東野圭吾『放課後』(講談社、1985年)
東野圭吾が第31回江戸川乱歩賞を受賞したときの、デビュー作。
デビュー作というのは、やはり書きなれていないがゆえの、未熟なところもあるだろうが、それ以上に全精力を傾けて書いたという全力疾走感があるのでいい。
はっきり言って推理小説としての面白み、つまり密室犯罪のトリックを解くという意味での面白みはこの小説にはないし、そもそも小説の最後の最後になってやっとそういうこと(動機も含めて)が問題になってくるので、そんなことはもうどうでもいいような気になってくる。私は最後まで犯人がだれか分からなかった。それでいいのだと思う。
それ以上に、主人公である数学教師の前島やその同僚たち、そして精華女子高校の生徒たちの描写や話の展開に無理がなくて素直に書いてあるのが好感をもった。
手の込んだ事件の背景やトリックが好きな人には、くだらないと思われるかもしれないが、「Xの悲劇」や「Yの悲劇」のような世界的に有名な推理小説というものは、中学生が読んだって理解でき夢中になってしまうのだから、一見手が込んでいるように見えて、やはり物事は単純なのだ。笠井潔の「バイバイ・エンジェル」だの「サマー・アポカリプス」だののように、途中で先を読む意欲がうせるようなものは、どんなに作者の博識がそこにちりばめられているのか知らないが、くだらないと判断せざるを得ない。
東野圭吾が第31回江戸川乱歩賞を受賞したときの、デビュー作。
デビュー作というのは、やはり書きなれていないがゆえの、未熟なところもあるだろうが、それ以上に全精力を傾けて書いたという全力疾走感があるのでいい。
はっきり言って推理小説としての面白み、つまり密室犯罪のトリックを解くという意味での面白みはこの小説にはないし、そもそも小説の最後の最後になってやっとそういうこと(動機も含めて)が問題になってくるので、そんなことはもうどうでもいいような気になってくる。私は最後まで犯人がだれか分からなかった。それでいいのだと思う。
それ以上に、主人公である数学教師の前島やその同僚たち、そして精華女子高校の生徒たちの描写や話の展開に無理がなくて素直に書いてあるのが好感をもった。
手の込んだ事件の背景やトリックが好きな人には、くだらないと思われるかもしれないが、「Xの悲劇」や「Yの悲劇」のような世界的に有名な推理小説というものは、中学生が読んだって理解でき夢中になってしまうのだから、一見手が込んでいるように見えて、やはり物事は単純なのだ。笠井潔の「バイバイ・エンジェル」だの「サマー・アポカリプス」だののように、途中で先を読む意欲がうせるようなものは、どんなに作者の博識がそこにちりばめられているのか知らないが、くだらないと判断せざるを得ない。