読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『カミュなんて知らない』

2006年04月24日 | 映画
柳町光雄監督『カミュなんて知らない』(2005年)

上映開始時間がおなじだったもんで、ジョニー・デップの『リヴァティー』にするかこの映画にするかでちょっと迷ったのだが、カミュに惹かれてこちらを観ることにした。むかしというか学生時代にカミュの『異邦人』がお気に入りだったから、それのからみがあるのかなと思っていたが、セリフのなかにちょっとでてくるだけで、とりたてて関係はないようだ。

この映画の主題というかモチーフというかキーワードは、「○○は悪いことだけど、やってみたらどうなるか試してみたかった」ということになるのかと思う(こういうのはキーワードとは言わないのだろうけど)。恋人でもない男とキスするのはいけないことだけど、やってみたらどうなるのか試してみたかったと前田愛は登山から帰ってきた玉山鉄二に泣きながら言う。監督役の柏原を屋上から突き落とした、彼の恋人役の吉川ひなのは、もし彼を屋上から突き落としたらどうなるのか試してみたかった」とふらふらになって言ったらし。そして人を殺すのはいけないことなのだけど、もし殺したらどうなるのか試してみたかったと池田役の中泉は言う。

このセリフはまさに現代科学の声でもある。原爆はわることだけど、もし原爆を落としたらどうなるか試してみたかった、遺伝子操作は人倫にもとることだけど、もしやったらどういうことになるか試してみたかった、クローンを作ることはいけないことだけど、もし人間のクローンを作ってみたらどうなるか試してみたかった、こうして、科学者の欲望は限界というものを知らないところへと突き進んでいくのだろう。そして知らないあいだに後戻りができない(ちょうど原爆開発のように)ところにまで行き着いてしまうのかもしれない。

そういう子どものような大学生たち=科学者たちを制御できない、というか、制御しようともしない指導教授の中条教授役を本田博太郎がみごとに演じている。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「最悪」 | トップ | 「クラインの壺」 »
最新の画像もっと見る

映画」カテゴリの最新記事