オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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「謎のフライヤー」の追加情報

2020年09月06日 19時57分41秒 | 訂正・追加等
拙ブログを始めて間もない2016年3月30日、ワタシは「スロットマシン・謎のフライヤー(チラシ)」という記事で、米国バーリー社(関連記事:米国「Bally(バーリー)」社に関する思い付き話(1))のスロットマシン「SUPER CONTINENTAL」の、おそらくは中華圏版と思しき筐体写真を掲載しました。


ワタシが所持する、中華圏版のSUPER CONTINENTALの写真(再掲)。

ワタシは、この写真を入手する以前も以降も、さまざまな場所や媒体で、さまざまなバーリーのスロットマシンに、それこそ星の数ほど接してきましたが、「中華圏版のSUPER CONTINENTAL」に関する情報は、このたった一枚の写真以外にはただの一つたりとも見聞したことがありません。一切が不明なこの写真は、ワタシにとって、まるでUFOかUMAかオーパーツのような謎の存在としてずっと心に引っかかっておりました。

ところが先日、この謎の写真が写っている画像を、Facebookで偶然発見しました。しかも、筐体写真だけでなくスペックと思しきドキュメント(以下、ドキュメントとする)まで写っているので、ワタシはがぜん色めき立ちました。

その画像には、オールドゲームファンの間では有名な「ゲーム文化保存研究所(IGCC)」の標章が貼り付けてあったので、さっそくワタシのブログにその画像を転載することの可否を尋ねる問い合わせを送ったところ、すぐに「通常の引用の範囲であれば全く問題ない」とご快諾くださいました(ありがとうございます!)。

さて、転載の許可をいただいた画像はこちらです。


「ゲーム文化保存研究所」によって2017年7月21日にFacebookに投稿された画像6枚のうちの1枚。

この画像は、「gooブログ」での推奨サイズ(一辺最大640ピクセル)に合わせて縮小しています。オリジナルの画像および記事全文をご覧になりたい方はコチラをご参照ください

当該記事を書かれた方は、ゲーム文化保存研究所に所属する「キバンゲリオン」さんという方で、この資料は、「日本でBALLY製品を扱う正規代理店であった会社が廃業する際に、私がまとめて譲り受けたもの」とのことです。もしお許しいただけるなら、その他の資料も一度じっくりと拝見させていただきたいものです。

さて、このドキュメントに記述されている、表題と「特徴(Description and Features)」の部分を日本語に直してみます。

イリノイ州シカゴのバーリー・マニュファクチャリング社提供
モデル#891-2
10¢ SUPER CONTINENTAL - 6コインマルチプライヤー

特徴
1. 4リール。 22ストップ。 6コインマルチプライヤー。
2. リプレイレジスタ。
3. ホッパーユニット。
4. コレクトボタン。
5. すべての払い出しはリプレイレジスタに加算され、リプレイボタンによりゲームに消費されます。
6. プレーヤーは、コレクトボタンを押すことでいつでもクレジットを換金できます。
7. センターラインの左右両方から役を読み取ります。
8. フルーツスタイルのシンボル。
9. 1〜6枚の硬貨を受け入れます。
10. ジャックポットタワーとチェンジボタン。
11. 5¢-10¢-25¢コインの金種。
12. 110/220ボルト-50/60 Hz。
13. オプションのパーセンテージ。


ここに見られる型番「891-2」は、「891」の「Auto Pay」バージョンです。などと知った風なことを言ってみましたが、ワタシは「Auto Pay」をどう理解すれば良いのかよくわかりません。「Bally SLOT MACHINES Electro Mechanicals 1964-1980」(Revised 3rd edition, Liberty Belle books, 1996)という本の巻末に記載されていた製品リスト(以下、「製品リスト」とする)に書いてあることをそのまま言っているだけです。




製品リストが掲載されている「Bally SLOT MACHINES Electro Mechanicals 1964-1980」の表紙(上)と、製品リストの「891」と「891-2」の部分(下)。この本の著者であるMarshall Fey氏は、現代スロットマシンの始祖とされる「Liberty Bell」を発明した「Charles Fey」の孫で、スロットマシン史研究家として著名で、いくつものスロットマシン関連の書籍を著わしている。

枝番のない「891」は、おそらく私が唯一所持するスロットマシン「891-1」のことと思われます。製品リストには「Credit Meter」とありますが、「891-1」にはクレジットメーターとホッパーの両方が装備されています。当時はまだクレジットプレイという機能は一般的ではなかったので、クレジットメーターは先進的なフィーチャーでした。実際の運用では、ゲームの結果で当たりが出た場合、ホッパーからコインで払い出すモードと、コインは使わずクレジットメーターに加算するモードのどちらかに設定しておくようになっていました。その設定はキースイッチで行います。

一方、「891-2」には「Auto Pay」とありますが、ドキュメントには「5. すべての払い出しはリプレイレジスタに加算され、リプレイボタンによりゲームに消費されます」とあります。なるほど、そうであればこそ、この筐体にコインボウルが付属していないことも頷けるというものですが、しかし、では、クレジットメーターに加算する仕様が「Auto Pay」の意味なのでしょうか。ホッパーからの払い出しだって自動的に行われるので、その解釈では釈然としません。

ということで、「Auto Pay」の意味を調べてみました。その過程を克明に述べると長くなってしまうので要点だけまとめておきます。

(1):製品リストでは、謎のフライヤーの型番「891-2」は「Auto Pay」仕様となっている。

(2):製品リストによれば「Auto Pay」仕様の機種は、他に「910-1」と「917-1」がある。


製品リストから、「910-1」および「917-1」の部分。


ワタシが所持するフライヤーから、910(Lucky Bars・左)と917(Extra Line・右)の筐体。どちらもペイテーブルの下にクレジットメーターが付いている。

(3):フランス語のゲーム関連掲示板で、「『917-1』にはホッパーが装備されている」との解説を発見した。これにより「Auto Pay」にはホッパーが付いていると考えられるが、しかしこれは、ドキュメントの「特徴」にある「すべての払い出しはリプレイレジスタに加算」と矛盾する

この矛盾に、ワタシは打ちのめされてしまいました。ワタシはいったいこれをどう理解すれば良いのでしょうか。ただ、「910-1」はベルギー向けバージョンであり、さらに製品リストには記載がない「910-2」がスウェーデン向けバージョンであるとする情報がネット上に見つかったので、ひょっとすると「891-2」という型番には、同じ型番で、「Auto Pay」のバージョンと、漢字文化圏向けバージョンの二つがあるのではないかという仮説を立てることで当面納得しておこうと思うに至りました。

わからないことは他にもあります。特徴の6番目に「 プレーヤーは、コレクトボタンを押すことでいつでもクレジットを換金できます」という記述がありますが、コインボウルが無いのにどうやって払い出すつもりなのでしょうか。

コインボウルが筐体ではなくスタンドの方に付いているタイプもありますが、この写真ではスタンドにもコインボウルは付いていません。ひょっとして、コレクトボタンを押すとアテンダントがやってきてハンドペイする、とでもいうのでしょうか。しかし、僅か1クレジットの払い出しでさえコールアテンダントとなる仕様は、現実的に考えにくいです。

また、レバーが付いていない謎も明らかになりません。筐体の写真を見ると、リール窓の下に二つのボタンが付いているのが見えます。このうち左の一つは、「10. ジャックポットタワーとチェンジボタン」にあるチェンジボタンでしょう。このような仕様は、バーリーの他の機種でも標準的に見られます。しかし、右側の残る一つが何なのかわかりません。他の機種の例では、チェンジボタン以外に「ホールド&ドローフィーチャー」のホールドボタンが付いているものがありますが、その場合は、付属するボタンは3個になるので、この写真とは全く違う外観となります。ひょっとするとこれがスピンボタンだったりするのでしょうか。

せっかく新しい情報が入ったのに、肝心な部分の殆どは結局のところ不明のままに終わってしまいました。とは言え、化石の破片からその生物がどんな姿をしていたのかを類推するのに似て、断片的な情報であっても数が集まれば全体が見えてくることもありますので、今回の発見は決して無駄ではなかったと思います。まずは、この情報をネットにアップしてくださったキバンゲリオンさんと、転載の許可をくださったゲーム文化保存研究所には最大級の感謝をお伝えして、今回は終わりといたします。