アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「コスタリカの奇跡」

2024-07-01 00:54:19 | 映画とドラマと本と絵画

  1948年に軍隊を廃止した中米の小国コスタリカ。この国の稀有な歴史を、多方面から描いたドキュメンタリーです。監督はアメリカ人。

  軍事費が不要になったお金を、社会福祉や教育に回し、国民の幸福を目的にした政策がつぎつぎに実施されました。自然保護も政策のうちの重要な課題です。

  コスタリカが軍隊を廃止するに至った経緯には、驚きました。社会民主主義的制度がほぼ整ったのは戦前。その後、最初の民主的体制を整えた大統領が選挙に敗北したにもかかわらず政権に居座り、国は混乱。そのときに武装ほう起した人物が、のちにドン・ペペと親しみを込めて呼ばれるフィゲーレス。彼は民主主義革命を志す他国の兵士たちと共に戦い、政権を奪取します。そして武装解除へ。

  その後のコスタリカは、アメリカからさまざまな圧力をかけられます。アメリカ側につく政治家も当然ながら現れ、政権はたびたび揺れました。でも、たゆみない外交努力により、軍隊を持たずして中立を保ち続けました。数々の国際条約に加盟し、国際的な信頼度も増しています。

  ウクライナ戦争が始まって以来、戦場の映像を見るたびに、悲惨とか残酷とかどちらが悪いとかいう気持ちや考えとは別に、「とにかくもったいない!」という気持ちが常にわきます。弾丸一発いくらかわからないけれど、お互い一回の戦闘でものすごい費用が吹っ飛んでいるはず。そのお金を有用に使う方法はいくらもあるのに、土地を蹂躙し、建物を壊し、人々を不幸に追いやる。戦争はなんてもったいない行為なんだとおもいます。ましてや、抑止力という名のもとに、国民の幸福をさておいて軍拡競争に血道を上げるなんて、さらにもったいない。

  映画を見て、私の素朴な気持ちを政府の方針として実現した国がこのコスタリカなんだな、とおもいました。すごい国です。映画の制作時は2015年。他国同様に、多国籍企業の進出による富裕層と貧困層の格差はどんどん拡大していることも、映画はきちんと取材しています。いまはさらに国際情勢が複雑になり、軍備を持たないことへの不安が国民の間に増大することも懸念されます。でも、映画の中で描かれたこの国の人達は、自国の歴史に誇りを持ち、行きとどいた教育の成果が大きいと私は思うのですが、議論をいといません。理性的な話し合いのできる人々なら、きっとよりよい道を探すことができるのではないかな、と期待を込めて思います。


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