水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

島村論文(5)

2009-10-15 05:48:31 | 水車解説関連
 設計について

 島村氏は、この節において、次のふたつを明らかにしている。
① ハネイタの取り付け角度を、CADで計測。「水面と交差する水輪外周接線との角度」として、120度強を得た。
② 水受けの数を演繹的に42枚と決定した。根拠は側板の深さを330mmと設定することと銚子口水深の推定値。

 後者の論理展開は、まだすんなりと理解できていない。ちょっと無理があるのではないか。


 この節の結びは、「水受けの水離れにかなり配慮していることが窺える」である。
100%同感だ。理由は下のふたつ。

① サブタから水車に当たるまでの水路構造、いわゆる銚子口、は興味深い仕掛けだ。もしかすると、水流を射流から常流に変化させようとしたのではないか。これで跳水現象が発生するとすれば、そこに思いが至った洞察力、そしてその思いを現実にする技術力、は驚嘆に値する。
② 水流は、水輪に対して、水平よりやや下向きの方向を向いて当たる。この力の、水輪の接線方向分力が水輪を回す。一方、もう一方の分力(接線方向分力に対して直角方向)は、水輪の回転を阻害する。その分力をいかに消すかが、問題だ。P5図3をながめていると、この分力をくも手(レバーアーム)で受けさせている、と理解できる。そしてさらに、残った力(水輪は回転するので、くも手だけではこの分力の100%を吸収できない)を抜かねばならぬ。このため、ハネイタに対する小底板の角度および小底板の高さ(換言すれば、水を水車の裏に逃す空間)も大切で、これらが計算されつくして決められているらしい、と観察できる。

 島村論文に掲載された、どの図や写真も正確で、明瞭なので、見る者に対してさまざまな示唆を与えてくれ、実に楽しい。
そして新車は、観察すればするほど、ただうなるだけの仕掛けがそこここに隠されているのである。