噛み締めるほどに、口の中で肉汁が迸るのが分る。
これを快感と言わずして、なんと呼ぼうか。十分に熟成された肉だからこそ味わえるものだ。正直言って、繊細さとか、上品さとはいささか遠い。
むしろジャンクフード的な大雑把さと評しても、そう間違いではない。でも、この巨大な肉の塊をナイフで切り裂いて、口に放り込んで噛み締める愉悦は否定しがたい。
こは東京の五反田、JRの駅の東口から国道一号(桜田通り)を10分ほど登った坂の上にあるステーキ・ハウス。歩くのが嫌な人は、地下鉄の高輪台から徒歩3分でもいい。
でも、私は敢えて坂を登って店に行く。腹をすかせて、その店に飛び込む。7坪ほどのカウンターだけの小さな店には、プロレスラーの写真で一杯だ。
アメリカから来たプロレスラーたちが、日本に来れば必ず立ち寄るといわれるのが、この小さなステーキハウス・リベラだ。あの巨体で、狭いカウンター席に潜り込み、注文するのは1ポンド(450g)ステーキだ。ちなみに3300円だぞ。
初めて見た人が、必ず驚き、躊躇うほどの巨大な肉の塊だ。十分に熟成されたオーストラリア産の肉に、ニンニクや胡椒をすり込ませて、強い火力で一気に焼き上げて、客の前に出される。
この巨大なステーキに怖気づいてはいけない。勢いで一気に食べねばならぬ。特製ダレをかけて食べる常連もいるが、私はなにもつけず、そのまま喰らい付く。
すると、あら不思議。気がついた時には皿は空っぽ。1ポンド(450g)のステーキは、あっというまに胃袋に消えている。俺もまだまだ若いと粋がりたくなるぞ。
なお、下の写真のステーキは、既に二口食べた後です。つまりもう少し大きいのです。最初に写真を撮るつもりでしたが、我慢しきれなかったもので・・・
私は松坂牛に代表される和牛を否定する気はない。箸で切れるほどの柔らかい肉質、甘みを感じるほど繊細な味、まさに件pと賞したくなるほどの和牛のステーキの美味しさは別格だと思う。(値段も別格だけどさ)
だけど、欧米の熟成された肉汁豊富なステーキだって美味しいと思う。ナイフで切り分け、しっかりと噛み締めねば味わえない固さだが、噛むたびに迸る肉汁の芳醇な味こそが、肉本来の味わいだと思うからだ。
このリベラに初めて行ったのは、まだ20代の頃。当時、高輪にあるBMWのショールームの夜勤の警備員をしていた時だった。プロレス・ファンには憧れの店であった。夜勤前に食べるステーキは、当時最高の贅沢だった。
あれから20数年、今も変わらぬ味で、あの巨大なステーキが食べられることは幸せだと思うな。
満腹、満腹~♪