■テレビが流す「情報」の中には政府広報も含まれていたはずで、法律を守って真面目に暮らすようにとのメッセージを流し、下請け苛めのお手軽ワイドショーでは即席の「正義」を振りかざし、時代劇から刑事物、子供向けアニメまで勧善懲悪を基本とする番組を制作して放送するのがタテマエなのですが……。
千葉県市川市の県警行徳署前で12日、市橋達也容疑者の送検取材時の混乱で、公務執行妨害で逮捕された男が勤めるTBS広報部は、「現行犯逮捕されたのはTBSの男性社員と確認した。担当している番組や所属を含めて言えない。本人と連絡をとるべく作業しているが、細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と話した。
2009年11月12日 産経ニュース
■身柄が確保された大阪でも移動の新幹線でも、よくもまあ怪我人が出ないものだなあ、と半ば呆れてテレビの報道画面を眺めておりましたが、やっぱり報道陣から逮捕が出てしまいましたなあ。民放テレビ局は軒並み広告収入の激減で経営不振に陥り、どの局も経費節減に追われているそうであります。制作費を削れば番組が詰まらなくなって視聴率も落ちるのは分かっているのに、安上がりに作って視聴率を稼げる番組を放送しようとするから「特ダネ映像」が欲しくなる。本当に困ったら「ヤラセ」でも誤報でも騒ぎになって世間の注目を集められれば良いのだ!という自滅コースに嵌まり込む。
■軽妙と言うより軽薄な語りを「トーク」と称し、当意即妙・臨機応変などとはとても呼べない無駄話を流して「情報提供番組」だと言い張っていながら、新聞・週刊誌の記事を画面いっぱいに切り貼りして従業員のアナウンサーに「朗読」させても恥ずかしいとも思わない。取材費の節減が経費節約の切り札と言うのなら、最初からその事件に興味のある人は活字メディアに直接アクセスするでしょうし、他のメディアから情報を露骨に剽窃(ひょうせつ)した番組を漫然と眺めている人は、それほど強い関心を持ってはいないのでしょう。
■広く浅く情報の細切れを寄せ集めた「報道番組」を何の疑問も持たずに許容している視聴者は、決してテレビ・メディアを鍛えてはくれません。それに甘え切って番組の粗製乱造を重ねる送り手側にも反省の心は生まれないでしょうなあ。送検される市橋容疑者の顔を見たところで事件の真相に光が当たるわけでもないのに、大阪・東京・千葉へと報道陣の大群が移動する様は実に不快で不可解なものでありましたが、謎の?TBS男が無様に逮捕される一部始終を別のメディアが撮影してニュースにしてしまうというのも、楽屋落ちと申しましょうか、メクソ・ハナクソを笑うと申しましょうか……。
■TBS広報部が「……細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と言っている脇から現場で起こった出来事の「詳細」は日本中に流れているのでありました。
……男は同日午前11時半ごろ、市橋容疑者が送検される際、警察官の制止を振り切り市橋容疑者を乗せた車に近づいて、公務の執行を妨害したなどとされる。同局の関係者によると、男は「みのもんたの朝ズバッ!」のディレクターとの情報があるという。
■不用意な発言が訴訟騒ぎにまで発展したことで名を馳せたのが『朝ズバッ!』という番組だったはずですなあ。「庶民の怒りを代弁」するとかで視聴率が高いらしく何かと低迷が続くTBSにとっては宝物みたいな番組らしいのですが、みのもんたの怒りが本物かどうか?相当に怪しいような気もします。ゲストに大物を呼ぶことが多いので旅限無も以前は観ていたこともありました。しかし、どうやら売り物の「怒り」は張りぼてに過ぎないと分かってからは朝の情報はもっぱらラジオからになった昨今であります。
男は市橋容疑者送検の取材のため、行徳署の門の脇にいたが、市橋容疑者を乗せたワゴン車が門を出たところで、県警が張っていた規制用のロープを越え、警戒していた警察官の制止を振り切り車を追い掛けた。すぐに数人の警察官に取り囲まれたが、男は警察官の手を振りほどき車に接近。数十メートル走ったところで、追い掛けてきた警察官に取り押さえられた。……警察官が「公務執行妨害で現逮(現行犯逮捕)だ」「ワッパ(手錠)だ、ワッパかけろ」と叫ぶなど、一時騒然とした雰囲気となった。
2009年11月12日 産経ニュース
■権力を監視するのが任務の社会の木鐸が「ワッパ」を掛けられる場合、通常は権力濫用だ!と官憲側が総攻撃を受けるはずなのですが、混乱を避けるために張ったロープを乗り越えての一人駆けとなると、単なる馬鹿者でしかありませんなあ。「そんなに欲しいか!視聴率?!」と言いたくなる情けない小さな事件であります。こんな取材態度を持っているのなら、TBSは来日するオバマ大統領の車にも無謀な突進を試みるのでしょうか?世界のテロリストが狙う重要人物が相手ですから、問答無用でシークレット・サービスに射殺されるのがオチ。日本の警察は優しいので、この程度の無作法に対して絶対に発砲はしないことを見越しての公務執行妨害だとしたら、とてもじゃないが権力の監視などは務まりませんでしょうなあ。
■さてさて、今日の夜から明日の朝にかけてTBS以外のテレビ局が「スクープ映像」を繰り返し繰り返し流し続けるでしょうから、本当に逮捕されたのが『朝ズバッ!』の関係者であれば他人の不幸は蜜の味!とばかりに澄ました顔で責め立てる他局と蒼褪めたコメツキバッタみたいに平身低頭して「再発防止に努めます」と毎度お馴染みの謝罪をするTBSとの比較対象は、きっと視聴率アップに貢献することでありましょう。
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千葉県市川市の県警行徳署前で12日、市橋達也容疑者の送検取材時の混乱で、公務執行妨害で逮捕された男が勤めるTBS広報部は、「現行犯逮捕されたのはTBSの男性社員と確認した。担当している番組や所属を含めて言えない。本人と連絡をとるべく作業しているが、細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と話した。
2009年11月12日 産経ニュース
■身柄が確保された大阪でも移動の新幹線でも、よくもまあ怪我人が出ないものだなあ、と半ば呆れてテレビの報道画面を眺めておりましたが、やっぱり報道陣から逮捕が出てしまいましたなあ。民放テレビ局は軒並み広告収入の激減で経営不振に陥り、どの局も経費節減に追われているそうであります。制作費を削れば番組が詰まらなくなって視聴率も落ちるのは分かっているのに、安上がりに作って視聴率を稼げる番組を放送しようとするから「特ダネ映像」が欲しくなる。本当に困ったら「ヤラセ」でも誤報でも騒ぎになって世間の注目を集められれば良いのだ!という自滅コースに嵌まり込む。
■軽妙と言うより軽薄な語りを「トーク」と称し、当意即妙・臨機応変などとはとても呼べない無駄話を流して「情報提供番組」だと言い張っていながら、新聞・週刊誌の記事を画面いっぱいに切り貼りして従業員のアナウンサーに「朗読」させても恥ずかしいとも思わない。取材費の節減が経費節約の切り札と言うのなら、最初からその事件に興味のある人は活字メディアに直接アクセスするでしょうし、他のメディアから情報を露骨に剽窃(ひょうせつ)した番組を漫然と眺めている人は、それほど強い関心を持ってはいないのでしょう。
■広く浅く情報の細切れを寄せ集めた「報道番組」を何の疑問も持たずに許容している視聴者は、決してテレビ・メディアを鍛えてはくれません。それに甘え切って番組の粗製乱造を重ねる送り手側にも反省の心は生まれないでしょうなあ。送検される市橋容疑者の顔を見たところで事件の真相に光が当たるわけでもないのに、大阪・東京・千葉へと報道陣の大群が移動する様は実に不快で不可解なものでありましたが、謎の?TBS男が無様に逮捕される一部始終を別のメディアが撮影してニュースにしてしまうというのも、楽屋落ちと申しましょうか、メクソ・ハナクソを笑うと申しましょうか……。
■TBS広報部が「……細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と言っている脇から現場で起こった出来事の「詳細」は日本中に流れているのでありました。
……男は同日午前11時半ごろ、市橋容疑者が送検される際、警察官の制止を振り切り市橋容疑者を乗せた車に近づいて、公務の執行を妨害したなどとされる。同局の関係者によると、男は「みのもんたの朝ズバッ!」のディレクターとの情報があるという。
■不用意な発言が訴訟騒ぎにまで発展したことで名を馳せたのが『朝ズバッ!』という番組だったはずですなあ。「庶民の怒りを代弁」するとかで視聴率が高いらしく何かと低迷が続くTBSにとっては宝物みたいな番組らしいのですが、みのもんたの怒りが本物かどうか?相当に怪しいような気もします。ゲストに大物を呼ぶことが多いので旅限無も以前は観ていたこともありました。しかし、どうやら売り物の「怒り」は張りぼてに過ぎないと分かってからは朝の情報はもっぱらラジオからになった昨今であります。
男は市橋容疑者送検の取材のため、行徳署の門の脇にいたが、市橋容疑者を乗せたワゴン車が門を出たところで、県警が張っていた規制用のロープを越え、警戒していた警察官の制止を振り切り車を追い掛けた。すぐに数人の警察官に取り囲まれたが、男は警察官の手を振りほどき車に接近。数十メートル走ったところで、追い掛けてきた警察官に取り押さえられた。……警察官が「公務執行妨害で現逮(現行犯逮捕)だ」「ワッパ(手錠)だ、ワッパかけろ」と叫ぶなど、一時騒然とした雰囲気となった。
2009年11月12日 産経ニュース
■権力を監視するのが任務の社会の木鐸が「ワッパ」を掛けられる場合、通常は権力濫用だ!と官憲側が総攻撃を受けるはずなのですが、混乱を避けるために張ったロープを乗り越えての一人駆けとなると、単なる馬鹿者でしかありませんなあ。「そんなに欲しいか!視聴率?!」と言いたくなる情けない小さな事件であります。こんな取材態度を持っているのなら、TBSは来日するオバマ大統領の車にも無謀な突進を試みるのでしょうか?世界のテロリストが狙う重要人物が相手ですから、問答無用でシークレット・サービスに射殺されるのがオチ。日本の警察は優しいので、この程度の無作法に対して絶対に発砲はしないことを見越しての公務執行妨害だとしたら、とてもじゃないが権力の監視などは務まりませんでしょうなあ。
■さてさて、今日の夜から明日の朝にかけてTBS以外のテレビ局が「スクープ映像」を繰り返し繰り返し流し続けるでしょうから、本当に逮捕されたのが『朝ズバッ!』の関係者であれば他人の不幸は蜜の味!とばかりに澄ました顔で責め立てる他局と蒼褪めたコメツキバッタみたいに平身低頭して「再発防止に努めます」と毎度お馴染みの謝罪をするTBSとの比較対象は、きっと視聴率アップに貢献することでありましょう。
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