高い倫理観を求められ、一円たりとも誤魔化しを許さない厳密な経営が求められた。
しかし、いくら銀行が清廉潔白でありたいと切望しても、世間がそれを許さない。政治家、ヤクザ、宗教家など魑魅魍魎に飲み込まれ、気が付いたら不正融資に関わっていた銀行員は数知れずであった。
それは高度成長からバブル崩壊までがピークであったと思われる。この時期に、汚い仕事に手を染めた銀行員は少なくない。それ以上に、それを知りつつ見逃した銀行員は数多いる。
銀行経営者にとって、彼らを安易にリストラすることは出来ない。不満を抱いて退職した元・行員たちには断固として守秘義務を堅持してもらわねば困る。だからこそ、リストラを遅らさざるを得なかった。
彼らに満額の退職金を支給し、再就職先まで世話して、不満を抱かせず、むしろ元・銀行員としての誇りを抱かせて退職させることが必要だった。そして、日本の高度成長とバブル崩壊の時期を知る中堅銀行員たちが、ようやく退職し、後に残るは学業成績優秀、されど汚い仕事には手を染めていない清廉潔白な銀行員たちである。
ここに至り、ようやくリストラを決行することが出来た。幸い、株価は高く、大量の退職者を出しても、銀行の財務は揺るがない。リストラの対象となる行員は、そもそも新しい時代のビジネスモデルに馴染まない人材中心である。
正義は我にあり、そう銀行経営者が考えたとしても不思議ではないと思う。
・・・で、ここからは、私の本音。
頼むから、地銀さんや信金さんは、メガバンクの真似をしないで欲しい。日本経済を底から支える中小・零細企業には、今も銀行の支援が必要なんですよ。彼らを忘れないでね。