大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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ここが問題、コロナ給付金の論点

2021年12月10日 | 現金給付・クーポン・デジタルマネー

コロナ給付金を給付するための補正予算議案が大田区議会で可決しました。

児童手当受給世帯という子育て中の方たちへの給付で、コロナでお困りの方も多いという判断が多かったのだと思いますが、現金給付は、そもそもの日本の社会保障政策や財政規律を根底から覆すことになります。

10年前と少し前には「バラマキ」と批判された現金給付ですが、昨年の特別定額給付金も非常時の現金給付ということでなのか、あまり批判の声が聞こえませんでした。

コロナ給付金のどこが問題か討論しましたので、ご覧ください。


フェアな民主主義 奈須りえです。

第109号議案 令和3年度大田区一般会計補正予算(第6次)につきまして反対の立場から討論いたします。

 

この補正予算は、2021年11月9日の閣議決定「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に示されたもので、

先ほどの議案質疑の答弁で大田区は目的を

「新型コロナウイルス感染症の影や、

我が国の子どもたちを力強く支援し、

その未来を拓く観点から、」と言っていますが、

閣議決定で明らかなように経済政策です。

 

福祉ではなく児童手当の仕組みを活用して「プッシュ型」で年内に現金支給を開始します。

 

2021年9月末現在児童手当を受給している18歳以下のこどもと、2021年3月末までに生まれる児童手当対象者に対して総額10万円相当のうち5万円の現金給付のための補正予算です。残りの5万円相当分はクーポンで給付すると言っています。

 

年末年始の需要の高まる時期には現金

卒業、入学、新学期には、子育てにかかわる商品やサービスをクーポンで

と具体的な現金やクーポンの使途までを見込んでいることが閣議決定から読み取れます。

 

 

この補正予算の反対の理由を述べます。

 

一つが、社会保障施策ではなく経済対策であることです。

過去には、リーマンショックの影響から、2009年から総額2兆円規模の景気対策として国民全員に一人1万2千円。こどもと高齢者には2万円の定額給付金が支給された現金給付は、バラマキという批判がありましたが、昨年の特別定額給付金は、コロナが非常時だというマスコミの報道があったからなのか、総額12.8兆円だったにも関わらず、ほとんどと言っていいほど、そうした批判が表にはでてきませんでした。

今回の児童手当支給世帯に18歳までのこどもを加える給付も、なんとなく、子育て世帯は大変だから、という印象で全額国の補助で大田区の予算は38億円、総額、1.2兆円が給付されようとしています。しかし、有り余る財源からではなく、長期国債の調達金利も上がってきている中、2021年度総額100兆円の予算のうち43兆円が新規国債発行で支えられ、その後も国債発行が続いている中、予備費を原資に給付されるものです。

確かに子育て世帯の中には、厳しい経済状況の方もいらっしゃいますが、

高齢者はどうでしょう。

障害者はどうでしょうか。

元気で仕事がない、仕事があっても低所得、という方も少なくないと思います。

全員に10万円を給付することが、今、行うべきことでしょうか。

 

また、

国は、この閣議決定の経済対策を契機に、先進国の中でそん色のない成長を実現し本格的なジャンプスタートを切っていく

 

と言っていますが、

日本はすでに、一人当たりGDPや所得が低いことから先進国ではないと指摘する声が大きくなっていて、この経済対策で成長できるのは、投資家、それも外資の投資をすでに相当に受け入れている日本においては、外国資本の利益拡大という成長だと思います。

そもそもの利益拡大や経済成長という目標に問題があります。

 

閣議決定の

具体的な取り組みでは、

デジタル、クリーンエネルギー、人工知能、量子、バイオ、宇宙等の先端技術やイノベーションにかかわる投資に加え、この児童手当世帯等への現金給付を、人への思い切った投資を行うことにより、生産性を引き上げて「成長と分配の好循環を実現する」と言っています。

 

いま、コロナで現金給付を求める声が大きくなっていますが、この現金給付を求める声は、生活に窮する区民からだけでなく、マクロで見た時に社会保障給付にかかる費用を最小化して、投資利益の最大化を確保しようとする投資家からの要請があることを知るべきだと思います。

 

 

新自由主義の視点からベーシックインカムを推奨するベーシックインカム論者は、社会保障などの給付に必要な公務員等の事務費を削減することで、ベーシックインカムは実現可能だと言っています。

 

竹中平蔵氏などはベーシックインカムで国民一人当たり月7万円を給付すると言っていますが、例えば大田区の認可保育園にかかる0歳児の月額経費は平成26年で¥623,207です。一人7万円ではとても足りません。

 

今の新自由主義を推進する人たちのベーシックインカムは、社会保障費用負担を軽減する究極のコスト削減とみることができます。

 

今回の給付により大田区は75911人への給付を想定しており、区民の約1/10、子育て世帯の約3/4という多くの区民に給付されることになります。

 

国民の反応含め、ある意味ベーシックインカムのお試しをしているのではないかと思います。

 

 

また、

総額10万円のうち今回の5万円の次は、クーポンで給付と言われています。

現金給付が選べるように書いていますが、クーポンが使えない店舗などが極端に少ない地域に限られているそうで、大田区のような都市部はクーポンが前提だと思います。

 

クーポンは現金と違い流通性に大きな制約がかかります。

コロナで売り上げを望めなくなっている個人事業主や中小規模事業者には届きにくく。

ばらまいたクーポンは、大資本、グローバル資本が利する限定的な経済対策になりはしないでしょうか。

 

 

 

これまで私たちは財政規律や、限りある財源、といった制約の中で区民に必要な事業は何か、優先順位にこだわり議論してきました。

雇用を創出せず、現金だけ配る社会を成立させることができるでしょうか。

仮にできたとして、配られる現金で営む暮らしは、私たちの人権を守る人間らしい暮らしでしょうか。

 

今回の児童手当受給世帯への給付は、社会保障制度が存在する中での給付ですが、お金をばらまくことへの抵抗感を薄れさせ、ベーシックインカムの準備をするのではなく、減ってしまった雇用と所得、壊された日本の統治機構を正常化させることに尽力すべきです。

 

中間層にいる方たちまで含めて、低所得者層を増やすことになっていくと思いますし、福祉で支えられて生活している方たちの福祉サービスを市場経済で調達するようにかわっていき、質や量が減るのは明らかです。

 

国の施策ではありますが、大田区民が不利益をこうむり、問題が生じることが見えるなら、声をあげそれを是正、改善するための力とすることが、地方自治体、大田区議会の役割だと思います。

 

この間、大田区が質疑をさせないようにする働きかけを受けていますが、質疑と討論は違います。

大田区は、区民に付託された行政としての執行責任を担っているわけですから、たとえ、答えたくなくても、国が決めたことだから関係ないと思ったとしても、しっかりとその立場と見解を区民に説明すべきと考えます。

 

区民にかわり、反対といたします。


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