アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

稲武産のアカネ

2011-05-19 02:19:44 | 草木染め
  ムラサキと並んで大事な染め草だったアカネ。だいぶ前のことですが、どんぐり工房で竹細工を指導しているIさんが自宅の畑で見つけて、発泡スチロールの箱に移植し、工房の庭の隅に置いておいてくれたことがあります。畑の整理がついたら持ってくるつもりでいましたが、先日見に行ったら箱が見当たりません。がっかりしていたら、Iさんが、箱のあった辺りにたくさん実生のアカネが生えていると教えてくれました。

  写真中央の、黄みがかった緑色の、とがった小さな葉がアカネ。つる状に伸びはじめています。4株ほど掘って持ち帰った翌日、Iさんが掘った大株のアカネももらったので、まとめて畑の隅に植えました。これだけまとめておけば、他の雑草にはまぎれないだろうと思います。

  アカネは根をくだいて煮出し、染め液を作ります。ただし日本産のアカネは、染料店で売っているインドアカネに比べたら、根の太さは10分の1ほど。だから相当たくさんの根っこを手に入れないと染められないのです。私は、以前、城が山の中腹辺りでアカネの群落を見つけ、掘り出して染めたことがあります。少しの布しか染められなかったけれど、冴えた美しいアカネ色が出た記憶があります。

  畑のアカネが群落を作り、太い根をはやしてくれるのはずいぶん先のことになりそうですが、ムラサキについでアカネもうちの畑で育っているのは、なんともうれしいことです。
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鞍ケ池公園の花畑

2011-05-19 01:45:55 | 小さな旅
豊田の市街地に出たついでに鞍が池公園に寄ってみました。目指すは英国式庭園。愛知万博で展示されていた庭を移したもので、こじんまりしたイングリッシュガーデンです。

  その庭を見下ろすように立っている大きな楠木を撮っていたら、公園のスタッフらしい男性に声をかけられました。

  「ここを上がると花畑があります。ぜひ見ていってください」

  指差すほうに上っていくと、まずポピーと矢車草が一面に咲いている場所に出くわしました。一面に隙間なく咲いているのではなく、そこここに雑草のように固まって咲いているところが自然ぽくていい。ポピーの色は場所によって、赤系だったり、黄色系だったり。

  この公園はもともと低い丘陵が続いていたところだったのか、上がったり下がったりしている地形をそのまま生かしているみたいです。

  花畑のほぼ中央から牧場に続く丘を撮影。白い部分はカスミソウのようです。カスミソウを取り囲むようにポピーが一面に揺れています。丘の稜線も木々の姿も絵本のようです。

  池の周りの垣根にはいろんなつるバラが咲き始めていました。

  平日だったせいか、訪れる人はわずか。のどかで美しい花畑の中で、気持ちのいいひと時を過ごせました。

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ムラサキ草のこと

2011-05-11 10:57:32 | 草木染め
 日本には、染め材料として古くから有名なものが二つあります。アカネとムラサキ。どちらも草の名前がそのまま色の名前になっています。日本の山地や野原にもともと自生しているもので、いまでも探せば見つかります。

  万葉集の中の額田王の和歌「茜さす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」からは、ムラサキ草が自生している野原を、「標野」、つまり縄か何かでバリアーを張った場所にして保護していることが伺えます。紫色は、古代に決められた皇族・貴族の服の色のうち、最高の位を意味する色で、天皇と殿上人だけに着ることを許された「禁色」のひとつでした。だから、勝手にムラサキ草を採取することはできなかったのです。

  10年ほど前、青森に住む叔父が近くの山地でムラサキ草を見つけ、種を採取して自宅で栽培を始めました。手入れがよかったのか毎年白い小さな花をつけ、たくさんの種が取れるようになりました。

  その種を私にも送ってくれたので、畑の隅に蒔いたところ、ひょろひょろしたか弱そうな草が伸びてきました。でも、たくましいほかの雑草に負けて、いつのまにか消えてしまいました。

  今年の年賀状で叔父にこの旨を伝えると、すぐにムラサキの根と椿の灰を送ってきました。自分で数年前染めてみたけれどうまく染まらなかったので、試してみてほしい、というのです。根っこのほか、絹の端切れと椿の灰も入っていました。媒染材として使うためです。
 
  その後すぐに、「ムラサキ草の周りの雪をどけて拾い集めた種」も送ってくれました。ムラサキは「取り蒔き」といって、採取したらすぐに蒔かないと生えないそうです。それで、プランターにとりあえず蒔いてみました。叔父は「すぐに芽が出るとは限らない。気長に待て」といったのですが、ひと月ほどで、たくさんの芽を出しました。

  いい出来です。もともと雑草なので、ほんとうは強いものなのでしょう。さらに20日後の写真です。こんなに生長しました。

  ムラサキは、現在、日本産の草で染めることはほとんど不可能に近いといわれています。すっかり消えたわけではなく、群生地を保護してこなかったため、採取が難しいからなのでしょう。

  紫根は、漢方薬としても用いられていて、解熱薬、解毒剤だそうです。そういえば昔、紫根エキスというような名前の化粧水をもらったこともあります。染めにも薬にも使える草は多いのですが、ムラサキはその代表格かもしれません。

  ところで、紫色を高貴の色としているのは日本だけではありません。古代ローマなどでも、貝紫といって、ある貝の一部の腺からとった分泌液を集めて染めた色は、帝王にしか着ることの許されない色だったそうで、とても高価なものだったそうです。雑草の細い根を揉みほぐし、煮て液を取る作業も大変だけれど、小さな貝にたぶん1本しかない細い腺を取り出して布地を染める作業は、もっとたいへんそう。なにより貝の量が半端じゃないと思います。ぜいたくができる人=帝王ということなのかもしれません。もっとも、アメリカの作家オー・ヘンリーは、「紫色のドレス」のなかで、こう書いています。

  「「紫に生まれる」とは、王家に生まれたことをしめすいいまわしだ。それも、当然、王家に生まれたものは、きまってかんの虫のせいで顔を紫に染めているものだ」(理論社刊・千葉茂樹訳)

  こんな皮肉を言われるほど、古今東西の王家の人々が固執した紫色。まずは叔父の送ってくれた根っこで染め出してみたいと思います。

   

  
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ワラビ料理

2011-05-10 09:50:45 | 手作りのたべもの
  連休中に遊びに来た姪たちが、近所にワラビ摘みに行って、おもいのほかたくさん採ってきました。これはその一部です。

  太くて長い。今年は春になっても寒さが続いたので、まだ出ていないだろうと思っていたのですが、ちゃんと生長していました。

  さっそくストーブの灰をワラビの上にたっぷり振りかけて、上から熱湯を注ぎ、あく抜きしました。

  ワラビ料理で私が一番好きなのは、ワラビご飯。あく抜きしたワラビをよく洗い、細かく刻んで塩で軽くもみます。それを炊き立てのご飯に混ぜてしばらく蒸らすだけ。ワラビが適当に歯ごたえを残していて山菜独特の香りがある、おいしいご飯になります。

  もうひとつ気に入っているのは、3センチほどに切って、昆布の粉末または細かく切った昆布としょうゆ、みりん、酒を混ぜた中につけた和風マリネ。粘りがよく出て風味があり、煮物よりもおいしいと私は思います。

  今年は、ピザにも蕨を入れて、石窯で焼いてみました。期待していなかったけれど、この山菜ピザ、なかなかいけました。オクラみたいな食感です。ただし、刻んだほうがよかった。繊維がなかなか噛み切れず、食べるのにちょっとてこずりました。
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山の水

2011-05-07 14:28:35 | 稲武のモノ・コト・ヒト・バ
   震災以来、ミネラルウォーターが不足がちになって、非常用としておいて置く分が少なくなりそうだったので、水道水でコーヒーを淹れていました。でも、やっぱりなんだかうまみがありません。そのとき思い出したのが山の水。それで、ペットボトルを持って、久しぶりに汲みに行ってきました。

   汲みに行った場所は、どんぐり工房近くの城山のふもと。汲んだり洗い物をしたりしやすいよう、流し場が作ってあります。水は、この山の上にある武節城址あたりから来ているのか、とても冷たくてきれいです。

  稲武、設楽などこのあたりの山里には、あちこちに湧き水が出るところがあります。街からわざわざ汲みにやってくる人たちがいるほど有名になっているところもあります。

  いつもおいしい水がこの小さな口から出てくるなんて、ぜいたく!

  水といえば、以前こちらに働きに来ていた名古屋の人が、稲武の水道水がおいしいというので、実家の両親が遊びに来たとき、わざわざ彼らに水道水を土産に持たせたという話を聞いたことがあります。

  こちらに来たてのころ、あるイベントに参加していてあまりの暑さに水が飲みたくなって、しかたなく水道水を生で飲んだことがあります。生水を飲むなんてそれまでほとんどやったことがありません。まずいのを覚悟で飲んだのですが、まずくない! びっくりしました。渇きが収まってから、何口か飲んで確かめてみましたが、やはりまずくない。おいしさはないのですが、飲める。後で聞いたら、稲武の人たちは、地元の水道水なら生で飲んでいるといいます。それでも、ひところよりはまずくなったという人もいるそうですが。

  どちらにしろ、標高500mもある土地なので、たとえ水道水といえども、源流に近いからさほどまずくはないのでしょう。

  私の家の敷地内にも、以前、湧き水ではありませんが、家のすぐ下を流れる川の上流からひいた水が来ていました。でも、数十メートル上に砂防ダムができてから、急に止まってしまったのです。もう一度川から引き直せば、きれいな水は手に入るはず。飲み水にならなくても、草木染めで使う大量の水は、できれば川の水を使いたい。いつか実現させたい夢です。
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小鳥の挑戦

2011-05-02 11:56:55 | アンティマキの場所に生きる動植物
  春になってからのことだと思うのですが、北側の窓ガラスに何度もぶつかってくる小鳥が現れました。四十ガラかなにかスズメの類の小鳥みたいで、体は黒と白の2色。ガラスにぶつかってへばりついたかと思うと、ずるずる下に下りていき、飛び立つ。そしてまた上から飛んできてはガラスにぶつかり、下へ。数回繰り返してはそのうちどこかへ去ります。そしてまたやってくるのです。

  私が知っている限り、2羽が組になっているようです。1羽が窓近くの電線に止まり、別の1羽が窓にぶつかっています。常に同じ1羽が窓にぶつかり、別の1羽は彼の(彼女の?)行動を見守っているように見えます。何度も、ぶつかっているところを写真に撮ろうと試みましたが、ほんの一瞬の出来事なので捕らえられませんでした。上の写真は下の1羽が窓ガラスに飛びついたあと、電線に止まって見守っていた上の1羽のそばで休んでいる(?)ところ。

  ときは春。巣作りの季節なので、もしかしたら私の家の中で巣を作りたいのかもしれません。考えてみれば、人間の住む家は天敵がいないから、彼らにとっては究極の安全な場所。うちにはネコも犬もいないから、なおのこと幸いだと見込んだのかもしれません。

  4年前に家をリフォームした直後、やはり北側の別の部屋の窓ガラスに猛然とぶつかってくる小鳥がいました。そのときの小鳥は、茶色か赤っぽい色が体の一部に入っていて、今回の小鳥とは違う種類でした。その折の鳥は1匹だけで、ひたすらぶつかってはずるずるを繰り返していました。その跡が汚れになって、目立つほどでした。

  当時、その部屋の窓辺には赤いガラスのランプが置いてあったので、もしかしたらそのランプを大きな赤い果物か何かと勘違いして、飛びつこうと頑張っているのかもしれないと思い、ためしにそのランプを南側の窓辺に移動しました。すると案の定、翌日だったかその後だったかに、彼(彼女?)は南側にやってきて、同じ行動を繰り返しました。このランプです。

  そのあと、なにか彼らにとって大きな異変でもあったのか、いつのまにかばったり来なくなりました。

  それから3年は経っています。今度の鳥の来訪の目的は今のところ想像の域を出ませんが、私の家に入りたがる鳥がいる、と思うのはなんだか楽しいことです。

  ただ、気になるのは、あの小さな体で固いものにやたらぶつかったら、どこかに打ち身や擦り傷を作るのではないかということです。もしかしたら、そういうリスクは承知のうえで、頑張りたい仕事なのかもしれません。今もまた、私のいる部屋の隣の部屋で、こつんこつんと窓にぶつかる音がしています。そっと見に行ったら、きょうはなぜか1羽で来ていました。
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