いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

時の運。 luck at time

2015-12-24 19:52:25 | 日記
 (1)新国立競技場の建設費予算が上限1300億円目安という政府制限があるから、最終選考に残った2案は外観だけ見ればそう違いはない。楕円形のスタジアムの上部を覆う屋根は真ん中がくり抜かれて低く設定されている。

 3000億円ともいわれたスペイン建築家ザハさんのアーチ型未来志向の新国立競技場に比べ一見平凡で落ち着いた雰囲気のデザインになった。ともに日本を象徴する木材文化を連想させる構想、構造で建築家隈(くま)研吾さんの設計作品(A案)採用が正式に決定した。

 (2)前回審査での不透明性が建設費高騰を招いたこともあり、今回評価項目ごとの点数制を採用してA案(610点)がわずか8点差で建築家伊東豊雄さんのB案を上回っての採用決定だった。

 評価項目数獲得ではB案の方が上回ったが、評価点数の高い項目「業務の実施方針」、「工期短縮」でA案が上回っての総合的に高い評価を受けた(報道)結果だった。

 (3)IOCからは2020年東京五輪リハーサル期間前での前倒しの五輪会場の建設完了の意向が伝えられて、ともに前年11月工事完了の方針計画であったがA案は確実性を強調したのに対してB案は工事進捗(地形環境など)によっては遅れも出る可能性に言及(報道)しており、選考委員から「B案は(提案どおりにできるかという)危惧があった」(同)と説明している。

 (4)日本の建築技術監理能力は正確で高いものがあり(昨今の耐震、くい打ちデータ流用不正は驚きで)企業側にはほとんど要求どおりに完成に間に合わせる能力は備えている(その分予算が膨らむこともあるが)ことはこれまでの経験からもあきらかであり、B案はむしろ慎重により精度の高い作品を予算内で完成させようという善良な管理者としての配慮が働いたもので、変な言い方だが正直、実直な善意が優先したもので本来、前述の「危惧」など考える必要もなかった、評価に考慮されなくてもよかったが、パラドックス(paradox)としてそれしか決定力がなかったともいえる。

 (5)ともに著名な有能な日本の建築家であり設計細部での比較優秀性で優劣などつけれずに、しかも完成工期の確実性がIOCなどに対する新国立競技場建設の最重要要件であったことから、これが決め手となってのA案決定となったということだ。

 B案の建築家伊東豊雄さんはこの決定を受けて「どうしてこのような結果になったのか」、「(工期短縮で)ここで27点差がつくのは信じがたい」(報道)と述べ、むしろ「アスリート・ファースト」、「ユニバーサル・デザイン」、「周辺環境との調和や日本らしさ」で「我々は負けていない」と自負(同)した。

 (6)その通りの採点評価であったが、何はともあれ公表された総合評価(点数)でわずかの差ではあったが下回ったということなので、ここはくやしさを心に閉まってA案決定を潔く認めて2020年東京五輪のシンボル会場として計画どおり完成させることに期待と信頼を示してほしかったのが本当のところだ。

 コンセプト(concept)と予算(estimates)が限られた中での設計スキルに差がつくはずもなく、「そういう評価決定、方針だったのか」ですませてほしかった。
 
 (7)なお、白紙撤回されたスペイン建築家ザハさんが今回採用されたA案について「(わが案の)疑似性について詳細な調査を開始した」(報道)というのはまたかのご愛嬌だが(実はB案の伊東さんも同じことを言っているのは残念)、今後A案総工費1490億円内でおさまるのか国民の注視もまだまだ必要だ。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする