のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『オットー・ディックスの版画』展1

2010-12-12 | 展覧会
師走も半ばに差し掛かってまいりました。
皆様お疲れさまでございます。

さておき
伊丹市立美術館で開催中の直視せよ!オットー・ディックスの版画 戦争と狂乱 1920年代のドイツへ行ってまいりました。

オットー・ディックスといえばクリスタルキングでございます。
いやさ大都会でございます。

ディックスの銅版画を集めた本展は、『大都会』のように娼婦や傷痍軍人をモチーフに据え、都市生活の頽廃と闇を通して人間の美しからざる側面を描き出した作品群と、第一次世界大戦での従軍経験をもとに描かれた連作「戦争」の二部構成となっております。

会場に足を踏み入れますと、さっそくディックスの代表作のひとつマッチ売りの銅版画バージョンが展示されておりました。



両手足、そしておそらくは視力も失った、カイゼル髭ばかりが変に立派な傷痍軍人が、道ばたに座り込んでマッチを売っております。
犬には電柱の代わりにされ、人々は彼を見向きもしせず、その場を足早に立ち去るばかり。
戯画的に表現されてはおりますが、まことに悲惨な光景でございます。それを「誰もが目を背ける」という現実をも含めて、ディックスは描き出します。その眼差しは厳しく、仮借なく、時には嗜虐的ですらあります。

物事には一切のコメントは不要だ。 私にとっては、その物と向き合うことの方が、それについて語るよりよほど重要だ。
と語った画家は、人々があえて向き合わず、ましてや好んで語ろうともしない現実を正面から見据え、作品として画布や版や紙の上に刻み付けました。逆に言えば、人々が目を背けているからこそ、醜くあること、悲惨であることといった現実の負の一面を、ことさら直視せずにはいられなかったのでございましょう。
老いた娼婦の皺のよった首や、あばらの浮き出た胸元、垂れた乳房を。
傲慢と好色の表情をたたえた若い水夫を。老いて盲いた物乞いを。
また、仲間の死体をバリケード代わりにして銃を構える兵士を。


次回に続きます。


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