アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

梨と桃

2011-09-17 08:00:20 | たべもの
  期せずして同じ日に、梨と桃をそれぞれ別の方からいただきました。どちらも実りの秋を象徴するかのように、みずみずしくて立派な果物です。
 
  果物はどれも好きですが、なかでも私が特に好きなのは梨。皮をむいて切った端から、皿に盛るのももどかしくてつまみ食いを始めてしまい、そのまま一個まるまる立ち食いしてしまうこともあるほどです。

  いただいた梨は豊水という種類の梨で、愛知県西尾市で栽培されたものです。噛むと甘い水分が口中いっぱいに広がり、甘さとすっぱさとほんのわずかな苦みが調和した、梨独特のおいしさが溶け出します。ゆっくり食べようと思うのですが、ついむしゃむしゃはや食いしてしまいます。甘すぎず、果物の爽やかさを立派に残しているところがいい。あっというまに1個なくなりました。

  この梨を作ったのは、この夏、何十年ぶりかで再会した知人。西尾市の梨農家に嫁ぎ、続けたかった仕事を断念して梨栽培に力を注いできたのだそう。届けられた梨の実は、彼女の努力の賜物であることを実感させるものでした。

  梨と一緒に入っていたパンフには、この農園の栽培法が書かれています。

  パンフによると、こちらは、愛知県の「エコファーマー」という認定を受けていて、幸水と豊水をおもに栽培。梨の甘みを増すために、植物の絞り粕や卵の殻、ぼかし肥料、魚粕といった有機肥料を使っているそうです。農薬は最小限に抑えていて、35年間、除草剤はいっさい使用していないとのこと。刈った草は緑肥やマルチにして使っており、草と共生する梨畑でありつづけるよう、がんばって草刈りに励んでいるそう。

  さらに、知人の字で、「2度の台風にも落ちなかったがんばり梨です」と添え書きしてありました。そういえば、「奇跡のリンゴ」といわれるリンゴを栽培している青森の木村秋則さん(コチラ→)の本にも、周囲の農園のリンゴが、台風でほぼ軒並み全滅に近い状態になったときも、木村さんのリンゴは枝から落ちなかった、とあったように記憶しています。育てられ方次第で、病害虫だけでなく災害にも強いものができるみたいです。

  梨農園の仕事は、これまではほとんど知人と、今年91歳になるお姑さんのふたりで従事。今は退職されたご主人も加わり、「病害虫や風雨や旱魃に苦しみつつも、皆様に「美味しい、美味しい」といっていただくのを楽しみにして」家族だけで広い農園を管理しているそうです。

  桃は、最近知り合った若い方からいただきました。岐阜県高山市で果樹園を経営なさっているご実家から届いたものです。桃の季節はもう終わっていると思っていたのですが、高冷地なのでなりが遅くなるのだそうで、標高の低い土地の桃の出荷最盛期にあたる7月半ばに、やっと袋がけするほどだとか。

  この桃は、固いまま食べても、柔らかくして食べてもいいのだそうで、両方試してみました。完熟したほうは、甘い! とろけるようです。固いほうも、きちんと味があって、果物ならではの複雑な甘みが感じられました。どちらもおいしいけれど、私はどちらかというと固いほうが好き。

  こちらの農園の名前は、福蕨(ふくわらび)といって、リンゴを始めとして桃、ブルーベリー、梨など、多種類の果物を栽培しています。パンフには、この農園の桃について次のように書かれています。

  「数年前。鷽に桃の蕾を食べられ、本来ならば800~1000玉は成るであろう樹に、150ほどしか果実袋を掛けることができませんでした。そして、その年の桃の味は忘れることができない、すばらしいものとなりました。その味が、「たまたまできたもの」ではなく、せめて三年に一度でも二度でも再現できるようになりたい、そうお思い、勉強しています。鷽が花芽の数を食べたから美味しかったのか、鷽も食べ残すような花芽が果物になったから美味しかったのか。今までの栽培法でよかったと思われる点は残しつつも、枝の切り方や蕾の残し方に、新たな試行錯誤を加えています」

  蕾を大量に食べられてさぞ落胆なさったはずなのに、そこから新たな発見をして立ち直るどころか次のステップにつなげておられる様子が、よくわかる文です。

  こういうことをお書きになる方の農園だから、当然、知人の梨園同様、土作りと薬剤の防除には工夫を重ねているようです。

  肥料については、「微生物の働きを借りながら土作りを行い、果実を育てています。除草剤を使わず、草生栽培を旨とし、さらに陸海の、さまざまな動植物を材料にして作った有機質肥料」を施し、農薬は、「収穫30日~50日前まで」の散布にとどめているそうです。その農薬も、「化学合成農薬とされない資材を積極的に」使っているとのことです。

  以前、テレビでアフリカかどこかの原種のイチジクを見たことがあります。たぶん3,4個は手のひらに乗るほどの小ささでした。クリでも山栗は小粒。たぶん野生のもともとの果実はみんな小さなもので、味も素朴だったと思います。それを人間が手を掛けて、ここまでりっぱな食べ物にしてきたのだなあ、といまさらながら感心しました。

  ところで、とても上等のおいしい和菓子は、熟した果物の味に限りなく近い気がします。和菓子職人は、果物のおいしさに似せようと、さまざまな食材に工夫を凝らし、技術を磨いてきたのではないかと、私は勝手に想像しています。「水菓子」という名前がまさにそのことを示しているのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

  *梨・・・榎本農園 愛知県西尾市平口町奥川68 ℡&fax;0563-56-3590
  *桃・・・福蕨 岐阜県高山市久々野町山梨88-⑭ ℡;0577-52-2494 fax:0577-52-2994
     e-mail:hukuwarabi@hidatakayama.ne.jp http://hukuwarabi.net
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