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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

犬として育てられた少年

2015年05月01日 | 苦しみは成長のとびら
昨日(27.5.30)の『産経新聞』産経抄に『犬として育てられた少年』が紹介されていました。まずは「産経抄」です。

 米国の児童精神科医ブルース・ペリーさんが病院で出会った6歳の少年は、オムツをあてられ、金切り声を上げていた。あらゆる処置をいやがり、排泄(はいせつ)物や食事をスタッフに投げつけていた。
 ▼少年の母親は出産後まもなくこの世を去り、少年を引き取った祖母も約1年後に亡くなった。犬のブリーダーだった祖母の同棲(どうせい)相手は、少年をケージの中に入れ、犬と同じように育てたというのだ。歩くことも言葉を発することもできなかった少年は、ペリーさんの適切な治療によって、劇的な回復を遂げる(『犬として育てられた少年』紀伊国屋書店)。
 ▼少年は8歳になると、幼稚園に入園できるまでになった。東京都足立区で約2年前から行方不明になっている皆川玲空斗(りくと)君には、その日が訪れることはなかった。平成24年12月から3カ月もの間、当時3歳だった玲空斗君は、ウサギ用のケージに閉じ込められていた。食事は、2、3日に1度しか与えられなかった。
 ▼両親の忍容疑者(31)と朋美容疑者(28)は、その後玲空斗君の口にタオルを巻き、窒息死させたことを認めている。遺体は、荒川に捨てたという。児童相談所の職員が自宅を訪ねた際は、マネキンを使って、生きているように偽装していた。死亡を隠すことで、児童手当や生活保護費をだまし取っていた。(以下省略)

記事を読んで、さっそく図書館に本をリクエスト、だれもまだリクエストしていなくと、すぐ一番で入手できました。

この本は、虐待による深刻なトラウマを負った子供の臨床ケアを綴った記録で、「犬として育てられた少年」は、6章にある話です。

15歳の時、この少年を産んだ母親は、少年が生後2ヶ月の時に死んでしまう。この子を引き取った祖母も、生後11ヶ月の時に逝去。その後、祖母の恋人がこの子を引き取るが、その男性は60歳代後半で、少し知能に問題もあり、悲しみにくれるばかりで、子どもを育てる知識も気力もなく、犬のブリーダーを仕事にしていたので、犬の檻の中に子どもを入れて育てる。

この少年、ジャスティンは6歳の時、小児集中治療室に入っていた。痩せこけて大きなオムツをあてられて大きなベビーベットに入れられていた。ジャスティンはどんな処置も嫌がって、触られることを拒んで金切り声をあげ、スタッフに食べ物を投げつけた。脳のスキャンを見ると、大脳皮質に委縮があって、脳の中心部の脳室が大きくなっていて、ちょうどアルツハイマー病の進行した人の脳のようであったという。

幼少期にネグレクトを受けた人に共通することは、人に触られることに耐えられないという。生まれたばかりの赤ん坊にとって、触られることは、最初はストレスだという。まだすぐには喜びを感じないのだ。触れられる経験を何時間も重ねることによって、なじみ深いものになり、安心して心地よいと感じるようになるためには、そばに愛情深い養育者がいなければならない。愛情深いスキンシップがなかったら対人接触と喜びとの間につながりが生まれないのだということは、とてもショッキングなことである。逆に言うならば、スキンシップが脳の発達をうながすという。

6か月後、ジャスティンは、病院から遠い里親のもとに移された。ジャスティンが退院してから約2年後、とある小さな町から、病院に手紙が届いた。ジャスティンは、幼稚園に入園できるまでになっていた。同封されていた写真には、よそゆきの服を着て、弁当箱を持ち、リュックサックを背負って、スクールバスの脇に立っている彼が写っていた。写真の裏にはクレヨンで、ジャスティン自身がこう書いていた。「ペリーせんせい、ありがとう。ジャスティン」私は泣いた。(以上)

幼児期、赤子の触ることが重要な発達要素であることに驚きます。
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