『アンガーマネジメントで読み解く なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』 ③(2022/1/7・安藤俊介著)の続きです。 以下転載。
③ネガティブ思考
人には、ネガティブティーバイアス(ネガティブ偏向)という性質があります。 これはポジティブな情報よりもネガティブな情報に反応しやすい、学習しやすいというものです。 人が生物として進化する中で、身につけてきたものと考えられています。
動物はりんごを取ることよりも、蛇から逃げることを優先したほうが生存確率は高くなります。 目の前のりんごが取れなくても、すぐに餓死することはありませんが、目の前にいる蛇から逃げなければ、ただちに命の危険にさらされるからです。
そのため、人はネガティブなことのほうが意識を向けやすい、学習しやすいとされています。 言い方を変えると、これは快楽を求めることよりも、苦痛から逃げるほうが学習しやすいということです。
自己肯定感の低い人は、物事をネガティブな方向に捉えがちです。
それまで、うまくいったことも星の敖ほどあるはずなのですが、そちらには意識が向きません。 自己効力感の低さがそうさせるのですが、「自分なんかがうまくいくわけがない、どうせ今度もまた失敗するに決まっている」と心の底で思っています。
④劣等感が強い
劣等感の強い人は、とかく人と比べる癖があります。 子どものころから誰かと比較することで、自分の現在地を確認してきています。
劣等感の強い人は、人から攻撃されることを極端に怖がります。
たとえば、同僚が何か意見をしたとします。 同僚にしてみれば、別に攻撃をしたつもりはなく、ただ意見を言っただけなのですが、劣等感の強い人にとっては、とくにそこに強く劣等感を感じるポイントであれば、攻撃を受けたと感じ取ります。 自分の大切なものが攻撃されたとなれば、怒りをもって防衛しようと動きます。
劣等感の強い人は、劣等感ポイントを触られたくないので、触られまいとピリピリします。 誰も攻撃をしていないのに、いつでも臨戦態勢に入っているのです。 また、劣等感を埋めるために、いろいろなステータスを身につけようとします。
たとえば、学歴コンプレックスがあり、そのコンプレックスを埋めるために何か資格を取るといったことです。 その資格に向けた努力が、自分や他人の人生をよりよくしたいという建設的なものであればいいのですが、ただ劣等感を埋めたいから、資格を取って人を見下したいからといった理由であれば、それはなんとも残念な努力です。
劣等感の強い人は、とてもプライドが高いです。 劣等感が強いから、謙遜したり、謙虚になったりするのではないかと思われるかもしれませんが、それは逆です。 劣等感が強いからこそ、プライドが高くなるのです。
なぜなら、小さなことでもプライドが傷ついたら、自分の価値がとても下がると思っているからです。 劣等感の強くない人であれば、プライドが傷つくことを恐れません。 それくらいのことで、自分の仙値がドがるとは思ってもいないからです。
そのため、劣等感の強い人は、自分のプライドを傷つけるようなあらゆることんび敏感になり、過剰防衛とも言えるくらいの反応で怒ります。
⑤渇望感が強い
渇望感が強いとは、どれだけのことをしても、されても満足をしないことです。
「足るを知る者は富む」とは、老子の道徳経が由来のことわざです。 「満足を知る人はたとえ貧しくても、精神は豊かで幸福である」という意味です。 このことわざに照らしわせれば、渇望感が強い人は心が貧しい人と言えそうです。
自己肯定感の低い人は、自分に足りないものが多いと感じています。 そのため、いろいろなものでそれを埋めようとします。
満足していること、うまくいっていることよりも、満たされていないこと、うまくいっていないことに目が向きがちです。
コップに水が半分入っている状態を、半分も入っていると思うのか、半分しか入っていないと思うのかで言えば後者です。 減点主義で物事をとらえます。
渇望感の強い人は、よく言えば上昇志向の強い人とも言えますが、自己肯定感の低さからくる渇望感であれば、それは一生満たされることはありません。
自己肯定感が低ければ、どんなに天が羨むようなものを手にしたとしても、自分でその価値を認めることができません。 人から価値があると言われたとしても、本人はピンとこないのです。