超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

きのこ帝国 1st full album “eureka” release tour「すべてを夜へ」@代官山UNIT 13.5.6

2013-05-07 01:34:34 | ライブレポ

















きのこ帝国のライブに行って来ました。














個人的に「WHITEPOOL」「ミュージシャン」、そして「夜が明けたら」でちょっぴり泣きました
きのこ帝国は90年代オルタナシーンに影響を受けたようなバンドですけど
それ以上に個性的だと思うのはまるで浮浪者を彷彿とさせるような物悲しい声と
神妙な雰囲気、
精神の奥深くを行き来するようなトリップ感だったり
その声や紡ぐ歌詞のどうしようもない苦しみや悲しみの表現、やるせなさだったり
勿論アレンジの面白さが際立ってたりジャンルで括る事も可能なバンドではあるんですけど
やっぱり観てて思ったのは圧倒的な歌の力と聴き手の懐に潜り込むリアリティなんだなあ・・・と実感
そのエネルギーと雰囲気に魅了され続けた2時間でした。はっきり言って、凄かった。

英詞ならともかく日本語ロックでやる以上は何か突き刺さる言葉や強烈な意味合いが欲しいと思っていて
その意味だと音源に入っている楽曲全部演奏してくれたこの日のきのこ帝国のライブは
個人的に突き刺さる言葉ばっかりで
憎しみだったり
何ともいえないわびしさの表現だったり
精神的弱者の心境や劣等感、自分を殺さなければ平穏が保てない現状
音楽で一番励まされるのはそういう心の中の繊細な部分を拾ってくれた時だと感じる私にとっては
あまりにも幸福で、その結果自分の中の汚い気持ちが浄化されたような気分にもなれたライブでした
一時的なごまかしではなく
完璧に脆弱な精神に寄り添ってくれたからこそ
そういう欲求不満がどんどん解消されていったような
そんな一夜でした

私個人の持論としてマイナスをプラスにするにはプラスでなくマイナスをぶつける事が重要、
というのがあるのですがその持論を完全に実践してくれたような素晴らしいライブでしたね。
初のワンマンという事実以上に
単純にライブのクオリティ自体が今まででベストと言える出来でした。
ロックミュージックは見下ろすのではなく見上げてこそ、だと思ってるので
その意味じゃフルボリュームでロックミュージックの素晴らしさを体現出来たような、
そういうワンマンライブにも仕上がっていたと思います。まだまだ凄くなりそうですね、このバンドは。











この日は生憎のお天気雨に降られてまず思いっきり濡れましたが(笑
晴れてるのにザアザア降りというのが何とも微妙な気分にさせられましたけど
UNITに着くと既に大勢のお客さんが並んでました
この日は早々にソールドアウトしたみたいなので
会場も結構なスシ詰め状態、
そんな良い具合の状況の中きのこ帝国初めてのワンマンがスタートしました。


一曲目は「足首」、
これが早速凄まじい迫力と神秘的な雰囲気のぶつかり合いでこちらの感銘を誘ってくれました
同時に今まではnest、LOOKと小さいハコで観てきたから気付かなかったんですが
意外とハコが大きくなっても全然似合うんだなあ、と
ホールすら似合いそうな感じもしました
そんないきなりクライマックスレベルでしのぎ合いを見せ付けた後、
個人的に聴いてみたかった「Girl Meets NUMBER GIRL」。一曲目がオルタナ全開だったからか
この曲では意外と普遍性の高いメロディの気持ち良さに実直に浸れた気がします
情景がしっかりと頭の中で具現化されて伝わって来る感触は
経験が反映されてる印象で非常に良いな、と
この曲の最後のダンサブルになるパートが好きなので生で聴けて素直に嬉しかったです

会場が深淵のダンスホールと化した「夜鷹」では実直に気持ちが良いギターの音色をしっかりと堪能
「殺す事でしか生きられない僕らは」、捕食の事を歌ってるのかなと思ってましたが
「自分を」という意味なのかもなあ、と聴いてて少し感じました
鉄板の気持ち良さを体感出来ましたね。
この曲も多少大きめのハコのが似合うかもしれない、と個人的に思いつつ
だからいつも以上に快感を覚えられたのが正直なところですね。


これが前半一番と言っていいくらいに素晴らしく感じた「畦道で」、
記憶の中の敏感な部分に触られたような感触と
淡々と歌われる「I Hate You」という言葉、
その融合に自分の中で燻っている(た)何とも言えない気持ちが再現されたような気がして
個人的にですが物凄く感情移入してしまいました。 歌声のメリハリもしっかりと機能していて
思ってた以上の手応えを感じる事の出来た一曲、
半永久的に聴きたい位お気に入りでしたね。

音源以上に踊れるアンサンブルが炸裂していた「平行世界」はライブで少し化けた印象
直立不動のテンションでダンサブルな音像という違和感が非常に面白かったです
そして最後のボーカルの掛け合いも聴き応えがあって気持ち良かった。

名曲「退屈しのぎ」で底なしのグルーヴ感を叩き付けると、
新譜が出た後一番ライブで聴きたかった「ユーリカ」、これが大絶品の出来栄えで
音源の良さをそのまま拡大した印象のスケール感に完璧に骨抜きにされました
攻撃的なアンサンブルから
ありったけの希望を込めたサビのアンセム感
その緩急を含めてこの曲が持ってるエネルギーに過不足なく触れられたような・・・
そういう「ユーリカ」がこの日は鳴っていました。 新曲として聴いた時よりもあからさまに良かったです。
生で聴く「明日へ」の連呼は本気で感動しちゃうから困る(笑


ここで一発勢いのある「国道スロープ」で場を盛り上げると、
ここが中盤のハイライトだったと思う「WHITEPOOL」で思わず涙が少しだけ出てしまいました
世の中には仕方ない悲しみだったり、ぶつけても意味のないやるせなさが多数存在していますけど
そういう物悲しい感情、劣等感がこの曲で全部消化されたような感覚があって・・・
ちょっと堪らなかったなあ・・・。
同時に、救われました。少し。

丁寧な歌を紡いで魅せてくれた「The SEA」の味わい深い音像から
ハンドクラップも飛び出した憂いに満ちた「風化する教室」の楽しさに浸る
(憂いに満ちてるのに楽しさも覚えられた「矛盾」が最高に気持ち良かった 笑)、
そこからこれまたライブで聴いたら気持ち良いだろうなあと思ってた「Another Word」
この曲も歌詞の内容は我々のリアルそのものだと思うんですけど
そこに付随する切なさも音色で表現してくれた気がして、
その歌詞とサウンドが両方とも主張し合って一つになってる感覚が見事だなって再確認しました
この曲もまた神秘性に富んでたり記憶の映像を想起させてくれる素敵な一曲でしたね。

「ミュージシャン」は・・・とにかく圧倒的な気合を感じさせてくれました
とってもシビアで日常に根ざした歌詞と、だからこそ思う悔しさを表現したかのような重たいサウンド
ディープに聴き手の感性に絡んで来て離れないそういう揺ぎ無い芯の太さを感じつつ
パッとライトに照らされていきなり明るくなる演出もまた
新鮮で見応えがありましたね
筆舌にはし難い鬼気迫るシリアスさと重たいグルーヴが渦巻いていたナンバーでしたが
その分涙腺もまた刺激されちゃったりして・・・過去の色々な決別を思い出しながら聴いていました。

本編最後は「夜が明けたら」、
初めて聴いた時から大好きになって必ず外さない一曲でもある
この曲は演奏が終わってから時間差で涙腺にキたりして
この日は随分と感動させられた気分
それくらい演奏や表現が冴えていたのかも・・・と思いつつ
最初から最後まで常にストイックに鳴らし続けた恍惚のライブもこれでお仕舞い
過去2回バンドで観たライブ以上の進化を垣間見せてくれて個人的には大満足の一夜でした。
敏感な部分に散々触れてもらって痛みを消化させてくれたありがたい夜でもありました。
改めて、感謝ですね。


アンコールは前回千葉で観たライブと同じく
MCをぶった切って佐藤さんが鳴らし始める流れが最高に興奮した「春と修羅」、
この曲はボコボコと聴き手を殴りつけてくるような衝動と勢いが更に増しているイメージでした
「なんか全部めんどくせえ」のアンセム感は何度聴いても手放しで気持ち良いと思える快感がありますね

「明日にはすべてが終わるとして」、
この曲の「僕たちは―」と二人の声が重なり合う部分がどうしようもないくらいに好きです
それだけで一つのカタルシスになるような感覚があってこの日もまた最高でした
きのこ帝国の曲に勇気なんて言葉は相応しくはないけれど
この曲は唯一そういう言葉が似合ってしまう楽曲だと如実に感じました
確実に日々生き抜くエネルギーを貰った気がしましたね 
また何度でも生で聴きたい一曲です。

ダブルアンコールで披露された「海と花束」は割とキャッチーで、でも歌詞もリアルな印象の曲
また一つ表現が研ぎ澄まされた印象も持ちつつ、素直に格好良かったと思いました
最後の最後は「スクールフィクション」で元気に締め
神々しいオルタナティブロックで幕開けしたこの日のライブは
疾走感に溢れるギターロックのエネルギッシュさで以って終わりを迎えました
「渦になる」「eureka」の全曲に加え自主制作盤から一曲、そして新曲も披露して2時間
そしてそのどれもが完成度高く不満足な曲は一曲もなかった・・・と考えると
個人的には満点レベルの初ワンマンと形容してもいいんじゃないかな、って
そう思えるくらいには満喫出来た内容になってました。
このバンドを好きになって良かったです。











セトリ
1.足首
2.Girl Meets NUMBER GIRL
3.夜鷹
4.畦道で
5.平行世界
6.退屈しのぎ
7.ユーリカ
8.国道スロープ
9.WHITEPOOL
10.The SEA
11.風化する教室
12.Another Word
13.ミュージシャン
14.夜が明けたら
encore
15.春と修羅
16.明日にはすべてが終わるとして
encore2
17.海と花束(新曲)
18.スクールフィクション












きのこ帝国が独特だと思う理由の一つに
言葉に嘘がないというか、非常に普遍的に感じる事柄だけで詞世界が構成されていて
でも単なる日記に思えないのは神秘性のあるアレンジだったりで精神世界も同時に行き来できる
そういう奥深い音像が聴いてて堪らなく気持ち良く救われもするんだな、と
個人的には終始そういう事を思いながら聴いていました。

ライブで聴いて音源よりも数段化けたと思えた「平行世界」に
物悲しくも包まれるような雰囲気が恍惚だった「畦道で」、
音源の威力を正しく増加させた「ユーリカ」の多幸感の心地良さや
涙腺を揺さぶる「WHITEPOOL」の感傷の凄味と「ミュージシャン」の筆舌にし難い情念の深み、
そしてこの日もまた生きるエネルギーを実直に受け取れた「明日にはすべてが終わるとして」の素晴らしさ。
ハイライトばっかのワンマンに仕上がっていてやっぱり最近の若手では群を抜いてるなって
全曲生で聴けた嬉しさも含めて最高の傷跡を残してもらった気がします。
本当に、ありがとう。