読書な日々

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キューバ人の不思議

2007年09月08日 | 日々の雑感
キューバ人の不思議

キューバといえば世界中のほとんどで社会主義が崩壊し、かつ社会主義を名乗っている国でもとても社会主義などとは言えないような実態になっている(中国がそう)状況にあって、ちょっと変わった社会主義を維持している国である。アメリカのすぐ近くにあって、アメリカの影響もかなり大きいと思うのだが、経済的には貧しく、国民の不満も相当に大きいのではないかと思うのだが、それでも決してカストロによる独裁というわけでもないようで、社会主義を維持しているのが興味深い。

今日の朝日新聞の土曜版というやつに面白い記事がのっていた。編集委員の山田厚史という人が、いま話題になっているM.ムーア監督の「シッコ」という映画や吉田太郎の「世界がキューバ医療を手本にするわけ」という本にも言及しながら、キューバの医療の優れたところを紹介している。キューバの国民所得はインド並みに低いのに、下町から山村まで地区ごとに担当医がいて予防医療が徹底しているうえに、しかもがん治療から心臓移植まで医療費はタダで最新医療技術の点でも先進国なみの医療技術を備えているというのだ。

そして問題になるのは医者の人格だろう。その気になればアメリカに渡って高収入を得ることも出来るのに、貧しい国に踏みとどまって地域医療にがんばっているのはなぜだろうと山田さんは締めくくっているが、キューバといえばラテンの国。ラテンの国といえば自由奔放で快楽に生きる人たちというのが私たちのもっているイメージだ。毎日面白おかしく過ごせればいいじゃないかなんて人々ばかりというのは、私たちの作った勝手なイメージなのだろうか?

これもずいぶん前の朝日新聞で読んだ記憶があるのだが、キューバは医師派遣の先進国でもあって、開発途上国にたくさんの医師を派遣していることでも有名で、もちろんそうした人道的な支援によって国連の中でもキューバの地位は高いのだという。医師は1年とか2年とかという期間家族を離れて過ごすわけだが、ラテン系の恋愛を大事にする人たちが、国家の政策のために1年も2年も離れて過ごすことに耐えているという事実が、また上に書いたようなキューバ人のイメージをかけ離れていて、私の浅はかな先入観を揺さぶりをかけてくる。

しかし一方で国民所得がインド並みに貧しいという事態はやはり「社会主義だから」なのか、それとも「社会主義にもかかわらず」なのかということから考えて見なければならない問題だ。ソ連だってかつて医療費はタダだと社会主義の優位性を宣伝するのに使っていた。その一方で自由が抑圧され人権がないがしろにされ、労働者の勤労意欲が低下しているのだとしたら、市場経済の問題とあわせて、やはりキューバでもこの問題は解決されていないのだなということが分かる。はたして社会主義はみな平等だけれども貧しいもの、なのだろうか。



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