読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「ドミノ」

2007年09月14日 | 作家ア行
恩田陸『ドミノ』(角川書店、2001年)

じつに面白い小説だった。一気に読んだ。後には何も残らない。奥田英朗の「サウスバウンド」(今度映画化されるらしい)や重松潔「いとしのヒナゴン」(これは映画化されたらしいが見ていない)のようなエンターテインメントでありながら人生を考えさせるという両方を両立させた小説らしい小説というのは、やはりそんなにたくさんあるものではない。面白くて一気に読ませただけでもたいしたものだ。

人物が生き生きしているのがいい。生きがいいというのだろうか。関東生命八重洲支社の女性の事務職員たち、北条和美、田上優子、加藤えり子たちを見ていると、この社会は女で回っているという感慨をもつのもあながち間違いではない。肝が据わっているというか、ここぞというときには、かつては暴走族だったなんてことにこだわるような和美ではない。

国の将来について厚生年金について恋人の正博と何時間も話し合ったという浅田佳代子もいい。正博の別れ話に付き合わされる落合美江も正博ともども世紀の美男美女といわれるくらいに美人なのに、外見と中身の乖離に悩んでいるところがいい。

なんてたって元暴走族の市橋健児が800CC(?)もあるバイクで額賀を運ぶ途中でパトカーとチェイスをやるところや加藤えり子とのやり取りがなんともいえずいいのはなぜだろうか?普通なら社会の嫌われ者である暴走族だ。えり子といい、彼女をひたすら慕う健児といい、一本筋の通ったところがあるのが、アウトローの本領発揮というところを描いているせいだろうか。

俺の爆弾はアートだと言う川添もいい(爆弾テロをいいと言うつもりはありませんので誤解のないように)。

結局、この小説はいいもんも悪いもんもみんないいもんばかりで、普通なら面白くないところだが、なぜかしら面白い。きっと映画のプロデューサならこれを映画化したいと思うことだろう。きっと「踊る大捜査線」みたいな映画ができるに違いない。


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