このアルバムは1~3枚目と比べると明らかにテンションが違うというか
いつもの元気いっぱいでパワフルなソカバンはここにはいません
むしろナイーブでアンニュイな楽曲が殆ど、というある意味問題作とも形容出来る作品に仕上がっています
でも・・・何故か不思議とここまでで相当にヘビロテしてたりもするんですよね
それは何故かって言えば、ソカバンのアルバムとしてはらしくない作品なんですけど
音楽としては良すぎるくらいに良いからなんです
ワンフレーズをループさせる類の楽曲が多く、そのシンプルな聴き心地は何度でも聴けるタフさと
気軽に聴ける気負いのなさがありますし、伝えたい言葉がシンプルだからこそ逆に突き刺さる情感があって
それに浸っているだけでも十分に気持ち良く楽しいアルバムだと感じます
個人的にはこれも傑作の類に入る作品だと思ってます。
前作は大傑作で個人的にも一押しのアルバムではあったんですが
とても情報量が多く楽曲数も多く、割とガッツリと刺さるアルバムだったと思うんです
そこから考えると逆に情報量を減らして想像の余地を深く掘り下げて
シンプルな楽曲と曲数にまとめたこの作品は
あのアルバムの後に出すにはピッタリのアルバムだったんじゃないかと
そのギャップ・・・というか緩急に個人的には深く面白味を覚えてしまったのが事実ですね
これはこれで純粋にサウンドや歌を他意なく楽しめる伝わりやすさがあってとても好きな一枚かな、と
「ルビィ」とか「ワルツ」に顕著なんですけど
このアルバムに収められている楽曲群はあまり理屈っぽさを感じないというか
良い意味でラフというか、体感的な良さを目的に作られている感じがするんですね
言葉数も少ないし意味合いもそこまで強く提示されているわけじゃない
いつものように歌詞の良さや情景描写で引っ張るのではなく
もっと原始的な方法論で奏でられてるような、
新境地に思えて実はある種のルーツミュージックにも思える作風になっていて
その意味を考えないでも自然にオートマティックに音にノれる楽曲の距離感は
本当にこのアルバムならではの優れたポイントだと思ってます
ここまで言葉数少ないのに、サウンドもシンプルなのに不思議と確かな深みを感じられるのは
きっと曽我部恵一の歌声に説得力があったり短くても印象的なフレーズを作れるセンスだったりと
彼ならではの表現技法だと思えるのも個人的には聴いててプラスなポイントの一つですね
それといつものパワフルなバンドサウンドを封印した分
オルタナティブサウンドや小気味良いクラブサウンドを堪能出来る楽曲群にもなっています
「そして最後にはいつもの夜が来て」の神秘的なアレンジの素晴らしさや
「トーキョー・コーリング」の憂いに満ちた流麗な打ち込みサウンド、
「雪」の情感たっぷりの素朴で温かい音像に
「LOVE STREAMS」の最高に気持ちが良い感傷的なクラブサウンド、
「どうしたの?」では再び美しいアレンジをしっかりと聴かせてくれたりそういった部分も新鮮で楽しい
そうやって一曲一曲の完成度やクオリティがしっかりと高いからこそこの変化も普通に受け入れる事が出来た
ソカバンらしさという先入感を取っ払って純粋に聴く事が出来ればきっと傑作だと思える作品だと思う
ちなみに私はほぼ一聴で大好きになりましたけど、タイミングを逃して今書いてるのでした(笑
曽我部恵一の表現は、というかソカバンの表現はどんどんシリアスで切実になってきている印象です
最早当初のコンセプトに頼らずとも傑作を生める確かなセンスと手応えがあったりして
その意味では進化とも呼べる作品になっているのかなって
「そして最後にはいつもの夜が来て」の弱者の気持ちを汲み取った言葉の数々や
そこからもう一度希望を目指す方向性、
「ワルツ」の群れからはみ出してしまった悲しみだったり
「トーキョー・コーリング」の今はもう離れた人に対しての想いの切なさ・憂い
「LOVE STREAMS」では愛の素晴らしさと共に、それが持ちうる危険性に関しても歌われてるし
「どうしたの?」は日々の疲れや鬱憤に対する処方箋のような楽曲で
より楽曲のテーマ性が沁みる方向性にシフトしてきて
今や完全に聴き手に寄り添うような真摯な音楽として鳴っていると個人的には思う
どちらかといえばスマートさよりも熱さよりも、美しさよりも孤独や哀愁が中心に鳴ってる作品ですが
そういう音楽にシリアスさ、自分の感情を掬ってくれる要素を求めてるのならばきっちりと呼応してくれる
そんな誠実な音楽にこのアルバムは仕上がってるな、とも思うのが個人的な本音ですね。
物悲しくも残るような力も同時に感じる事が出来る豊かなアルバムでした。
全曲好きです。
ライブで聴いた「ルビィ」「ワルツ」の印象が良すぎて、
機会があれば生で聴いて欲しいな、とも思う作品です
ワンフレーズでやり通す楽曲の独自性とセンスはやっぱり凄くて面白いな、って実直に感じますね。