超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

石川龍全曲レビュー~脱退に寄せて

2010-04-11 13:05:38 | 音楽


4月8日付け下北沢GARAGEでのワンマン・ライブをもってランクヘッドから石川龍が脱退しました。


正直、インディーから応援してきたバンドなので
そしてメンバー同士の結束というか、絆感の強いバンドだったので
何よりも石川龍という人間のドラミングやムードメイカー的な性格がとても好きだったので
脱退しても大丈夫だ、なんて言えない部分が大きいのですが
あくまでも夢のために脱退、という事なので
潔く送り出してあげたい気持ちもありつつ。

下北でのラスト公演は都合により行けなかったので、(てか、大体の人がそうだと思う)
それに代わる形で今まで彼が制作に携わってきたナンバーの全曲レビューをしたいと思う。
基本的に小高芳太朗が中心となって曲作りをしているバンドなんですけど
たまに石川龍が作詞をやったり作曲をやったりその両方をやったりする曲もあったりしたんですよね。
という訳で貴重な小高以外のソングライターが抜けるってことにもなりますが・・・。
特に最近は彼の作った楽曲が目立ち始めていたのでね。尚更。




●虹/アルバム「LUNKHEAD」収録
初めての作詞、ですかね。
それ故に非常に初々しい感じで良くも悪くも素人感がよく出ています(笑)。
このアルバムの小高曲の詞を読むと尚更ですね。
「虹」はリフが格好良いので、それにかなり助けてもらっている印象。
リフの良さで歌詞が飾り的なものになっている感じ。 そういうのってランクでは珍しいかもしれない。

ただ、メロディに良く合った語感にはなっているので、そういった意味では良く出来ている詞と言えるかも。


●鼻歌とサイドアウェイ/シングル「すべて」収録
ここら辺から徐々に「らしさ」を表すようになりますね。
というか基本的なクオリティも上がっているような。
タイトルも本人が決めたんだと思いますが、実に印象に残るものになっているかと。
この曲下北ラストでも演ったそうで是非聴きたかった~!

「あとどれだけ歌っていられるかわからない」ってフレーズがお気に入りなんですが、
この詞って当時の龍さん自身にも置き換えられるような気がしてたり。
もちろん、通常の意味合いのが強いとは思いますけどね。
それと「君が思うほど僕は弱くはないけど
    君が願うほど僕は強くはないから」ってフレーズも「虹」と比べてリアリティが増していていいなと。
そしてよく分かります。これは。

ちなみにこの曲、ソロのコーナーがあったりして聴いていると楽しさも伝わってきたり。


●不安と夢/アルバム「FORCE」収録
これも石川龍自身を表しているような?そうでもないか。
でもこれ意外と彼らしさを象徴していて彼の書く詞って小高のよりもストレートで直情的で
前向きな気持ちが籠もってるのが多いんですよね。
もちろんタイトルにもあるようにただ前向きって訳じゃもちろんないけれど。
最近のランクが上手くポジとネガを組み合わせる事が出来てるのは龍さんの影響もあるのかな?とか考えたり。
バンド全体の意向だとは思いますけど。

「今は望むままの世界で歌って」が
「いつか望むままの世界を揺らして」に変わる部分が好きです。
あと全体的に小高のよりも大人っぽいのかな。


●羽根/アルバム「孵化」収録
この曲の詞は先日のつぶやき記事でも使用しましたね。
http://blog.goo.ne.jp/nijigen-complex/e/2842da0b238a3036477527d77e9c22e5
詳しくは上のURLで。
それと同時にこの曲は作曲も手がけています。
作詞作曲としては初めての曲ですね。
ネガティブな気持ちとポジティブな気持ちが混同している今のランクっぽい曲です。
暗い世界を飛べ、っていうサビのフレーズがとても象徴的。

個人的に「こんな風な世界は嫌だよ」って歌われると思わず「う~ん・・・」ってなってしまいます。
龍さんの曲で初めて涙腺を突かれた曲でもありました。


●ペルソナ/アルバム「孵化」収録
これも同アルバム「孵化」から。
これは作曲のみ、という形での参加ですね。
楽曲としては、多分石川龍史上一番重くてヘビーな曲ではないでしょうか。
その雰囲気に合わせるかのように?小高が付けた詞もとてもパンチのあるもの。
「安っぽいゴミは燃やしちゃいな」ってのは小高芳太朗としてもかなり思い切って攻めた詞だと思うんですが
それってこの曲自体の力に引っ張られて書いたのかな、って当時も今も思いました。
 「孵化」ってアルバムは傑作だと思っているんですが
そんな「孵化」でも特に好きな曲だったりします。


●トライデント/アルバム「AT0M」
そんな「孵化」を超える大傑作「AT0M」ではこの曲の作詞作曲を担当してました。
個人的に石川龍最高傑作だと思います。
とにかく詞や曲に込められた想いの熱量が半端ない。そしてそれが直で伝わってくる。
 ランクヘッドにしては珍しく直球の応援歌、っぽい曲なんですけど
そこに込められているものが本気だって事がありありと伝わってくるので
一般的な応援歌には出せない必死さや切実さが籠もってる、それが出来ている曲だと感じています。
ライブで聴くと必ず感情に直に来る曲です。
去年のCCレモンホールの時は思わず泣きそうになった記憶も。
という訳でこの曲は是非定番曲になっていって欲しいですね。
石川龍の遺志を受け継ぐ、という意味でも。

「どうしようもないぜ 悔やんだって」ってシンプルな詞がやたら琴線に触れるのは、
悔やんでばかりの人生を送っているからでしょうか。
もちろん、この詞の本当の重さを理解して全力で歌っている小高の力もあるけれど。確実に。


●WORLD IS MINE/ミニアルバム「V0X」収録
最新作から。
これも作詞作曲なんですが、同時に初めて石川龍楽曲がリードトラックに起用されたってことで
「虹」の時と比べて格段に成長した感がとてもあります。
詞の流れも実にスムーズだし、
日本語を基調としたランクヘッドの詞世界に英単語中心のサビを持ち込むなど実験精神や大胆さもあったり。
色々な意味で新しい血を注ぎ込んでくれた曲です。
だからこそ、ここからの石川龍のソングライティングをもっと聴いてみたかったんですが。
それはもう仕方ないとして、
「AT0M」からの流れとしては抜群のミニアルバムを象徴する曲を作ってくれたということで
それを受けて今度はどんな曲を小高が書くのか、そしてバンドが鳴らすのか・・・
ってことが今はとても楽しみです。
もちろん、不安が無いといったら嘘になるんですけど。
傍から見てもあの4人の結束力は半端じゃなかった。
それはこの曲でも、このミニアルバムでも感じられる事で。
でも、そこを乗り切ったランクヘッドを観てみたい、って気持ちのが強いかな。
そんな今のランクヘッドが歌うにはピッタリ、という気もしています。この曲。
 ある意味龍さんからバンドへの餞的な楽曲でもあるんだろうか。


「絶望とは幻想と知る たったひとつの信じるものの存在で」



石川龍という人間はバンドにとってリーダー的存在であったりムードメイカー的存在であったり
沢山の良い曲と詞を書いてくれたソングライターでもあったと思うんですが
一番バンドに与えてくれたものは「力強さ」、ですかね。
ランクヘッドのライブを初めて観たのは2004年くらいだったと思いますが
毎回の如く龍さんからは力強さを直に感じていました。
そんな彼の精神性を受け継いで、バンドの更なる発展や飛躍を願います。
そして、石川龍自身の飛躍にも。