オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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ウェストワード・ホー(ラスベガス)を懐しむ

2021年06月20日 21時05分10秒 | 海外カジノ

かつて、ラスベガスのストリップ沿いに、「ウェストワード・ホー(Westward-Ho)」
というカジノホテルがありました。いや、ホテルと言うよりもモーテルと言う方が適切かもしれません。宿泊棟はすべてモーテル棟のような2階建ての作りでした。

 

(上)ウェストワード・ホーをストリップ側から見たところ。夜になるとたくさんのカラフルな傘に仕込まれた電飾が美しく輝く。(下) 夜のウェストワード・ホー。当時頒布されていたスロットクラブのリーフレットより。

ワタシはこのホテルに、2004年の10月に一度だけ宿泊しています。タクシーの運ちゃんに行き先を告げたところ、ホテル名がなかなか伝わらず、「ウェストワード・ホーだす。うえすとわーどほー。え? わがんねすか? えとあの、うえすとわーどほー。サーカスサーカスの隣のホテルなんですけんど。それよりひとつ南側の」などと四苦八苦しながら説明していているうちにようやく思い当たったようで、「ああ、Westward-Hoのことか。わかったわかった」と、無事到着することができました。発音が難しい名前でした。

(1)ウェストワード・ホーの部屋の中。標準的なモーテルの部屋と変わらない。テーブル上のペプシの紙コップはウェルカムドリンクではなく、単なる掃除のし忘れ。 (2)洗面所の入り口。間口が広い。 (3)洗面台。コップが使い捨てなのは安い宿によくある。 (4)トイレ。壁の向こうに浴槽がある。

古いだけあって、部屋の鍵はカードキーではなく、昔ながらの金属のカギでした。

画像:ウェストワード・ホーの部屋のカギ。この当時でも珍しい、普通のカギだった。

このホテルは、以前からカジノ併設のデリで、巨大なホットドッグやストロベリーショートケーキ、シュリンプカクテルなどを格安で提供していることがよく知られていました。ワタシはこの時以前にも数回訪れており、その時はどれもたったの75セントという驚きの値段でしたが、今回はホットドッグとストロベリーショートケーキが1.49ドルに、シュリンプカクテルが99セントに値上がりしていました。それでも破格の値段ではあります。

デリで提供されている格安メニュー。価格は当時のもの。(1)ホットドッグ。他ではせいぜい1/2ポンドどまりだが、ここのは3/4ポンドある。1.49ドル。 (2)シュリンプカクテル。エビは小粒なうえにレタスの千切りで上げ底されており、これは値段相応かと思わされる。99セント。 (3)ストロベリーショートケーキ。大きなスポンジケーキから直方体に切り分けた一切れを皿に乗せ、果実がゴロゴロ入っているストロベリーソースをかけ、最後にスプレー缶に入ったホイップクリームをこれでもかと言うくらいかける。1.49ドル。 (4)ストロベリーショートケーキの断面図。

ホットドッグはシグネチャーメニューなので、大々的に広告していました。

 

(上)かつて公式サイトに掲載されていた画像。道路に面したマーキーに、3/4ポンド(約340g)の「MEGA」ホットドッグが1.49ドルとの広告を表示している。ホットドッグの絵には「almost Actual Size(ほぼ実物大)」と謳っている。(下)宿泊棟の壁にもホットドッグの広告が描かれていた。

ウェストワード・ホーは、ワタシが宿泊した直後にちょっと大きなリニューアルをして、デリは裏側(西側)に新設した棟の中の「ラウンドアップ・グリル」に移り、この時ホットドッグは2.49ドルに値上げされてしまいました。75セント時代を知る者にとっては3倍以上になってしまったわけで、残念に思ったものでしたが、それでも他と比べればまだ十分安いので、いつかまた来るときもあろうと思っていました。

だが、しかし。ウェストワード・ホーは、ワタシが宿泊した翌年、2005年の9月に突然その閉鎖を発表し、同年11月にはそのドアを閉め、その後建物は取り壊されてしまいました。リニューアルして間もないというのにいったい何があったのかと調べてみたところ、どこかのデベロッパーに約1億5千万ドルで買収され、跡地は再開発されるはずだったとのことです。しかし、2008年のいわゆる「リーマンショック」により土地のオーナーシップが変わるなど紆余曲折を繰り返したようです。最終的には、今月24日のオープンが予定されているリゾートワールド・ラスベガスの一角となることに落ち着いています。

ラスベガスの地元紙「ラスベガス・サン」紙は、2012年に、「ウェストワード・ホー」を「ストリップに戻ってほしい絶滅したカジノブランド」のリストに加えたそうです。しかし、実現に向けた話は、噂さえも聞きません。まったく残念なことです。

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ところで、この時の旅行の目的は、ゲーミング業界のトレーディングショウ「G2E」の見物でした。今でこそゲーミング業界では、「スキルベースド・ゲーミング」がモノになるのかならないのかわからず捨てるに惜しい鶏肋の状態のままなんとなく続いていますが、実はこの2004年にも一度、スロットマシンにビデオゲームを組み込もうとする試みが行われていました。この時は、Bally社が、ATARIの「PONG」や「BREAK OUT」をボーナスゲームで遊ばせ、成績によってボーナスを与えるというものでした。

 

G2E2004年にBallyから出展されたATARIの「PONG」。ボーナスゲームではPONGが遊べた。

ラスベガス(というか、ネバダ)では、スロットマシンのペイアウト率は75%以上でなくてはならないというレギュレーションがあります。しかし、ボーナスゲームはプレイヤーの巧拙によって払い出し率が大きく変わってしまう可能性があります。そこでこのゲームでは、ベースとなる通常ゲームのペイアウト率を75%とすることで、ボーナスゲームではどんなに下手な人がプレイをしても、少なくともペイアウト率が75%を下回ることはないように作られていたそうです。この機械は一部のローカルカジノにテスト稼働として設置されましたが、すぐに姿を消し、以降市場に再び出てくることはありませんでした。