読書な日々

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『「大発見」の思考法』

2011年03月19日 | 自然科学系
山中・益川『「大発見」の思考法』(文春新書、2011年)

「大発見」の思考法 (文春新書)
山中 伸弥,益川 敏英
文藝春秋

益川敏英は1940年生まれの70歳、山中伸弥は1962年生まれの48歳。この22歳という年齢差が対談の中身にでたかなと思いながら読んだが、じつは年齢差ではなくて、研究分野の違いなのかもしれないと読み終えてから思った。仮説を立てて、検証していくという科学に必須の過程も、実証科学と理論科学では違うからだ。

仮説を立ててという部分が実証科学では主ではなくて、検証していくということが主になるようだ。だからといって、実験を積み重ねてすぐに検証される仮説はかなり割合が低いとこの対談でも言っているように、そんな簡単なものではない。

しかし、実証科学では、仮説と違った実験の結果のなかに、新しい仮説の芽や驚異的な発見の芽がある。今回のips細胞の発見だってそうだし、田中耕一さんがノーベル賞を受賞した発見だってそうだった。しかし、考えるということでは、理論科学はまた別の世界のようだ。そういう意味でものを考えるという面での鍛え方が二人の間に年齢差によるのかなと思わせるような違いを生じさせていたように思う。

益川は70歳という年齢ということもあるのだろうが、すべてのことについて、物事を筋道立ててなんらかの結論を出しており、そういう視点から発言をするので、じつに直裁的である。

山中伸弥がアメリカ留学から帰ってきてからうつ病になって一時は研究者をやめようと決心していてくらいひどかったという話は、興味深かったが、それ以上に益川も風邪ひきのようにうつ病になると言っているのは面白い。彼は経験上それの兆しが生じたときの対処法を持っているというから、これまた面白い。

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